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22.鬼と匂いと越えるか一線

22.鬼と匂いと越えるか一線





健康診断と身体測定の日から数日経ち、カラッと晴れた休日。

父さんと母さんと葉たんの3人で、「近くの公園に行ってくるから」と言う事で留守番を任された俺と彩。


助けが無かったら確実に挙式コースだった。

あの時の事を、後にこう語る。


今までに嗅いだ事の無い、

蠱惑的(こわくてき)な甘い香りがした。




「お兄ちゃ〜ん、お昼どうしよっか?」


「朝の残りで簡単に済ませていいだろー」


リビングのソファで肩肘つきながら雑にテレビをザッピングしながら答えると、背後からゴゴゴと効果音が聞こえて来そうな威圧感を感じ、振り向く。


「なんか適当で愛が感じられない。やり直し!」


「いや、母さんが先に作ってお昼にって残してくれてるものがあるんだから。…あと、愛は関係ない」


「残り物は私が全部食べる。お兄ちゃんは私が作った物を食べる。はい解決!」


「ヤダよ、彩の料理…アレだもん」


「ちょ!?人様の料理をアレって、ぼやかした様で一番突き刺さるんだけど!?」


「とりあえず」


区切る様に言って立ち上がり、部屋に向かおうとリビングのドアに手をかける。


「お昼は楽に、簡単に、な。俺は部屋にいるから何かあったら呼んでくれ」


ぽかんと口を開けたまま立ち尽くす我が妹をリビングに置き去り、欠伸(あくび)をしつつ階段の手すりに手を掛け二階へ向かう。


部屋に入って椅子に深く腰掛け、天井を仰ぎ見る。


「最近の彩は特にくっ付きたがるからなぁ…ここらで適切な距離を教えてやらないとな」


誰に言うでも無く、自分に言い聞かすかの様にボソリと呟く。


チラリと目を向けた先、壁に掛けられたコルクボードに貼られた写真の中の一枚に目が行く。


俺と彩が家族になる、もっと前。

初めて会った時の写真。


写真の中の二人は手を繋ぎ合い、ぎこちない表情でレンズに目を向けていた。


「俺達は兄妹なんだから」


また呟く。




…ガチャガチャ。


階下で玄関のドアの開閉音が聞こえる。

…彩が外に出たのかな?


今日は折角の休日だし、スマホゲーとかしてY動画チャンネル見て、ゆっくり読みかけの小説でも読んで過ごすか。


(しばら)くベッドの上でだらけながら、読みかけの小説を読んでいると、ヒュポッとスマホが鳴った。


スマホの画面を覗くと由美姉からメッセージが入っていた。

『彩がウチに来てたみたいだが、直ぐに帰った。何かあったか?』


...ん?さっき外に出てた時の事かな?

「特に何も...っと」


もう一つ簡単に「外に出てたっぽいけど、そっちに行ってたのは知らない」とも伝え、軽く伸びをしてから立ち上がる。

...喉が渇いた。


小説を机に半開きの状態で置き、冷たいお茶でも飲もうと部屋から出て一階へと降りる。


リビングに入り、棚からコップを出して水で軽く(すす)ぎ、冷蔵庫から目当ての緑茶のペットボトルを手に取り、注ぎ込む。


一つ欠伸をしてから、お茶をゴクゴクと勢い良く飲む。

…はぁ、やっぱ緑茶は最強だ。


空になったコップにもう一度緑茶を注いで手に取り、二階の自室へと戻る


階段を登ってるタイミングで玄関からガチャリと音が聞こえた。

振り返ると、彩がニコリと笑顔で帰宅。


「お兄〜ちゃん♪ちょっと、話があるんだけど…」


丁度、階段にいた俺を確認すると、パタパタと近寄って来る。

何か小さな箱の様な物を持ってる。


「由美姉の家に行ってた?ついさっき連絡来てたけど」

「っぐ…う、うん。一応ね」


あからさまに目を泳がせている。

…何だ?何か怪しい。


「俺部屋で小説読んでるから、また後でな」

「むぅ…」


さっさと階段を上がり、俺の部屋に入る。


すると、彩も自分の部屋に入ったのか隣の部屋からガサゴソと音がする。

そして、5分もしない内に俺の部屋に勝手に入って来る。


「お兄〜ちゃん♪小説なんて読んでないで、イチャイチャしようよ〜!」


「どうした急に」


「お兄ちゃんの事好きなんだもん。しょうがない」


「俺はお前に家族愛以外の愛は向けた覚えはない」


「私はお兄ちゃん以外の人に愛を向けた事はない」


「ブラコンも大概にしろ!」


「ブラコンは家族愛でしょ?そんなんじゃない!」


「だぁから、それを辞めなさいって言ってんの」


懇々と説教すると彩は頬を膨らませ、つまらないと言った表情でデスクチェアに座っていた俺の膝上に対面した状態で座り始める。

…いいえ、入ってません。


「ちょ、こらっ」


流石に不味いと思い、逃げようともがきはするが時既に遅し、しなだれ掛かる様にして身体を密着させてくる。


「お兄ちゃん…」


いつもほぼ必ずと言って良い程、抱き着いて来るから別段意識はして来なかったが、女性として充分に成熟した身体である。


妹に対して何と無節操な考えかと、さぞかしお思いでしょうが、いざ同じ立場になってみて欲しい。

やっぱりさせない。

考えてみて欲しい。


押し付けて来る胸は、高校一年生にして確かな存在感で非常に柔らかな感触。そして、普段からカップ数が上がると必ず報告に来るマメさ。うん、可愛らしい。

因みに、この間の身体測定の結果で念願のCになったらしい。


ぐいぐいと更に密着させて来るが、重みを感じさせ無いキュッと引き締まったスレンダーな身体。


母親譲りのぱっちり二重に潤んだ瞳に、妹ながら自然とドキドキしてしまう。



「私はいつでも…良いんだよ?」


動悸が激しい。

くらりとした。

何だか自分を保てない。

あれぇ、頭がボーッとして来たぞ。

さっきから良い匂いに包まれてる。


体に力が入らず、くたっと、更に彩と密着した。このままだと心臓がくっつきそうだ。


抱き合ったまま目の前に、首すじから背中に掛けてのラインが見えた。


「…ぁ、あぅ、ふ……。息、くすぐったいね」


彩が色っぽい声を上げる。

思わずオスとして反応する。


「あっ」


ぴくんと彩が身体を震わすと、俺の耳元でまた声を上げた。


「…お兄ちゃん、すごい…ね」



びりびりっと脳が震える。

危険な香りのする異物混入により、神経系統に異常を来してる。どこか遠くの方でジリリリリと警鐘が鳴っている気がする。


思わず抱き締める力が強くなり、自然と二人はぴたりとくっ付いていた。


抱き締めたまま両手で彩の腰を引き寄せる。


「っぁ…」


その反応が良くて、悪戯心を(くすぐ)られた俺は続けて彩の首すじに舌を沿()わせつつ、背中からお尻にかけて爪で優しくゆっくりと引っ()いてやった。


「〜〜〜〜っ」


腕の中でぶるっと2、3度震えたかと思うと、口元に手を当てて声を上げない様に我慢してるのが分かった。


ゾクゾクっとした。

止まらない。


薄手のワンピースから体温が直接伝わり、心臓の音が(うるさ)いぐらいに聞こえる。

これはどちらが鳴らしてる音だろうか?


辺りに(もや)が掛かった様に、目の前で何度も反応して震えている彩しか視認できない。


彩を抱き上げ、ベッドに仰向けに寝かせて横から覆い被さる。


「…嬉しい…お兄ちゃん」


小振りなお尻に手を当て、太ももを上へ下へと撫でながらつつーっとおへそまで滑らせ、ゆっくりと手を動かす。


ぴくぴくっと反応し、恥ずかしそうにして顔を背ける。それを見て彩の両の手を上に挙げさせて片手で拘束する。シミ一つ無い綺麗な(わき)が露出する。


「…っ」


吸い寄せられる様に顔を近付けて、腋にキスをして舌でゆっくりと舐めて吸い上げる。


「あああっはぁあ!」


彩が今までで一番の嬌声(きょうせい)を上げ、大きく背中を反らす。


その反応がオスとして完全に覚醒した俺の神経を、更に(たかぶ)らせる。


「お兄、ちゃん…お願い、ちゅーして…」


彩がトロンとした目でこちらを見ている。


「彩…」






ピンポーン。


はて


ピンポーーーン。


何か聞こえ、ん?


ピ、ピ、ピンポーーーン。


ガチャガチャ!!


待て、俺は今何してる。



「あーーーやーーー!!開けるんだーー!」


恐らく玄関の方から、聞き覚えのある声が聞こえて来る。


「ぅ、…もう少し、あと、もうちょっとだったのに…」


俺の真下で、途轍(とてつ)も無く悔しそうな顔をしている彩。


「お兄ちゃん!私準備万端だから良いよ!早く!」


「どうかしてた!すまん!」


直ぐに直立不動の構えを取り、()たるべき衝撃に備える。


バターン!!!



俺の部屋の扉が今までに無い勢いで、ぶち開かれた。

数秒の沈黙の後、現れたるは由美姉の面を被った鬼。


「悪い子はいねがぁ?」


モノホンじゃないか。



ダラダラと大汗を流す我が妹。

そして、直立不動の俺と息子。


ギロリとこちらを視界に捉える鬼。

息子と共に(こうべ)を垂れる。


「彩」


「はひ」


「媚薬香水」


「ぐっ」


彩の顔色が可哀想なくらい真っ青になっている。


気軽に、許してあげてくれなどとは口が裂けても言えない状況。


一つの言葉で、簡単に命は落ちるんだ。


…って、ん?


「媚薬香水??」


単純に聞き慣れない単語に首を傾げ、2人を見る。主に彩。


すると、またしても、ビクッと身を震わせて青ざめた仔ウサギが逃げ場を探す様に視線を泳がせる。



「彩」


これは俺から、


「…ぁぃ」


「聞こえませんが」


「ふぇぇえん!!ずびばぜんでじだぁぁあ」



大泣きした彩を2人で介抱し、泣き止んだ頃すかさず第二ラウンドの説教に入り、またしても大泣きした頃にようやく由美姉の溜飲(りゅういん)が下がった。


泣き疲れた彩は自室に引き()もると、そのまま寝こけてしまい、一応の事態の収拾はついた。



話を要約すると、ネット通販で媚薬の香水を見つけた由美姉が試しにと購入、前に一度彩にチラッと話した事があったそうだ。


今日、物を確認したところ、メモ紙が一枚『由美姉、コレ借ります。御礼に可愛い赤ちゃんを見せます』とあったそうだ。


ついさっき彩が来ていた事から合致させ、野生の勘で助けに駆け付けたとの事だ。


「試しに媚薬を買ってどうする気だったの?」


この質問に顔を引き()らせ、「んへへ」と笑った由美姉には「1週間口を聞きません」と言って対応した。


流石に反省したのか、早くも2日目に彩をも越える大泣きで謝って来たので仕方無く許してあげた。


鬼の目にも涙は溢れるものだ。


兄妹になる前の写真。

まだぎこちない二人はどの様な過程を経て、

現在の関係になったのでしょう。

いずれ描きます。


次回、新たな手紙が…。

お楽しみに。

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