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14.小悪魔チックなピュア乙女

14.小悪魔チックなピュア乙女





生徒会室へ揃って連行された俺と由美姉。


前回拘束された時の様な展開になるかと思いきや、由美姉はサッといつもの会長席に腰掛けると、皆へ視線を送る。


「座ったらどうかな?」


由美姉の言葉に真也は適当に座り、俺の分の弁当も教室から持って来てくれていた様で、開け始める。

俺はその場から動けずにいた。


「由美姉!」「由美ちゃん!」


彩と美玲は同時に口を開いたかと思えば、同じ様に由美姉へ抗議の表情を見せる。


「先程の事なら、簡単な事だ。彩だってしているだろう?好きだからキスをした。それだけだ」


「それは…まあ、そうだけど!由美姉は今まで本気だと思わなかったから…」


「あぁ、気付いたんだ。いや、正確には気付かされたと言っても良い。我々はぬるま湯に()かり切っていたんだと…」


「由美ちゃん…。急過ぎて分かんないよ…」


「美玲。気持ちは充分伝わるが、今まで守り隠して来た物が見つけられ、価値を付けられ持ち去られようとしている。私は手放す気など無い」



そんな幼馴染達の言い合いの中、俺だけ別の事を考えていた。


ラブレターの事。

差出人が由美姉だったという事は、少なくとも昨日、(とぼ)けていた事になる。


確かに理解も出来る。

あんな脅迫状の件が露呈(ろてい)した中、「それは私が出したモノだ」とは言い辛い。



そして、そこから更に思考を更新する。


『差出人が由美姉では無い可能性』


もし、嘘を付いていた場合、それは『差出人の乗っ取り』が行われた事になる。


それは、何というか…。

幼馴染である由美姉を、手放しで信じられる状況では無くなってしまう行為だ。


だからこそ、信じたい。


由美姉が本物の差出人である事を…。



「優斗も、戸惑ってはいるだろうが、どうだろう?今すぐ答えを出せと()かすのは辞める事にする。ただ、覚えて置いて欲しい。私は(ただ)の幼馴染から脱却し、想いを伝えたと云う事を…」


視界の端で、ピクリと美玲が反応した様な気がする。


「…あぁ、分かったよ由美姉。俺もちゃんと向き合う事にする」


俺はそう言うと真也の隣の椅子に座り、真也から箸を受け取る。


「そうか!ふふ…良かった!」


由美姉はパッと破顔(はがん)させると、上機嫌で隣に併設(へいせつ)された給湯室へお茶の用意をしに行く。


残された彩と美玲は力無く対面の椅子へと座ると、のそのそと弁当を食べる用意を始めた。


「お兄ちゃん、調子乗り過ぎたら駄目だからね…(いく)ら由美姉でも、その…とにかく、駄目だからね!」


彩がジトーっとした目でこちらを窺い、吐き捨てる様に言うと、白米のみをかき込む。


美玲はチラッと給湯室へ視線を送ると、一つだけ小さな溜息(ためいき)を吐いた。


戻って来た由美姉は柔らかな微笑みを浮かべて楽しそうにお茶を配膳して、席へ戻る。


それから俺達は何となく気まずい空気と弁当を味わいながら昼休みを消化したのだった。




放課後。

机に突っ伏し思案している俺の元に霧谷さんが近付いて来る。

その存在感にふと(たたず)まいを正し、背筋を伸ばし向き直る。


「峰岸くん。午前中はしっかりお休み出来ましたか?やはり朝会った時から心労が()まってる様にお見受けしたので、心配していたんです…」


「ありがとう…ごめんね?心配掛けさせちゃって…」


「いえ、良いんです。…それで、生徒会室へ伺おうかと思うのですが、皆さんそのまま向かわれますか?」


「うん、そうだね。美玲も真也も特に予定が無ければそのまま行くかな…」


霧谷さんの表情をチラッと窺う。

(よど)みの無い真っ直ぐな綺麗な瞳。

…彼女の事を信じたい。


霧谷さんのありのままの純真な心を信じたい。

だが、心のどこかで警鐘を鳴らしている。

どうしようも無く、(おの)狭量(きょうりょう)心根(こころね)(うら)めしく思う。


だが、例えそうであったとしても、皆で固まり続けていれば大きな動きは出来ない筈だ。


「うん、皆で一緒に行こうか」


そう言うと、霧谷さんは柔らかく微笑み、教室のドアの方へ視線を向けて先を(うなが)した。


近くで聞いていた美玲と真也も準備が整った様で、ほぼ同時に立ち上がる。


「…うん、行こっか」


少し元気の無い美玲の言葉に俺達は頷き合い、生徒会室へと向かった。




生徒会室に着くと俺達が一番乗りだったらしく、そのままの流れで明日のオリエンテーションの準備に取り掛かろうとしていると、扉が急に開かれた。


「どうも〜!遊びに来ましたぁ♪」


生徒会室に飛び込んでくる彩とリオナちゃん。


相変わらず小さな身体にゴスロリ服+制服を身に纏い元気に登場する小悪魔ガール。


そんな、全く高校生に見えないリオナちゃんを、背後から抱き抱える様に入ってくる彩。


彩は幼馴染グループの中では身長的に小さな方だが、もっと小さい子を見つけて(いじ)れるのが余程ご満悦なのか、ツヤツヤした表情だった。


「お、早かったな」


「まぁね。一年生はまだ授業らしい授業ってしてなくて、ずっと自己紹介とか簡単な学校紹介とか事務的な事ばっかりしてるんだ〜」


「と言っても、俺達2、3年生も基本的にはまだ授業とは名ばかりの挨拶とか、あくまで事前の内容しかしてないけどな」


「そうなんだ。あ!そう言えば、明日のオリエンテーションだけど、私普通に新入生側で出て良いんだよね?」


「まぁ、そりゃ新入生歓迎会なんだから素直に楽しみなよ」


確認を込めて俺の表情を窺う彩。



「んん〜、でもなぁ…お兄ちゃんも皆も運営側に回るし、正直微妙なんだよね〜。リオナちゃんと回れるのは楽しそうだけど…」


「ね〜、彩ちゃん!優斗先輩より、素敵なイケメンの先輩だっているかもしれないんだから!探そうよ!」


「おぉっと、この子は私に喧嘩を売る気だねぇ…はい、買いますその喧嘩、買わせて頂きます」


彩がリオナちゃんの言葉に素早く反応してギラリと(にら)み付ける。


「うっ…でもでも!彩ちゃんはきっと、私よりも男の人の事知らない筈なんだから!」


「ほほぅ…。受けて立ちますとも。男の人(お兄ちゃん)を知り尽くした私に対して何と浅い挑戦状を…」


「なら勝負だよ!彩ちゃん!私だって雑誌見たりとか、色々勉強してるんだから!」


「なら、リオナちゃんは男の人とキスした事ある?男の人の身体ちゃんと見た事ある?男性器って見た事ある?」


「ふへぇっ!!?そ、そ、そんなの!」


「ぐふふふふ…小悪魔系に見せて、実は純真無垢でピュアなリオナちゃんを汚していく快感が……ぁぁ」


「「そいやっ!」」

…スパコーーーン!!!


我が妹の顔が、俗世から離れ私欲に(まみ)れた下卑(げび)た表情に変わりきる前に、美玲と一緒に頭をぶっ叩いてツッコむ。

…幼い頃の純真無垢なお前は、もういなくなってしまったんだな。


(そば)で頬を赤らめた霧谷さんが、コホンと一つ咳払いをした。




「おぉぉぉい戻って来ぉい、彩ぁ〜」

「…ハッ!?」


生徒会室のソファに寝かせてた彩が、意識を取り戻す。


ソファから見て会議机を挟んだ反対側の椅子に美玲が座り、顔を真っ赤にさせ涙目のリオナちゃんをすっぽりと抱き締め、こちらを苦笑したまま見ている。


「私…一体何を…」


「あぁ、放送コードギリギリの顔と言動だったからな。俺達が止めた」


彩は辺りに視線を向ける。

既に、会長席へ由美姉が座り、近くの椅子に呆れ顔のコウジくんと満面の笑みを浮かべたレナさんがいるのを見て、時間の経過を頭の中で計算し考えている様だった。


その後、リオナちゃんは皆に順番に頭を撫でて貰えて満足したのか、お迎えを呼んで生徒会室から風の様に去って行った。


小悪魔系だと思いきや中身は純情。

日々、色々な事を『勉強』していく。


幼馴染達の感情の変化は繊細です。

霧谷さんのターンは、きっと

もう少し先なのでお待ち下さい。


次回はどうなるか。

お楽しみに…。


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