表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/54

21.女神はホントにいたんだ

21.女神はホントにいたんだ





本日は健康診断と身体測定。

朝起きてリビングに向かうと、母さんと彩が

二人で向かい合い目で語らっていた。


「何してんの?…二人とも」


「あらあら、おはようユウさん」


母さんはチラリとこちらを窺うと挨拶してくれたが、彩は珍しく一瞥(いちべつ)もくれない。

肩を震わせ俯く彩。


「彩?どした?」


「………お、お兄ちゃん!!私の胸を揉みしだいて!」


…朝から何をほざいてやがるんだウチのアホ妹は。


「母さん、今日は牛乳じゃなくてコーヒーにして貰っても良いかな?」


「ふふ、分かりました。…彩も、今からじゃどうしようもないでしょう?」


母さんは柔らかな微笑みを浮かべつつ、

彩の背後から優しく髪を撫でた。


「だっでぇ〜、最後の足掻(あが)きを…女性ホルモンの促進を…ぅぇええん」


彩はそのまま母さんに抱き着き、その豊満な胸に顔を(うず)めた。


「あぁ……憎い…巨乳達が…うへへへへ」


(なお)もスリスリと母さんに抱き着き、離れまいとする彩の顔は幸せに満ちていた。


「欲望に忠実なダメ妹よ。さっさと朝飯食べて学校行くぞー」


彩は俺の言葉に反応すると、キリッとこちらへ視線を向ける。


「あのねぇ、責任の一端はお兄ちゃんにもあるんだからね!お兄ちゃんが毎晩優しくマッサージしてくれてたら今頃…」


「はいはい、兄は普通そんな責任負いません」


俺は彩の無茶振りを軽く(かわ)しつつ和室に行き、線香をあげる。

手を合わせて戻ると、そのままダイニングテーブルの椅子に座る。


俺の歯牙(しが)にも掛けない態度に(ごう)を煮やしたのか、彩はリビングのソファに飛び込んで仰向けに寝そべり、全く動かなくなった。


「ワタシ、ガッコ、イキマセン」


ピクリとも動かずにカタコトの言葉を発して目を閉じる彩。


「彩、俺は先に飯食べて出るからなー」


「ワタシ、ナニモ、キコエマセン」


「あやたん、なにしてるの〜?」


見ると葉たんがトテトテとソファに近付き、彩の(わき)をつついていた。


「ふ……ふふ……っふ…」


「あやたんピクピクしてるの!」


葉たんがツンツンする度に、彩の口から笑みが漏れていた。


「葉…たん………く…はっ…お返しっ」


「きゃははははは!」


登校サボタージュする気だったのに、葉たんの無邪気な攻撃に屈した様だ。


(しばら)く葉たんと彩は(くすぐ)り合って一頻(ひとしき)り笑い合うと起き上がり、二人一緒に仏壇の前まで行く。


二人で手を合わせるとそのままこちらまで手を繋いで来て、ダイニングテーブルの椅子に座る。


「私お母さんを見て、気付いちゃったんだ。…遺伝子的な期待値高いから大丈夫だって」


「お、おう」


彩は(うれ)いを振り切る様な澄んだ目で微笑む。

…そんなに気にする事かなぁ。


父さんは朝まで飲み過ぎたせいか、

二日酔い状態で寝ている様だった。


俺達は朝飯を食べた後、再度準備を整えて学校へと向かい、いつも通り途中で幼馴染達と合流した。



「憂鬱だなぁ…身長170cm超えてたらどうしよう…胸だって…」


途中、美玲が(なげ)きながら(うつむ)く。


「スタイル抜群で(むし)ろ、良いんじゃ無いの?」


軽い気持ちで答えるが、美玲は苦笑する。


「日常生活に支障をきたす可能性があったりするのでしょう。あとは、これ以上女生徒人気が増える事を危惧(きぐ)しているんですよ、優斗」


「シンくんは辛辣(しんらつ)だよねぇ…。女の子は、皆、この日が憂鬱なんだよ。人それぞれ悩みがあってさ…」


美玲が自分の胸を抑えながら、溜め息を吐く。


「みーちゃんは取り敢えず私の敵だから、由美姉と真帆ちゃんは裏切らないでね?」


彩はその様子を見て、ギラリと眼を光らせると俺達の前を歩く由美姉と真帆ちゃんに呼び掛けた。


「私はまだ中学生だもん」


「ぐっ…私はほっといてくれ、彩よ…」


思わぬ真帆ちゃんの言葉に反応して、更に落ち込む由美姉。やっぱり気にする物なんだろうな。



学校へ着き、先に中等部へ向かう真帆ちゃんを見送り、校舎へ入る。由美姉と彩は各階で分かれ、真也と美玲と一緒に教室へと向かう。


教室に入ると、後ろのスペースで徹也が腕立て伏せをしていた。


「ふん!ふん!ふん!」


クラスメイト達はその異様な姿を無視して、談笑したり、スマホを(いじ)ったりとそれぞれだった。


「何してんだコイツ…」


すると俺の言葉に反応したのか、徹也はガバッと立ち上がる。


「優斗ぉ!!今日のスポーツテストで勝負だコラァ!!俺が勝ったら美玲様から手を引けぇぇ!!」


「は?何言ってんだお前?」


「だぁからぁ!!今日のスポーツテストで」


「身体測定な、体力測定は6月」


「……いいから勝負だって、言ってっだろぉがぁ!!」


「…はぁ。筋肉くん、ウルサイ」


「ハイ!」


美玲が溜め息を吐きつつ、暑苦しい徹也を無力化する。

…こんなに従順なら、喋り出す瞬間に言ってくれて良いのに。


先に席に座っていた霧谷さんが、微笑みながらこちらを見ていた。


「峰岸くん、おはようございます。…松本さん、葛木くんも」


「おはよう」

「おはよ!霧谷さん」

「おはようございます」


俺達は軽く挨拶を交わし、席へと着席する。


昨日、由美姉と話した事が思い起こされる。


由美姉は言っていた。


「状況証拠的には直前に下駄箱に触れているのは『霧谷嬢が最後』だ」と。


『ラブレターの差出人』と『脅迫状の犯人』


霧谷さんは、どちらにせよ関係者である事が分かった。


直接話さなければならないものの、どうしたものか悩む。


担任が教室へ入り、HRが始まってからもその事を思い直していた。



HR後。

俺達はそれぞれ健康診断シートと身体測定シートを手渡されると、男子と女子に分かれ体操服に着替えた後、各場所に向かう事となった。


「初めは身体測定関係だな。空き教室に準備してあるみたいだ…行くか真也」


「ええ、そうですね」


2年B組の男子一団でゾロゾロと2階の空き教室へ向かう。


教室から分かれる際、美玲と一緒にいた霧谷さんと目が合った。





〜Another side〜


男子達がゾロゾロと移動し始める。

視線を向けると丁度ユウがこちらを見ていた。

いや、霧谷さんを…。


「霧谷さん?私達もそろそろ…」


「…っ!えぇ、そうですね。行きましょうか」


少し頬を赤らめ、私の後を着いて来る。

そして私達は、女子の一団の最後方に混ざる。


「霧谷さんは、身体測定の日って憂鬱になったりする?」


「ふふ、どちらかと言えば解放感ですかね。一週間程前から食事制限をしたりするので、ようやく…と言う感じでしょうか」


「あぁ…分かるなぁ、それ。まさか霧谷さんも同じ感覚だと思わなかった…」


…お嬢様でも『数字上、普段よりも少しでも減らせる様に』見栄を張り、体重を落としてるんだなぁ。


でも、憂鬱感が無いのは、普段から自信に満ち溢れているからだろうか。


霧谷さんは普段おっとりして恥ずかしがり屋なのに、誰にでも分け隔てなく話しかけたりする部分も持ち合わせている。


だからこそ、お嬢様なのに冷たい印象を与えさせず、寧ろ暖かみのある女性だと感じる。


それに加え、物怖じしない強さもある様に見えるから…って、私は霧谷さんの事ばかり考えてる。


いや。


ユウを見てる霧谷さんを見てるんだ。


ユウと少しでも視線の合う霧谷さんに

()れてる私は子供みたいだ。




私達が始めに向かった場所は、本校舎地下一階にある地下ホール前のロータリー。


そこでは、心電図検査用の検診車が停まってあり、看護婦さん達が待ち受けていた。


順番にクラスの子達が検診車に乗り、終わったら次の場所へ皆で向かう為に待機する。


心電図検査とあって、出来るだけ素肌に近い服装になる為、皆、きゃっきゃっと騒いでいた。


私達は最後尾にいたので、最後に検診車に入る事になった。


ふと、目の前にいる霧谷さんのあらぬ姿を想像する。


…え、やばい。絶対やばいよ。


急に語彙(ごい)が吹き飛んでしまう程、

私が想像した彼女は神々しかった。



「次、お名前は?」


「はい、霧谷静です。宜しくお願い致します」


霧谷さんが看護婦さんに呼ばれて、なぜか私がドキッとする。

霧谷さんは健康診断のシートを手渡し、恥ずかしながらも上の体操服を鎖骨辺りまでたくし上げる。


…カチャ。


音がした方を見ると車の外で待機中のクラスメイト達が、車の入り口をゆっくりと開けて中を覗いていた。


流石に止めようとしたが、皆の期待の視線と(おが)むクラスメイト達に嘆息し諦める。


「あら、ストッキングはごめんなさい。脱いで貰わないと…足首に電極を付けないといけないの」


看護婦の声に思わず振り向き、霧谷さんを凝視する。


「っ…そ、そう…なんですね…」


霧谷さんが顔を真っ赤にさせながら、

するりと下の体操着を脱ぐ。


そして、目の前でストッキングを脱いだ。


私の記憶は、そこから…とてもあやふやだった。


〜Another side end〜




健康診断と身体測定が全て終わる。

そんな中、教室に戻るとクラスの女子達が皆一様に興奮していた。


「控え目に言って女神だったよね」

「正直性別とか関係無しに興奮したわ」

「私、もう!……もう…止まれない!!!」

「静御前って言うか…女神。うん、女神様」

「着痩せするタイプだったわ」

「あんなの見せられたら女としてやって行けない」

「一年の峰岸彩ちゃんと恋仲って噂だけど、関係無く私が奪いたい…全てを」



そんな中、美玲がボーッとした表情で自分の席に座っていた。


「お〜い、美玲?…お〜い!美玲!」


「……ハッ!?」


「どした?大丈夫か?」


「ユウ……女神はここに…ホントにいたんだ」


美玲は、信じられない物を見たかの様な表情で、こちらを見ていた。


「…お前、大丈夫か?」


「あぁ、うん、ごめん。ユウには分からないよね」


「な、なんだよ…」



美玲に限らず、クラスの女子誰一人として

それ以上語る事無くこの騒動は幕を下ろした。


ただこれだけは分かった。


霧谷さんはいつまでも顔を真っ赤にさせ、

霧谷さんを見る女子達の目はギラついていた。


…一体、何があったんだ。


健康診断や人間ドックは

あっちに行ったりこっちに行ったりと

移動しては呼ばれて大変ですね。

それと、看護婦さん達の苦労が思いやられます。


次回は一体どうなるか。

お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ