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23 匂いフェチは隠れて機会をうかがうのです

 放課後


 俺、ヒカリ、ドク男の3人でドク男の家へ向かう。


 ドク男の家は駅前のマンションとの事で時間はそこまでかからないが駅に向かう生徒たちで通学路は溢れかえっている。


 そんな中俺、ヒカリの学園一の美男美女カップルが歩いているのは問答無用で目立つし、周りにいる生徒達の会話の種には十分すぎる種だった。


 ヒソヒソと周りから聞こえてくる


 「実際に一緒にいるところ初めてみた〜マジで絵になるんですけど〜」 

 「マジヤバい。超ヤバい。…ヤバい!」

 「あーしたちと駅に向かうって事はこれからどこか行く系?」

 「マジ王子と姫様がお出かけする所目撃しちゃうあーしたちヤバ美ちゃん」

 「ヤバいヤバいヤバい!!!うっ!…ふぅ。これこれ声が大きいですわよ?邪魔してはイケませんわ」


 なんて声がちらほら聞こえてくるそれに…


 「なにあの眼鏡男」

 「えー二人の後ろ歩いてるけどストーカー?超キモいんですけど」

 「いけませんわ。事情も知らずに憶測でそんな事をおっしゃってはイケません」


 そんな気まずい雰囲気の中


 「ドク男すまんな…急にヒカリも一緒になっちゃって」

 「良いでござる!!福眼福眼!!アキラ殿と友達でなかったらたぶん一生一緒に帰れなかったでござるよ!」

 「も〜ドク男君たら何言ってるの?そんなわけないじゃない」


 まんざらでもないヒカリ…


 当たり障りのない会話をしながらドク男の家へと向かう…そしてドク男から急に確信に迫る質問をされた


 「ヒカリ殿も一緒に…って事はミウ殿との件はヒカリ殿も絡んでるという事でござるよね?」

 

 いきなりの質問に俺は焦って何も言えなくなってしまう。だがヒカリは違った

 

 「そうなの…まずはじめに謝っておくねドク男君」


 はて?なぜヒカリが謝るのか皆目検討もつかない俺


 「ごめんなさい。アキラ君がミウちゃんに距離を置いてたのには理由があるの…」

 「そうなのでござるか?理由をお聞かせ願いたいでござるよ」

 「えぇ…」


 それからミウに起こった事を丁寧に、オブラートに包んでヒカリは話した…


 「そ、そうだったでござるか…」

 「そうなの…それでアキラ君は兄弟だけど異性でしょ?それでアキラ君なりに違った気の使い方をしちゃってミウちゃんに誤解させちゃったみたいなの…」

 「なるほど…辻褄が合うでござる!ミウ殿を避けてたアキラ殿…全てはミウ殿を想思っての事…」

 「そういうこと…そうした方が良いって私からも少し言ったの。いつミウちゃんのトラウマが蘇るかわからなかったし心配で…」

 「いやいやヒカリ殿は悪くないでござるよ!悪いと言うのであればそこまでミウ殿が思いつめていたのに気づかなかったアキラ殿の責任でござる…でも」

 「そうなの…アキラ君もわざと避けてたわけじゃないの…だからこれはミウちゃんを想うアキラ君、そしてアキラ君を思うミウちゃんの思い違いなの」

 「そうでござったか…」

 「…………」


 この高度な会話についていけないのは俺だけであろうか。


 なんなんだこのヒカリの事実と嘘を絶妙なラインで混じり合わせ会話する高度な技術。すっかりドク男の誤解も溶けてなんだか昼間俺を見る目と今俺を見る目を比べると鬼と仏の差がある。


 「アキラ殿…なんか拙者誤解してたでござる…拙者アキラ殿がなにか裏で恨めしい事をしてミウ殿事を避けていたと思っていたでござる。アキラ殿はそんな事をする人じゃなかったでござるね。拙者…反省するでござる…」


 うぉおおおおおおおおおおい!!!あたってるあたってる!!!ごめんドク男!!!!全て当たってるしオレが全部悪いんだけどなんかごめん!!!


 「い、いやいいんだよ。俺もドク男に言ってなかったのが悪かったんだし…」

 「そう言ってもらえると助かるでござる。昼間に行った数々の無礼…拙者もう嫌われたのかと…」

 「そんなわけないじゃないか!俺とドク男の仲だろ?」

 「そうよ!アキラ君はそんな事で友達を嫌いにならないわよ!」


 ヒカリの擁護もあってかドク男は少し明るい顔をした。


 「ありがとうでござる・・・」

 「それにこれから例の奥義を教わる仲じゃないか!嫌いになるなんて事はこの先なにがあってもないさ!」

 「ア、アキラ殿〜」

 うぅ・・・と泣き真似するドク男。

 素でこうして俺達に接してくれているドク男を嫌いになるはずないじゃないか。

 出会った時だってそうだった…あれは…


 そうしてドク男と出会ったときの事を思い出そうとしたらヒカリが


 「ん?例の奥義って何?そういえばだけど、これからドク男の家に行って何するの?」



 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!??????


 「あーーーえっとそれは…」

 「あれ?ヒカリ殿聞いてなかったでござるか?これから拙者の家でアキラ殿に気配を完全に消して背後に回って意表をつける技を伝授するでござるよ!」

「へぇ〜…聞いてなかったわ」


 ギロリとこちらを睨むヒカリ。ヒカリには全てお見通しであった。


 「あはは〜俺も一つや二つ手に職つけたいなぁーなんて…」


 じぃ〜〜〜と俺をにらみ続けるヒカリ


(まさか気配を消して家でミウちゃんの後ろを付け回すなんて事考えてないわよね!?)

(ソンナコトカンガエテマセン)

(ふーん)

(本当です。ヒカリサマ)

(とりあえず今日は最後まで見守らせてもらうね?)

(ハイ)


 ドク男の誤解も解けて、周りの生徒達の注目を浴びながら俺たちはドク男の住むマンションへとたどり着いた。







ドク男家マンション入口前


「まさかとは思ったけどこのマンションだったとは!」


 そこは最大階数20階の駅前屈指のタワーマンションであった。

この街で一番大きいビルであり地下2階〜5階まで商業施設で栄えており、その先5〜10階まではテナントビルで10階〜20階までは賃貸として貸し出されている。賃貸と言っても部屋の広さは子供がいる親子で住むには十分に広くとても一人暮らしで暮らす部屋とは思えなかった。


 「マンションというより…高層ビルね」

 「一番上でござるので結構静かでござるよ?」

 「最上階に住んでるのか!?」

 

 ますますドク男という男の正体がわからなくなってきた。


 俺も店を経営するにあたって立地やテナント募集してる建物を調べた。そこでこのビルは最有力候補の一つであったが毎月バカにならないほどのテナント料を払うし他にも飲食店が多くあるので見送った中の一つである。なのでビルの上は家族が住むマンションとなっていることは知っていた。


 「ドク男…ここの最上階に住むなんてすごいな…」

 「部屋はいっぱいあって困らないでござるよ!全部フィギュア保管のスペースに使ってるでござるけど…」

 「そ、そうなんだ」


 こいつのアニメとフィギュアにかける情熱はなんなんだ…てかフィギュアどんだけあんだよ。フィギュアの保管スペースが部屋に何個もあるなんて聞いたことないぞ…


 「じゃこっちでござるよ!」


 ドク男の後に続いてドでかいエレベーター乗り場へ行き、専用のカードキーでエレベーターに備え付けられてあるカードリーダーにかざすと勝手にエレベーターが降りてきた。


 「ささ!どうぞ乗ってくださいでござる」


 「ははっ…」


 そのままエレベーターは上へ行き20階で止まった。




 扉が開くとそこはもう玄関でありドク男専用階として使用されていた。


 「えっ!?もう玄関なの!?防犯とか大丈夫なの?」

 「あぁ問題ないでござる!このカードキーがなければこの階層のボタン押せないでござるから」

 「そうなんだぁ〜」

 さすがのヒカリも引いている。かくいう俺も引いている。


 「「おじゃましまーす」」

 そのままエレベーターを降りて玄関で靴を脱いで部屋に上がる。


 お察しの通りオタク部屋…というかアニメのポスターやらフィギュアが通路・壁に積まれていて圧巻であった。

 「人を家にあげるのははじめてでござる///恥ずかしいでござるがどうぞ!」

 「あ、あぁ・・・」


 そこらかしこにフィギュア・アニメグッズが置いてある。だが散乱しているというよりはキレイに並べて積み立ててあり不快感はない。


 「さて…」


 ドク男がおもむろに学生服の上着を脱ぎ、Yシャツ姿となった。


 リビングと思われる所は広々としていて物がなにもない。フィギュアすら一つない。あるのは5m×5m程のフィギュアに囲まれた広間。そこへドク男がたつ


「アキラ殿さっそくはじめるでござるよ?」


 メガネ越しに伝わる圧。今までフランクに話していたのが嘘のようにその場の空気が変わる。

 

 だが、俺も生半可な覚悟で来たわけじゃない。全てはミウ…嘘です俺のため!!!いや!俺とミウのため!!!!

 覚悟でなら誰にも負けない自信があるぜ!


 ファサァ・・・


 俺も上着を脱ぎヒカリに手渡し、ドク男に向き合い握り拳を身体の前でぶつけ、お辞儀する。


 「師匠…よろしくお願いします」



 周りはフィギュアとアニメグッズで溢れかえっているのにその場に漂う空気は道場で師範代クラスの達人が殺気を飛ばしビリビリとぶつかり合い間合いを読み合っている刹那を彷彿させる。 


 息を吸うのも躊躇われる空気。


 一人何も知らずその光景を見ながら佇むヒカリもその空気感に圧巻されて…






 いなかった・・・



 (ア、ア、アキラ君の制服の上着!!!!!!!)


 今までアキラ君に近づいた時でしか嗅げなくて常時アキラ匂い不足に陥っていたヒカリだが、今やこの場にあるフィギュア全て踏み潰してでも手に入れたいアキラ君の制服(いい匂い)が腕の中にある…


 (き、きゃぁあああああ!!!!やったわぁあああ!!!!)


 この乙女、周りの目など気にせず渡された制服を顔に押し付ける。


 (すぅ〜はぁぁあ〜ぁ)


 足が小刻みに動き、だんだん足に力が入らなくなり内股になってしまう…顔が少し熱を持ち、赤くなっていくのが自分でもわかる・・・


 (んっ…足がビクビクしちゃう……それになんだか頭がぼぉーっとしちゃう・・・アキラ君の匂いたまらない…///)


 今まで少ししか嗅げなかったアキラ君の匂い、否!!脱ぎたての制服の匂い!!!!!死ぬ気で今のうちに堪能してやるわ!!


 (す〜〜はぁ〜〜す〜〜はぁ〜〜〜)



 そんなヒカリの様子に気づいたドク男とアキラ


 (ヒカリ殿の呼吸が荒くなってきたでござるな・・・耐えられず口を抑えてしまったでござるか…)


 (ヒカリがこの場の空気に耐えられず足が震えている…ごめんなヒカリ、だけど俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ…ミウのために…死ぬ覚悟で…だからもう少し我慢してくれ!ヒカリ!)



 互いに向き合うドク男とアキラその眼にはもはやお互いしか映っていない



(ふふふ・・・たえられるでござるか?アキラ殿)

(ドク男の実力お手並み拝見といきますか!)




 こうしてアキラの奥義習得への道へ一歩踏み進んだのであった!!!




(はぁぁあ〜〜〜幸せ)












 一方その頃


 「兄さん今日帰り遅いんだ…」


 ギューっと兄のまくらを抱きしめほのかに顔を赤らめトロンとした眼をするミウ



 「さみし…」


 そう一人嘆くミウであった。







次でアキラにヒカリ、ミウ共にアクションを起こします。


『匂いフェチ』


ってフレーズ自体がもはや良いよね


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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりでかかったw ヒカリがこんな性格だったとはw 類友かw [気になる点] 制服に顔うずめると枕に顔をうずめるとでこんなに印象が違うとはw [一言] ということはやっぱりパンツもクンカ…
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