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10 『ジュテーム』



 俺は白金アキラの後をついて行った。


 なぜそんな行動をしたのかわからない。

 だけどあの先輩が普段どんな行動をしているのか知りたくなったから。というのが一番しっくりくる回答だろう。


 しばらくアキラ先輩の後をついていくと一つの店の前へとたどり着いた。


『ジュテーム』というフランス店だ。


 商店街の裏路地にひっそりとある店だが、外装はオシャレで、リーズナブルな値段で本格的なフランス料理が楽しめる。と結構雑誌でも取り上げられる程、有名なお店だ。

 


(なんでアキラ先輩がこの店の前で止まるんだ?)


 すると何かをチェックするように店の外を見て、裏口の方へと進んでいった。


(どこ行くんだ…?)


 ポッケから鍵を出して『従業員専用』と書かれているドアを開けて入っていった。


(入っていった!!!!!)


 その時、悪意ある考えが俺の全身に雷を打たれた如くよぎった。


(うちの学校はたしかバイト禁止だったはずだ。あの様子から察するにアキラ先輩はここでバイトをしている)


 クックック…笑い声を押し殺し、スマホを取り出す。


(これでウェイトレスとして働いてる姿を撮れば、言い逃れはできまい)


 しばらく物陰に隠れてスマホを構えていたが、ガラス越しに見える店内にアキラ先輩の姿は一向に見えない。


(結構時間たってんな…何をしているんだ…)


 そんな事を思っているとまた『従業員専用』のドアが開き、アキラ先輩が出てきた。


(きた!)


 スマホを取り出し連写で写真を撮る。


 するとドアからもう一人スーツ姿の人がアキラ先輩にペコペコお辞儀をしている。

 

 動じることなくそれに対応するアキラ先輩。


(なんだ?なんでバイトに頭下げてんだ?シフトでも間違えたのか…まぁそんな事はどうでもいい…)


 スマホのデータを確認して笑みを浮かべる。


 

 こいつさえあれば、クックック…




_____________________________________________




 その数日後また白金ミウを体育館裏に呼び出した。



「ごめんね、時間を取らせて。実は見てもらいたい物があるんだ」


 そう言って俺はスマホを取り出す。


「一体なんですか?私は別に見たいものなどありませんけど」


「いやいや、実はミウさんのお兄さんに関することなんだ…これを見てほしいんだ」


 お兄さんという言葉が出てきた瞬間、白金ミウは少し目を見開き若干の動揺を見せた。


 そしてスマホの画面を彼女に見せる



「こ、これは…?」


「実はミウさんのお兄さんここでバイトしているみたいでね。ほら?うちの学校はバイト禁止だろ?校則にも禁止事項を破った者は最悪退学処分もありえる。と書いてある。」


「…」


 黙る白金ミウ。


(よし。この事をやっぱり知らなかったみたいだな)


 畳み掛けるように俺は言った。


「たぶんだけど、お兄さんはミウさんのためにバイトしてるんじゃないかな?ミウさんに不自由な生活を送らせないために。聞いたよ…幼い頃、両親が死んでから2人で暮らしてきたって…。俺からしたら想像できない程苦難があったんだと思う。それを兄妹2人で乗り切った事はすごい事だよ」


 クククこの時のために2人の情報をかき集めて良かった。


「だけど、うちの学校は知っての通り、世間体に厳しい。有名進学校って言うこともあって、優等生ばかりを集めてる。そんな優等生から校則違反が出たら、この学校はどう対処するだろう?すぐに噂が広まるよね?校則すら守れないバカがいた。って学校の評価が下がっちゃうよね?」


「何が言いたいの…」


 キッと睨んで俺を見る白金ミウ。


「結論から言うよ」


 そんな睨む彼女に笑みを浮かべながら


「この写真をバラまかれたくなかったら俺と、この一条ハジメと付き合って欲しいんだ。断ったら学校にも、バイト先にもこの写真をバラまく。別に断ってくれても構わない。ただその時どうなるかくらいはミウさんも想像つくよね?」



「汚い人…私が先生に助けを求める。って言ったら?」


「別に構わないさ。俺がこの写真をばらまいた証拠なんてないし、それにミウさんは知らないと思うけど、俺は先生達に良い生徒として評判が高いんだ。」


 そう。世界は俺を中心に回っているんだ。

 

 たとえ白金ミウが、俺が写真をバラまいたと言いふらした所で先生たちは俺の味方をするだろう。


「クックック…どうする?考える余地なんてないと思うんだけど?」


 声を押し殺しても笑い声が漏れる。


「最後にもう一度聞くよ。白金ミウさん。俺と付き合ってほしい」


 下を向いて黙るミウ。プルプルと少しだが震えているのがわかる。


 そうだ。悔しいだろ?俺もお前と同じ思いをしたんだ。


 しばらく黙っていたミウが口を開く。


「…わかった」


 ククク!はっはっはっは!!!やった!付き合えた!!!俺の女になったんだ!!!こいつは!!!


 とてつもない高揚感と優越感!一人の女と付き合えてこれほど心が動いたことはない!


「じゃあ今日から俺の彼女として、よろしくな」


 手を出して握手を求める。


 それにミウが答えるはずもなくただ一言


「最低ねあなた」


「なんとだって言えばいいさ。あ、そうそう一つ忠告しておく」


 下を向き、うつむいている彼女を覗き込むようにして、目を合わせる。


「俺の言うことを破ったら、すぐにこの写真をバラまくからな。お前は俺の言うことだけ聞けばいい。わかったな?」


 覗き込む一条ハジメから顔をそらすミウ


「まぁいいさ。告白してOKを貰えた。その事実だけあれば、今はそれでいい」


 白金ミウと付き合った。この事実だけでこれほど幸福感に浸れるとは思ってもいなかった。


「あ、そうそう、明日の朝家に迎え行くから。家の場所を教えろ」


 家の場所を教えてもらい


「それじゃ明日から俺の彼女として…よろしく頼むよ。ミウさん」


 そうして俺は去っていった。ずっとミウはうつ向いたまま動けないでいた。



ー_____________________________________________



 翌日教えてもらった家へ行く



 大豪邸がそこにはあった。



(すんげぇ家に住んでんな…親の遺産全てつぎ込んだのか?それでバイトしなきゃ生活していけないってわけか…まぁ何にせよそのおかげで白金ミウと付き合えたんだ。感謝しなきゃな…クックック)









 そして俺は白金家のインターホンを押した。









ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます。

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