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16 交代制ご褒美




 それから田舎村で田んぼが多く、山がとても綺麗に見える菊池家へ着いた。



 大黒柱である菊池ヒロシ、妻のマユミ、息子のミノルの3人。

 俺の最初の不安は嘘のように菊池家の皆は優しかった。


 優しいだけじゃなく、明るくてフレンドリーでもあった。

 

 ヒロシはダジャレが好きだが、面白い事が言えずに奥さんのマユミさんに呆れられ、そのやり取りに笑いあうミノルくん。最初は見ているだけだったが、3人共毎日毎日俺達にかまってくれて、だんだん俺達2人も話したり、笑ったり、ダジャレに文句を言ったりしているうちに、少しずつ心を開いていった。



 学校は徒歩1時間の所にあり、最初は本当にきつかった。起伏が激しい道で、ミウが途中で歩けなくなってしゃがみこんでしまうが、俺がなんとかおぶって歩くが途中でバテてしまう。

 そんな時、ミノルくんも手伝ってくれておんぶしてくれて、最初の頃は俺とミノルくんが順番におんぶして学校へ行っていた。




 だが、一週間位でミウの身体も激坂になれたらしく、おんぶはそこで終了となってしまった…

(これは余談だが、この時2人はミウをおんぶする事を、交代制ご褒美と呼んでいた)




 そして俺とミウが菊池家に慣れてきて、ようやく色々な話ができるようになった頃、ミノルは俺と2人っきりになった時はミウに関する話が多くなってきてた。



「ミウちゃんってかわいいよなぁ〜」


「そりゃ〜そうだろ〜俺の自慢の妹だぜ?」


「僕、ミウちゃんと出会えて…一緒に暮らせて幸せだよ!」


「お、おい、俺は?ミウのお兄ちゃんである俺とは!?」


「アキラは嫌〜い、だって女子にモテモテじゃん。僕の好きな子だって…アキラの話しばっかり…」


「そ、それはすまんかった…」


 俺とミウが転校してきてから、史上最大規模の台風が2つ同時に発生し、しかも合流して更に勢力を増したくらい学校中で噂になった。


 女子はアキラ。男子はミウの話ばかりになり、転校生という注目の枠を突き抜けていた。


 だが、俺達と一緒に住んでいるという事で、ミノルも女子や男子から色々話を聞かれて満更でもない様子だった。それも半年も経てば少しは沈下してしまったが、未だに注目され続けている。


「はぁ〜僕もイケメンに生まれたかったよ。女子からバレンタインデーにチョコいっぱいもらいたい」


「しょうもない理由でモテようとすんな。それに俺らの学年に女子3人しかいないじゃないか。人少なすぎだよこの学校…」


「それでもいいじゃん!僕はモテてみたいんだ!学校中の女子からチョコもらいたいんだ!」


 うちの学校は全校生徒、先生合わせて50人しかいない。どれだけ田舎かわかったであろう。

 

 そんな所でモテたってしょうがないんだが…まぁミノルには正直すまなんだ…


「わかったわかった」


(後でミノルに義理チョコでもいいからあげてねってミウに頼んであげるとするか…)


 そんなこんなでミノルと一緒に下校していると、ヒロシが畑にある野菜を収穫していた。

 汗水たらして必死に野菜を収穫している。



「お〜い!!とうさ〜ん!!」


 大声を出してミノルが手をふる。

 それに気付いたヒロシも


「おかえり〜!!2人共!!!少し手伝ってくれないか〜?」


 と手をまねく。


「「いいよー!!」」



 俺達2人はどっちが先にヒロシの元へ着くかダッシュで競争し、おやつ1つを賭けて勝負をした。




 結果はなんとか俺が一番に到着する。



「はぁ…はぁ…おやつ1個…俺にくれよな…」


「はぁ…はぁ…あぁ…僕のおやつが!!!カントリーマーマが…」


 肩を落とし次は負けないと意気込むミノル。


「がっはっはっは!おやつ賭けてたのか!?それじゃあもう一つとっておきの賭け事をしようか!」

「え?なになに?」


 俺は興味を持って聞く。ミノルは未だうなだれている。


「どっちが多くの野菜を取れるか競争だ。多い方には今度の休み、好きなお菓子を5個買ってやろう。だが負けた方は1個… どうだやるか?」


 俺とミノルは互いの顔を見る。


 フッと笑い合いそして


「「やる!!!」」


 


 この野菜早収穫競争は5個差で俺が負けてしまった。やはり昔から手伝っていたミノルに歩があったらしく。さっきまでの落ち込み具合はなくなり、おおはしゃぎでジャンプしている。


「やったやった!!!アキラ!この僕に勝とうなんて10年早いわ!」


「ぐぬぬぬぬ!何も言い返せねぇ…ミノル!次は負けねえ!!!」


「男同士勝負して競い合わないとな!がっはっは!どうだ?競う相手がいるってのはおもしろいもんだろ?」


「うん!けどアキラじゃ物足りないけどね〜」


 ニシシと笑うミノル


「言ったな…ミノルのためにミウにチョコ作ってあげてって頼もうとしたけど、もう二度と頼まない」


「えっ!?ちょっと!それとこれとは違うんじゃない?アキラ!アキラ様!?それだけは何卒!なにとぞぉ〜」



 そんなやり取りをしている俺達をヒロシは優しい目をして眺めていた。




。。。。。


。。。。


。。。


。。










 こうしてたまに下校途中、ヒロシの畑に遊びに行って色々な勝負をしたり、家に帰ってお菓子の取り合いをしたり、それをミウや奥さんが気付いて、ミウはミノル・奥さんは俺の頭をパンッと叩いて「「やめなさい!」」と注意をして、それを見たヒロシが笑うが、奥さんに「あなたも勝負をさせない!」って怒鳴られてシュンとしている姿を見て、俺ら3人が腹を抱えて笑い、自分たちで採った野菜料理をお腹いっぱい食べて、3人で布団に入って色々な事を話しながら、いつの間にか3人共寝ている……



 

 


 そんな楽しい毎日で気付いたら俺は10才、ミウは9才になっていた。

 両親が死んでから、これほど心から笑える日々が来るなんて想像もしてなかった。



 それはミウも同じだった。俺とミウは2人共…




『この家族に出会えて、本当に良かった』




 …と、そう想っていた


 













 あの日が来るまでは…


 











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