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28.GWのSOS・前編

28.GWのSOS・前編





「…峰岸くん…私達…これからどうしましょう……」

「……霧谷さん。俺を信じて。あとは、皆を信じて…。そして、開き直って『この場所』を見て歩こうか!…助けがくるまで………」


SOS。

遭難信号。


スマホの充電を気にしながらも、数メートル上の穴に向かって光を点滅させる。

その度に辺りが明滅し、足下に生い茂る柔らかな草花や壁一面にキラキラと反射する鉱石混じりの岩石がチラつく。


あの穴から落ちたのに、二人とも怪我が無かった事は、まさに不幸中の幸いと言えるだろう。


ゴールデンウィーク中、無人島にて霧谷さんと二人きり。


俺達は遭難した。


なぜこんな事態になっているのか…。

話はゴールデンウィーク前へと(さかのぼ)る。






先ずは、ゴールデンウィークに至るまでの約一週間を振り返りたいと思う。



一週間程前の日曜日は、リオナちゃんの泊まり明け。

結局、お迎えが来る午後3時頃まで一緒にいた。

三人で再び格闘ゲームをしたり、葉たんも混ざって庭でボール遊びをしたりと休みを十分堪能した。



そして、週明けの月曜日。

お昼休みにリオナちゃんが、彩と一緒にお昼ご飯を食べに来た。

その際、外のロータリーへ黒塗りの車が止まり、執事さんが重箱弁当を持って現れる。

お弁当を一緒に食べる様になった初日こそ流石に驚いたが、今ではお決まりの流れとなっている。


「リオナ様、私は外でお待ちしております。後ほど空箱の回収に伺いますので…皆様、何卒宜しくお願い致します」


黒上(くろかみ)ありがとう!」


ニッコリと上品で素敵な笑顔を残して生徒会室を去って行く執事さん。

(ちな)みに、リオナちゃんと初めて会った時の執事さんと同じ人。


くろかみ(黒髪)って、あだ名かなぁ。

なんて思ったけど、後々リオナちゃんに聞いた所、珍しい苗字の執事さんと言う事が分かった。



翌日の火曜日。

この日、父さんが「ゴールデンウィークは友達皆集めてキャンプでもどうだ?」と発案してくれた。

なので、生徒会で集まってくれた皆に問い掛ける。


すると、俺と彩は勿論の事、真也、由美姉、真帆ちゃん(後で聞いた)は参加する事になった。


レナさんは家族で海外旅行、コウジくんはピアノのコンクールとの事で不参加。


美玲は「バスケの大会が4日にあるから日程次第…かな」と言う事。

霧谷さんは「泊まり掛けになりますよね?今度こそ、承諾を頂きます…」と燃えていた。


リオナちゃんはモジモジと躊躇(ちゅうちょ)していたので、何か聞いてみると「久しぶりに家族皆で集まれる事になって…」と言っていたのでキャンプの方は問答無用で不参加とした。


「俺達に遠慮する事は無いから、楽しんで来な!折角の家族団欒なんだから…」と言ってあげると、リオナちゃんは柔らかく微笑み、「先輩…ありがとうございます!」と言ってくれた。

皆は何の事か分からずに首を傾げていたが、俺だけは理解してあげられた。



その翌日、水曜日。

この日は放課後に、由美姉が少しだけ項垂(うなだ)れていた。

軽く話を(うかが)うと、どうやら例の深川 美耶子の事について折り合いがつかないらしい。


「元々は俺宛の手紙だし、直接話そうか?」


「いや、預からせてくれと言ったのは私だ。そして現状、優斗が直接話す事は非常に良くない…すまないが、私を信じて任せてくれ」


項垂れてはいたものの、顔を上げた由美姉は、いつもの鋭く澄んだ目でこちらを見た。


「分かった…。何か力になれる事があったら言って」

「ふむ…。今夜、私の部屋へ来て貰えるか?」

「大丈夫そうだね、じゃ!」

「あ!こら!」


不満気な由美姉を生徒会室に置いて出て行く。

その後、俺はバスケ部へ顔を出して汗を流した。



その翌日の木曜日は、昭和の日。

いわゆる祝日。


リビングのソファに寝転がりながら、のんびり(くつろ)いでいると、彩がタタッと近付いて来る。


「静さん行けるってー!…お兄ちゃん、はしゃぎ過ぎたら……メッ!だからね?」


彩がスマホと俺を交互に見ながら、霧谷さんからのメッセージを教えてくれた。

…確かに心臓の音は跳ね上がったが。


「あとは美玲か…。大会直前のバスケ部の練習をどうするかだなぁ…一応、ゴールデンウィーク中って事で自由参加らしいけど」


相城高校の部活は、校則にもある『生徒の自由を尊重する』に(のっと)り、かなり自由に部活動が行われている。


例えば、他の高校なら、ほぼ絶対参加だったりする『合宿』であったり、『大会の参加』ですら生徒に一任されている。


指導者やチームメイトはそこを言及しないのが、暗黙のルールとなっているみたいだ。


因みに相城高校の女子バスケ部が全国区にのし上がったのは、去年のウィンターカップから。

当時、一年の美玲がインタビューされバスケ雑誌に()る程の活躍を見せた事で、相城高校は一躍お祭り騒ぎ。


その雑誌の記事、(いわ)く。

『誰もが認める実力と美貌。天才、PG(ポイントガード)を独占インタビュー!』


中等部の頃から既に頭角を(あらわ)してはいたが、ここまで大々的に取り上げられたのはこれが初めてだった。


一応、美玲には気を遣って「今回難しそうなら無理するなよ」と言ったが逆に怒られた。

…幼馴染でも乙女心は複雑です。



そして、ゴールデンウィーク前日の朝。

いつもの様に幼馴染達と登校し、教室へと入る。


「何でウチの学校は4月29日の祝日からゴールデンウィークを繋げられ無いのかなぁ」


「一般的にゴールデンウィークと言われているのは5月の3、4、5日の三日間の事ですから。…それに明日、5月1日の土曜日は休業日となっている訳ですし」


「シンくん…そんな事言ってもホラ、大人達は有給を上手く使って10連休とかにして、昭和の日から休んでるんだよ?私達だって、お金貰って休みたいよぉ」


「ふふ、創設者の水上氏から頂戴しますか?」


後ろで美玲と真也が、ゴールデンウィークについての話をしている。

…確かに。どうせ手前に祝日があるなら、一緒にしてしまえば良い物を。



教室内では、ゴールデンウィーク中に何するか〜などの話があちこちで挙がっていた。


「皆さん、おはよう御座います!」


「っと、霧谷さん…おはよ」


珍しく興奮気味の霧谷さんが、前のめりに挨拶して来た。

あまり見せない珍しい彼女の姿に、驚きつつも心が緩まる。


「峰岸くん…キャンプ行けます。説得致しました!」


「うん!彩が昨日教えてくれたよ。…そう言えば、連絡先交換してたんだね」


「…そうですね。峰岸くんも…」


霧谷さんが更に一歩近付こうとした瞬間。


「美玲!翔子先輩から聞いたよぉおお!!ゴールデンウィークの練習サボるってぇ…裏切り者…」


俺と霧谷さんの間を通り抜けて美玲に抱き着く、くどまな。

…お前なぁ、タイミング悪過ぎだろ。


「あ、あははは。…ごめん、愛菜。これが『私の我儘』なんだ…。大会は絶対に出るから!」


「当ったり前だから!…ま、しょうがないか…何せ優斗くんと過ごすんだもんねぇ…。…幾ら校則で自由だって言っても、学生婚は厳しいからね?気を付けてね、優斗くん!」


「おい。お前が一番自由だよ、くどまな」


「…峰岸くん。あの…」


…ガラガラ!


「さぁ、お前ら座れー。あと、ゴールデンウィーク前だから各授業で軽くテストあるから覚悟しておけー」


「ぐぁぁあああ」

「えーマジかぁ…」

「ダルっ…」

「て、てすと!?」



担任が教室へと入り、気怠げに言い放つ言葉がクラスをどん底へと叩き落とした。

近くで素っ頓狂な声を上げる美玲。


そう言えば、脅迫状の犯人の事なんてすっかり忘れて来たなぁ…なんて思いつつも授業を受けた。



そして、ゴールデンウィーク初日を迎えた。



俺達峰岸家が羽田空港へと到着したタイミングは最後だった様で、皆は既に集まって話をしていた。


その中にいる霧谷さんの姿を見て、ハッと息を飲む父さん。

隣で母さんがコホンと咳払いをする。


「…っ!……あの御令嬢は何と言う名だ、優斗」


「…えっと、紹介したく無いです」


「おぉい!?」


「静さぁん!!…っとぉ!」


隣にいた彩が霧谷さんを見付けると、真っ直ぐに駆けて飛び込む。


「わっ…と、彩ちゃん…びっくりしました。ふふ」


「おはよう、霧谷さん。良く眠れたかな?」


「ふふ、恥ずかしながら…今日が楽しみで、ずっと眠りが浅かったです」



俺達の会話を少し後ろで聞いている父さんと母さん。

そして、母さんと手を繋ぎながら影に隠れてる葉たん。

主に初対面の霧谷さんを見て緊張したのか、(かたく)なに顔を見せない。

…しょうがないか。ちょっと緊張をほぐしてあげよう。


「葉たん、大丈夫だよ〜。このお姉さんは葉たんと仲良くしたいって!」


「…はぅ…峰岸くん……。その子は?も、もしかして…皆さんの中の誰かとの…」


「ふふふ…静さん!『私』と『お兄ちゃん』の愛する子供なのです!」


「……っ………」


「………いや、弟…なんだけど」


「お、弟さんでしたか!そうですよね、お子さんにしては大き過ぎると勿論思ってました。ふふ」


「にいたん、きれいなおねえちゃん、かおまっかなの!」


何だか霧谷さんが、いつになく饒舌(じょうぜつ)だ。



「さて霧谷静ちゃんで間違い無いかな?」


父さんが確認する様に問い掛ける。

…今、霧谷さんと葉たんが話そうとしてるんだから黙っとけよ。


「はい。峰岸くんのお父様でいらっしゃいますね。本日はお誘い頂き、誠に有り難う御座います」


「固い事気にしないで、楽しんでくれな。…あと、爺さんに宜しく言って置いてくれ」


「えっと…はい。あの…お祖父様をご存知なのですか?」


「昔、少しな!今、話す事では無いから…話さねぇけど…今は…綺麗過ぎる静ちゃんの事について…」


「お父さん!!静さんにあまり近付かないで!清潔感薄れるでしょ!」


「彩ぁぁあああ!??父さんが…汚いと…あぁ、反抗期はもう直ぐそこまで来てるぞ…優斗……」


「今更じゃん。…さて、皆準備出来たかな?」


俺のすげない返事に、更に落胆する父さんを置いて皆に確認を取る。


ゴールデンウィークに一体何があったのか

少しずつ紐解いて行きます。


そして、図らずも二人きりに。

どんな会話が成されるのか…。


次回はGW中編。

お楽しみに。

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