本編3
頭の中にあるものをうまく整頓できない…泣
翌日のお昼、昨日のパーティー候補の相手の事を考えながら、ギルドにやってきた。
「あっ!来たね!」
「うん、どんな人が来るのか…ちょっとだけ緊張してるよ…」
昨日はどんな人が来るのかな?なんて悩んでしまって少し寝不足なんだよね。
眠るタイミングで悩みを考えてしまうのは、なんでなんだろう…
「昨日言った人だけど、その人もお昼頃来るってさ!座って待ってて!」
ギルド内にある、何個か置かれたテーブルの一つに腰をかけて数分後、若い男が私の前に歩いてきて、声をかけてきた。
「おい、お前か?俺とパーティーを組みたい女は」
いや、随分上から目線だな?別に貴方とではないし、気が合えば誰でもいいんだよ?あと、初対面の人の事、女って呼ぶのはどうなの?
そんな、湧き出た怒りと文句は、その男の顔を見た時、吹き飛んでしまった…
「「え?」」
顔がエルメス王子そっくりだ!!
いや、顔だけじゃない。背も手足の長さも一週間前見た王子と一緒だ!
違いを挙げるとしたら王子の様な銀髪ではなく、黒髪な事と、王子には相応しくない、質素な服装な事だけか。
「あ!すいません…知り合いに物凄く似てたもので…」
だが、天文学的数字のレベルの他人の空似だろう。
今王子は、お城でマリアさんとイチャイチャするのに忙しいはずだ。
だから、聞こえてない!私と一緒に相手も「え!」なんて、言ってるわけない!
「いや、俺も、お前が知り合いによく似ていてな」
そう、それでいい。知り合いじゃない!絶対、違う
「あいつは、お前みたいな茶髪じゃなくて、金髪だからな」
あーー、聞こえないわー
急激に聞こえないわー
「行方不明なんだが、顔が瓜二つなんだよな…」
考えなくていい!万が一、億が一あの人だったら、めんどくさい事になるから!
「もしかして、生き別れの姉妹か?何か昔、不幸があって、捨てられたとか?」
馬鹿!もう馬鹿!わかってたけども!
閃いたって顔するんじゃない!大体この後の展開わかってるから!止めろ!その考えた事言ったら、そのお腹にパンチを入れるぞ!
「おいお前、もしかして姉か妹に、アイリー「ソォォォイ!」ブホォ!」
話している間に、こっそり椅子から移動して目の前の知らない人の前に立って、知らない人から知っているかもしれない人にジョブチェンジした瞬間、彼をくの字に折り曲げた。
周りの、ザワザワした雰囲気にカレンさんがひょっこり、受付口から顔を出してくる
顔を出したカレンさんに少しの恨みと大丈夫のグーサインを届けると、周りもカレンさんも通常運転に戻った。
基本、冒険者はノータッチがマナーだと聞いていたが、なるほどねこれは便利だ。
様々な境遇の人がいるからこそのマナーだね。
「おい!いきなり何をする!」
「すいません。貴方が、前衛として使えるかのテストをしました」
無茶苦茶だけど、これに懲りて私には関わらないだろう
こういう人は、付き合った方が馬鹿を見る。
この人は、ほぼ100%非常に残念ながら、エルメス王子その人だろう。
何故この人がここに居るのか気にはなる。だからと言って関わってたら、私の正体がバレる可能性もある。
そもそも冒険者として役に立つとは思えない。
魔術はほぼの授業サボってたらしいし、剣術は気に入らないって理由で、2、3回教師をクビににしたらしい
適当な話でごまかしてあとはノータッチ、これで決まり。
「俺が使えるかテストしただと?」
「はい。ですが、ダメですね。私のパンチも対処できないのなら、私一人の方がマシなくらいですから」
よし!これでもう私と関わらないでしょ!
激怒して、そっちから断るはず!
「ふざけるな!」
よしきた!!
「こい!俺の本当の実力を見せてやる!」
アレ??どゆこと?こいってどこに?
ぼけっとした私を他所にトコトコと歩いていくエルメス王子
「受付嬢!あの女と依頼を受けるからこれを受理しろ」
「はい、大丈夫ですよ!気をつけて行ってらっしゃいませ!」
いやいや止めなきゃ!このままじゃ、エルメス王子と依頼に行く事に…って早い!もう、ドアに手を掛けてる!
「よし行くぞ!俺を舐めた事、後悔させてやるからな!」
そう言ってギルドを出て行くエルメス王子。
いや、もう後悔してますから…帰って来て…
くっ!仕方ない、取り敢えず依頼こなす間に口止めだけでもしよう。次こそは、失敗しないで平穏な冒険者ライフを取り戻すんだ!
そんな決意を胸に、私はギルドから出てエルメス王子を追いかけていくのだった。
「おい!遅いぞ早くしろ!」
いや、森で暗殺しようかな?
おっと、ダークサイドに堕ちそうだったよ…