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29.GWのSOS・中編

29.GWのSOS・中編





「それじゃ飛行機の時間だし、そろそろ行くか」

「引率は俺の仕事だからな〜!!優斗ぉ!」


俺の言葉に父さんが情けない声を上げる。

…分かったから引っ付くな鬱陶しい。



今回、我々10名が向かう場所…。

関西のとある無人島である。


島内にはトイレやコテージなどもあり、無人島とは言え設備がしっかり充実している島の様だ。


昨今、無人島ビジネスが推進され、広く宣伝広告されている。

無人島を貸し切り、イベントやキャンプなどする人が段々と増えて来ているみたいだ。


そんな中、我々一行が向かう無人島は広大なビーチがあり、冒険心を(くすぐ)る様な森に囲まれ絶好のキャンプ地である…との事だ。

準備が整った皆で飛行機に乗り込み、早速向かったのだった。




天気快晴。

海に太陽が反射し、キラキラと辺りに輝きを放っている。

そんな海上を無人島めがけて突っ走る船。

潮風と日光を浴びて俺達は声を上げる。


「うはぁぁああ!!風、最高!海も綺麗だし!こんな事なら寒くても水着持って来れば良かったぁああ!」


「彩、はしゃぎ過ぎるんじゃ無いぞ!」


「にゃはは、そんな事言って、由美ちゃんだってウキウキしてる癖に!」


「あはは、流石に凄いですね!シン兄も何だかいつもより、目が生き生きしてるし」


「ふふふ、僕だってたまには興奮しますよ。優斗以外にも…」


「おい、まずは俺で興奮するな。……霧谷さん、大丈夫?船酔いとかしてない?」


「………は、初めての事が多くて…心臓がバクバクしてます!」



彩、由美姉、美玲、真帆ちゃん、真也、俺、霧谷さんが順番に声を上げる。

俺達の背後に父さんと母さん。

そして父さんに肩車された葉たんが笑顔で海を指差し、飛び跳ねる魚がいないか眺めている。


俺達は空港から漁港近くの駅まで電車で移動し、タクシーを数台に分けて漁港へ。

そして、漁港に控えていた大きな漁船に乗り込み、無人島へ向かっていた。


ゴールデンウィークの影響もあり、『無人島』と言いつつ、同じ様にキャンプを求める人はある程度いる様で、島内全域を貸切には出来ない様だった。


ただ、今回父さんが用意してくれたプランは『プライベートエリア貸切プラン』。

無人島の内陸部に用意されたプライベートエリアでのキャンプとなり、基本的に誰か他の人達と会う事は無い。


キャンプ道具一式は勿論、和牛や豚肉、ジビエ(鹿肉)などのお肉類や、サザエやアワビ、ホタテなどの貝類、その他様々な魚や野菜など豪華な食材が用意されている。


更に希望の上、釣りやシュノーケリングやSUPなどのアクティビティにも興じる事が出来るのだ。

…まだこの時期は微妙に冷える為、今回はお預けとなったが…。


「これでも安かったんだぞぉ!」


今回のキャンプは父さんが全て用意したので、飛行機代含む移動代や貸切分、キャンプのレンタル利用料金を全て峰岸家が出す事となっている。

…人数も多いので大体7〜80万ぐらいにはなるだろう。


因みに、家族間でも仲の良い我々幼馴染の親達に「任せてくれ!」と言ったのも父さん。

…漢気なのか、出したがりなのかは不明だ。


霧谷さんも初めはオロオロとしていたものの、父さんの「良いから良いから!」と言う適当な物言いに諦めた様だった。



「着いたぁぁあああ!!着いたよぉ!!」

「よっしゃぁああ!彩ぁ!行くぞぉ!葉たんも、上陸じゃあああい!」

「じょーりく、だぁあああ!」


父さんが葉たんを肩から下ろして手を繋ぎ、彩と共に大はしゃぎして飛び跳ねている。

母さんは相変わらず柔らかく微笑んでいた。

どうやら無人島に到着したみたいだ。


「やったぁぁあ!海すっごい綺麗だよ!透き通ってるし!私、サンダル持って来て良かった!」


美玲は直ぐにビーチサンダルに履き替えて、一番乗りで砂浜へと降り立つ。


「水温はどれ程だろうか…。もし、問題なければ靴を脱ぐ事も辞さないが…」


「何、固い事言ってるの!由美ちゃん!ほら、シン兄も!準備して行こう!」


「お兄〜ちゃ〜ん!静さんも〜!早く行こう!」


「ふふ、呼んでますよ優斗」


「そうだなぁ!こう言う時ぐらい楽しまないとな!霧谷さん、行こっか」


「はい!」



島の全景を見ると、確かに広告通りのもので、広大なビーチがあり、冒険心を擽る様な森に囲まれ絶好のキャンプ地である事が窺えた。


既にビーチに何組かがテントを張っており、焚き火の準備を始めていた。


「にいたん、ひ、もえてるの!」


「あれはね〜、焚き火って言って、キャンプの楽しみ方の一つなんだよ〜。後で俺達もやるから楽しみにね!」


「ふへぇー!たのしみなの!」


「ふふ、葉汰くんは元気ですね」


「しーたんは…たのしくない?」


葉たんが表情を窺う様に霧谷さんの顔を下から覗く。


「いーえ!柄にも無く楽しんでますよ、ふふ」

「あはは、しーたんいこ!」


霧谷さんと葉たんが、手を握りながら内陸部へ続く道へ向かって歩き始める。

今日が初対面とは思えない程、二人はすんなり仲良くなったものだ。


因みに、葉たんと霧谷さんは二人とも初めて飛行機に乗ると言う共通点があった。

葉たんは父さんと母さんに手を握られ、霧谷さんは偶然席が隣だった俺と彩の手を握り、空の旅を何とか耐え忍んだ。


「緊張するので二人の手を握って居ても良いですか?」と言う霧谷さんに対して、初め彩は俺に睨みを利かせていたが、離陸直前の霧谷さんの絶望の表情を見てGOサインを出したのだった。


離陸後、機体が安定し、大きく息を吐いた霧谷さんはふと、強く手を握っていた状況を(かえり)みて、手をパッと離し、俺に謝りつつ顔を紅くしていた。


幼馴染の女性陣からのジトーっとした目線を方々から感じたが、完全にスルーした。

…俺も正直顔が熱かった。


その後、葉たんは『きれいなおねえちゃん』から名前を聞いて「しーたん!」と言い切ったのだ。




島の内陸部に位置するプライベートエリアへ到着すると、スタッフさんがキャンプ道具一式と食材を用意して待ち構えていた。


父さんが軽くスタッフさんと話をして、その後俺達男性陣に向かって指示を飛ばす。


「さぁ!それじゃ、テントを張るか!お前ら、手伝え!」

「ふふ、はい」「あいよー!」



俺達を背にして彩は近くに落ちていた長めの棒を拾い、杖の様に「カッ」と地面を鳴らし、葉たんへと向き合う。


「さて、葉たん!島の探検をしたいか!?」


「あやたん!いきたいの!」


「おぉし!葉たん!峰岸探検隊の、副隊長に任命する!!私の事はこれから、隊長と呼ぶ様に!」


「ふぁ……はぃ!たいちょー!」


「はいはーい!私も、この辺り見に行きたーい!」


「うむ、ならみーちゃんは第一号隊員として活躍して貰います!」


「あらあら、私も一緒に見て回ろうかしら」


「お母さんには特殊隊員としての名を授けます。主にセクシー担当です」


彩はチラリと残り三人の候補者を見ると、深く頷いた。


「それでは行くぞ!葉汰副隊長よ!皆も探検出発だぁあああ!!」


「たいちょー!!いくの!」


「気を付けるんだぞぉ〜!走って転んだりしない様になぁ!」


先に駆けていく彩を追い掛ける様にタタッと走り出す葉たん。

その姿を見て、怪我の心配をして声を掛ける。


「大丈夫だよユウ!私達も側で見てるからさ!」

「ふふ、そうですね。それでは少し行って来ますね」


そう言って、美玲と母さんがゆっくりと追い掛ける様に歩き出した。



「三人は一緒に行かなくて良かったの?」


「人数がいた方が早く準備も終わるだろうから、此方に残ったんだ」

「ふふ、早く終わらせて、皆で海でも見て回りましょう」

「そう言う事。さ!テキパキやっちゃおう」


俺の言葉に由美姉、霧谷さん、真帆ちゃんが順に返答する。


三人が手伝ってくれたお陰で、あっという間に大きなテントを三つ程張る事が出来た。

そしてどうせなら、と言う事でお昼の準備をし始める。


料理上手な母さんが離れている今、料理の陣頭指揮を取る人物は誰かと皆の様子を窺う。


父さんと真也は肩を(すく)め、器材の準備に取り掛かる。

…早々にBBQでもするつもりだ。


次に真帆ちゃんと目が合うが、ぶんぶんと顔を横に振っている。


続けて、霧谷さんと由美姉を見ると二人とも問題無さそうにこちらを見ていた。

二人とも純日本人って感じで和のテイストが強い分、BBQには合わない気がする。


「む?何だ?どうした?」


「いや、うん。二人とも和食!って感じだなぁって思ってさ」


「ふふ。私は、洋食も(たしな)みますよ。ですが、確かに和食の方が作るのも食べるのも好きですね」


「一応言って置くが、BBQなら食材を切って焼くだけだから優斗でも調理に問題は無い」


「あぁ、うん。そうだね…だってさ、真帆ちゃん」


そう言って真帆ちゃんに振ってみるが、真帆ちゃんはそれでも首を横に振り続けていた。

…普段から包丁なんて一切握らないんだな。


モデルにした島は和歌山県にあります。

無人島と言いつつ本当の

サバイバル空間とは言い難いですね。


さて、次回は後編。

お楽しみに。

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