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十の氏族  作者: モンゴメリ伊藤
1章 金の乙女
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07 男の裏切り

前回までのあらすじ:ゲス野郎の荷物持ちを条件に密入国することになったが…

 君は荷物を前後左右に担いだことはあるだろうか?しかもパンパンに膨らんだリュックを。バランスをとろうにも子どもが四方から引っ張るようで足元がおぼつかない。ついさっきまで船に揺られていたせいか、硬い地面がうねる感触がある。大粒の汗が目に入る。汗を拭うこともできない。気温は高くないが内からの熱気でのぼせてしまいそうだ。


「もうヘタってんじゃねぇよ!」


 背後からロジャーが蹴り上げる。ついに前に倒れこんだ。


「ハンター様ならよぉ、あのくっせぇシカとかイノシシを担いで山を登るんだろ?これくらいワケねぇよなぁ?オイ!」


 前に回り込んでせせら笑う。言い返すだけ無駄だ。とにかく王国を目指さないと。下腹に力を入れて踏ん張る。そこを


「やればできんじゃねぇか!サボんな!」


 膝に蹴りを入れられまた倒れた。船の上で樽に括りつけたことを根に持ってんだな。ここぞとばかり執拗な嫌がらせをしてくる。


「お前だけ遅れてんだよ!とっとと歩け、このウスノロ!」


 身軽なロジャーはさっさと前を行った。先頭にはお調子もので自分から荷物持ちを希望したダガーがいる。その後ろにピークス、さらに後ろにアリシア、そして俺と列になっている。ロジャーにいたぶられている俺を道行く人が不憫な目で見るが声はかけず足早に去っていく。アリシアも時折振り向くが何も言わない。当然だ、誰だってこんな男に関わりたくない。


「おい、お嬢さん。エルフの涙は蜜のように甘いって言うが本当か?」


 下品な顔でアリシアに問いかける。アリシアは何も言わない。恐怖のあまり声が出ないんだろう。


「そんな怯えんなよ、キレイなお顔が台無しだぜ?そういえば船の騒動の最中目が合ったよな?運命を感じだぜ」


 今すぐロジャーの顔をぶん殴ってやりたいが、距離が縮まらない。こいつ俺に見せつけてんのか?


「そういえばオマエさんあの男と一緒にいたよな?ひょっとしてお前の男か?」


 更にアリシアに顔を近づける。別にアリシアと俺は他人だ。ただ同じ船に乗り合わせただけだ。なのに、なぜだろう、無性に腹が立つ!


「涙は出てないが汗はどうかな?」


 突然首にむしゃぶりつく。下品な音があたりに響く。恐怖と不快感でたまらずアシリアが泣いた。ロジャーはねっとりとした笑みを浮かべると、頬を伝う涙を舌で受け止め


「しょっぺぇ」


 俺に向かって笑いかけると再び前を歩いた。


 ふらつきながらも丘を越えると、白い門が遠くに見えた。ゴールは近い。


「あそこからが本番だ。オマエらは黙ってオレ様の言うことだけを聞け。誰に何を言われても絶対に口を開けるな。あのデカいだけの大馬鹿者みたいになりたくなけりゃな」


 バンドのことを言っているのだろう。彼はどうしたのかな?別れてから結構経つが、まだ拘束されてるのかな。

 

 難民たちが入国待ちをしているのだろう、その長蛇の列を横目に前へ前へと進んでゆく。


「割り込むな!順番を待て!」


 兵士が当然の反応をする。


「いつもお勤めご苦労様でございます。わ た く しエドヴァルド三世と申します。先に使いを寄こしたと存じますが……」


 聞こえよがしに大声で自己紹介をする。奥から別の兵士が顔をのぞかせる。


「貿易商の者か?」

「さようで」

「マーマンから話は聞いている。中に入れ」


 揉めることなくすんなりと、兵士の控室に入れてもらえた。





「手帳は?」

「はい、こちらに」


 ロジャーが懐から手帳を出す。バンドの手紙にあった手帳とはこれか。


「よし確認した。馬車を手配する。少し待て。それと残りの四名はもう帰っていいぞ」


 なんだと?おい待ってくれ!


「あー兵士長さま、少しお待ちを」


 ロジャーは袖を引っ張り、俺たちに聞こえないように兵士長と相談をする。時折こっちを見て。いやアリシアか。


「まずいですね」


 ピークスがぽつりとつぶやく。こういうときの嫌な予感ってどうして当たるのだろう。


「よし!そこのエルフこっちに来い!馬車に乗れ。他の者は帰ってよし!」

「どういうことだ!約束が違うぞ!」


 怒りに任せ前に出る。俺たちを騙したのか?


「俺の許可なく喋んな!」


 思い切り殴られる。今までの荷物運びのせいか、足腰の踏ん張りがきかず勢いよく後ろに吹っ飛んだ。


「おい!旦那の荷物を運んだら入国させてくれるって約束だろ!」


 つられてダガーも前に出てロジャーにつかみかかる。


「汚ねぇ手でオレに触んな!」

「騙したんですか?アリシアさんはなぜ馬車に乗れるんです?彼女をどうするつもりですか?」

「おい貴様ら!ここで暴れるな!全員牢にぶち込むぞ!」


 兵士長の一喝で場がおさまる。


「このメスエルフはオレ様の奴隷だ!何をしようがオマエらには関係ねぇ!テメェらでは!買えねぇくらい!立派な娼婦(ビッチ)に仕立ててやるよ!」


 アリシアを抱き寄せる。


「これで最後だ。出ていけ」


 険しい表情で兵士長は忠告した。


「……出ましょう」


 ピークスはうなだれるように俺の服を引っ張った。こんな別れってあるか?アリシアは泣きそうなのをこらえ俺を見ている。ダガーが無言で肩を叩き催促する。二人に連れられながら目でしがみつくようにアリシアを追う。もう会えないのかな。出会ってわずかだったけど、今はアリシアのことで胸がいっぱいだ。



 かならず



 どちらともなく声が漏れた。


 また会いに行くから。

ホントどうでもいいことですが、テンプレなゲス野郎は書いてて捗ります。

追伸:今後の話の繋がりから最後の部分をかえましたm(_ _)m

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