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追放された元公爵令嬢は何故か、追放した王子と冒険者をする  作者: 蟹の身が綺麗に取れない
プロローグ
2/23

前日談2

お城の地下、薄暗い牢獄。

本来の牢獄とは違う、普通の部屋を模したものではあるが、暗闇に囲まれ、鬱々としたそこに男はいた。


「何故だ、何故俺がこんなところに入れられなければならないのだ」


エルメス・バートルイス、この国の第一王子だ

無実の罪で公爵令嬢との婚約を破棄し、王都から追放した罪で投獄されている


コツコツと暗闇に階段を降りる音が響く


「父上…」


「エルメス…少しは頭が冷えたか?」


国王、アンデス・バートルイスが騒ぎを聞き駆け付けた頃にはもう公爵令嬢は居なかった。

それでも、周りの者や本人達から話を聞き事態の収拾を図ったのだ。

騒ぎを起こした王子は処分が決まるまで収監され、王子と共にいた少女は、公爵令嬢を陥れた罪で修道院行きとなった。


「父上!何故あの女の肩を持つのですか!?」


国王はため息をつき、理由を話し始めた


「エルメス、彼女付きの者達は全て王家が用意した者達だと前も説明したではないか…」


「どういう事です?」


不思議そうな顔をする王子に、国王は苦虫を噛み潰したような顔をしながら説明する


「アイリーン嬢は王家に嫁ぐ者であるから、監視も兼ねた王家のものが世話をするとお前とアイリーン嬢には言ったはずだ」


「…しかし!隠れて行った可能性もあります!」


「はぁ…本当にお前は…そもそもの話、動機は何だ」


「王太子妃を脅かす、マリアが邪魔になったのでしょう!」


自信満々に答える王子に、国王はついに頭を抱えだした。


「この婚約は、王家からの打診だ。アイリーン嬢は、いやいや受けてくれたのだぞ?どう勘違いすればそうなるのだ…馬鹿者が」


「もうよろしいですか?陛下」


その声と共に暗闇からアイリーンと同じ淡い金髪の男が出てくる


「アルフレッド、構わん好きにしてくれ」


アルフレッド・アストガード、アイリーンの実の父親であり、この国の魔術師団長でもある男は、能面の様な顔で王子の前に出る。


「こんにちは、王子」


「アルフレッド…」


鉄格子を挟みながらも、溢れ出る魔力がアルフレッドの怒りを体現していた


「実はですね、私はあなたの処分を一任されているのですよ。」


「何?」


普通、貴族などの罪は、王が裁くものであるだけに、驚きを隠せない王子にアルフレッドは続ける


「娘に冤罪を被せられ、その上娘は行方不明。まあ幼い頃から私が鍛えたので、死んでは居ないと思いますが。それでも親としてはやるせないだろうと、陛下のご慈悲を承りましてね」


「どういう事ですか!?父上!?」


「どうもこうもない、聞いたままだ」


自分の処分がアルフレッドに決められるという事に動揺する王子にアルフレッドは話し始める


「まずは己の罪を自覚してもらいましょうか」


そう言ってアルフレッドが取り出したのは、クリスタル型の魔道具


「これには、マリア嬢の誘拐が自演であったという自白が入っています」


投げ入れられた魔道具を王子は起動し食い入る様に見つめていた


『別にいいでしょ!!あんな女!!居なくなったって困りはしないんだから!!あの女が悪いのよゲームと違って私に嫌がらせもしないし、だから自分でやったんじゃない!』


意味不明な言葉とその後に続く聞くに耐えない罵倒に、王子は意気消沈してしまう


「これでわかりましたか?貴方が間違えていた事に」


「…ああ」


潔く非を認める王子に構わずアルフレッドは続ける


「貴方の正直に非を認められる所は、素晴らしいと思いますが。許されるものは限度がある。貴族令嬢にとって身分の剥奪は、死刑も同然だ」


その事すら理解していなかったのだろう。王子は眼を点にしてアルフレッドを見つめていた


「陛下からは、王太子を第二王子のハロルド様にするので、貴方を死刑にする事も構わないと」


「なっ!」


「当然だろう、お前は何の理由もなく罪のない者を一人殺したも同然なのだから。そんな者に王位など渡せんし、お前のような奴よりも、公爵家に対する誠意の方が大切だ」


膝と両手を地面につき頭を落とす王子にアルフレッドは、王子に対する処置を告げる


「貴方がアイリーンに下したのと同じ刑を、私は陛下にお願いする事にしました」


「アイリーンと同じ?」


「はい、貴方には庶民として暮らしてもらおうかと」


無慈悲に告げられるそれは、王子には余りにも酷な罰で、死刑よりも重い罰に思えた


「何を言っている!私が庶民として暮らせるわけがないだろう!!」


暗闇に怒号が響くが、それでも流石は、魔術師団長。一切の怯えはない


「ええ、わかっていますよ。普通には無理です。だが、貴方には王族として培ったものがあるでしょう?」


「なんだ?何処かの商人の下で働けというのか?」


「そんなの商人もお断りでしょう」


「ならなんだというのだ!」


馬鹿にしたような態度に苛立つ王子にアルフレッドは続ける


「簡単ですよ、冒険者になればいい。使う場面こそなかったが貴方は、剣術と魔術が使えるでしょう?ならそれを生かして冒険者として生きていく。これが私の考えた貴方の罰ですよ」


「何を言っている!死ぬかもしれないじゃないか!!」


「でも生きられるかもしれない。死刑よりはマシではないですか?」


そう続けられるとぐうの音も出ない王子は、従うしかなかった。


「私が父親として出来る最後の事だ。庶民として一週間分暮らせるくらいのお金はやろう」


アルフレッドも、国王に続く


「王都周辺は治安が良く、冒険者の仕事がほとんどないのですよ。ですから魔物の森に近い街、別名冒険者の街と呼ばれる、グレンタスまで送って差し上げますよ。そこからは、貴方一人で生きて行ってください元王太子殿下」


こうしてエルメス元王子は、庶民として生きていく事になった

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