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EP3 錯交する謎

訓練であるはずの本物の火事、翠栄国の黙秘…突如現れた謎の兵器…。

ここ数日で、様々な異変が起きた。

それに巻き込まれ続けている鏡弥はこの事態に興味を持ち、密かに情報を集め始めた。

「あの兵器はなんだったんだろうか…」

「まーた調べ物かよ。そんなことしたら上の人が何するかわからんって言ったろ?」

相変わらず調べごとに釘を刺す澪。なんだかんだ彼も鏡弥のことを心配しているのだ。

「とはいえ、何もしないままっていうのも嫌なんだ。悪いが止めようとしてもやめないぞ」

「……あっそ。だがま、お前最近全然食ってねぇだろ」

澪の一言に鏡弥は目を見開く。

思い返せばろくなものを食べてない。

せいぜい今日の朝にパンを食べたくらいだ。

「調べごとには頭も使うだろ。ならちゃんとメシくらい食っとけよ、俺が特別におごってやるから、購買行くぞー」

澪の気遣いからの言葉に乗る形で鏡弥は購買店へと向かった。

「……ちゃんと行ったぞ、これで良かったのか、緋星?」

「うん、ありがとね。私こう言うの上手く言えないから……。それに私の前だと鏡弥君はなんか無理してるような感じがして…」

時歌の発言から澪は鏡弥が抱く時歌への感情になんとなく察しがついた。

(そー言うことか、だけどあいつがあそこまでここ最近の出来事に執着するのはそれだけじゃねぇと思うんだよな…)


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澪から受け取った金を持って購買店まで向かった鏡弥。

しかし、そのまま使うのも悪いなと思った鏡弥は自らのお金で幾つか食べ物を購入した。

「まぁ、あながち時歌が説得してくれって言ったんだろうな。

……心配かけさせたな」

心の中で反省をしながら、食事をするために席に座る。

「あら、鏡弥。今から食事なの?」

声をかけてきたのは女性。

先日鏡弥に連絡をかけてきた、瑞樹 胡桃であった。

「はい。瑞樹さんも今から?」

「ええ、それにしても若いいまどきの男の子がこんな時間に食事なんて本当は駄目よ?」

そう言えばずっと時計を見ていなかった。

今は…午後の10時。人によってはとっくに就寝している時間だった。

「…ここ最近いろんなことがあったから調べ物をしていたんです。

気になってしまって」

その瞬間、一瞬だが瑞樹が表情を変えた。

すぐさまいつもの表情に戻り、喋り始める。

「そうね。でも、あなた達は能力の制御を完璧にして、世界の役に立てるようにしないといけないの。こういうのは大人達に任せなさい」

その大人達が信用ならなくなってきている、とはとても言えなかった。

鏡弥たちは火事の件について国が何の回答も寄越さなかったことに少し疑問を覚えていたからだった。

「……ならせめて、あの兵器が何だったのか教えてくれないか?

交戦した俺たちにはその権利があると思う」

「どうして、そこまで知りたいの?」

瑞樹の疑問に鏡弥は語り始めた。

「俺は、時歌を巻き込みたくない。

あの時から一緒にいる彼女を危険にさらしたくない。

だから、もしこの異変が何かの予兆だったとしたら、俺は時歌を全力で守りたい」

鏡弥は強い調子で、瑞樹に言った。

その言葉に対して瑞樹は、明日会議室に来なさいと一言添えて帰っていくのだった。


---------------------


そして次の日。

会議室に鏡弥、時歌、未来、澪の四人が揃った。

「あなたたちが先日倒した兵器…。

あれについての説明をするわ」

瑞樹は、会議室のモニターから兵器の映像を再生する。

「これは宇宙開拓チームから作られた月面基地の作業用ドールよ」

「月面基地…。あぁ、2035年に初めて観測された暁月について調べるため、地球が総力をかけて開発されたという…」

月面基地。2035年に初めて観測された暁月を調べるため、世界各国から資金と人材が集められて作られた宇宙開拓チームというチームが開発した基地。

暁月の急接近による避難勧告を出したりと、世界に大きな貢献を果たしている。

今ではあまり大きな動きは見られないものの、暁月がなぜ子供達の潜在能力を覚醒させたのかなどの謎について調べているらしい。

「瑞樹先生、質問があります!」

ビシッと手を挙げる未来。先生と呼ぶあたりなんだか子供らしい気がする。

「はい、未来さん」

…瑞樹までノリノリだった。未来はともかく瑞樹は既に立派な大人だろうに。

…と心の中でつぶやきながらも未来の質問について鏡弥も興味を持っていた。

「作業用ドールがなぜあそこまで大きな力を持っていたんですか?」

やはり、ここにいる誰もが疑問に思うだろう。

単純に作業用というのなら暁月の赤子でも苦戦するようなほどの力は持たせないだろう。

鏡弥としては、まずなぜそのような力を持つものを開発できたのか、という点が引っかかっているのだが。

そうして思考を巡らせているうちに、瑞樹が語り始めた。

「それについては先日、宇宙開発チームから応答が来ました。

月面基地を占領せんとするあるテロリストが襲撃してきたらしいの。

それに対抗するため、ですって」

テロリスト、それなら聞いたことがある。

名前は…。

「夜明けの空、だったかな。

んまぁ、ここ数年結構な力を手に入れたことだそうで。月で何かするぐらいできそうだな」

宇宙開発チームの作業用ドールが兵器として用いられていた。それも暁月の赤子と渡り合えるレベルにまで。

それはつまり…。

「夜明けの空は、俺たちと渡り合える実力を持ってるって可能性があるんじゃ…」

鏡弥がそう言った瞬間、この空間に戦慄が走った。

「と、とにかく。月面基地に送られるはずだった作業用ドールが何故ここにやってきたのかはまだ調査中ということだから、報告が来るまでは変に行動しないこと。

特に鏡弥は首を突っ込みすぎだから自重することよ」

瑞樹が半ば強引に話を終わらせて、この話は終了する。


---------------------


話が終わり、それぞれが自分の部屋に戻ろうとする最中。

どこからか「れぇぇぇいいい!!!」と言う、最早奇声に限りなく近いような声量で迫ってくる人影が見えた。

「うわー、めんどい奴来た…。

いい加減にしてくれよ」

澪は小声で悪態をついた。

「よ、澪!今度こそ勝負だぁ!」

誰だ、この暑苦しい奴。

外見は少し筋肉質な程度、身長はまぁ普通だ。

それ以上に声がやかましいと感じるほどうるさい。まぁあながちテンションが上がってるとかそういう類だろう。

「君、誰?」

首を傾げながら未来は暑苦しい奴に名前を聞く。

「あんたは確か、天才って呼ばれてる…才架未来か。まぁあんたほどの人間に知られてないのはちっと悲しいが」

暑苦しい奴は残念そうにため息をつきながら改まって。

「俺の名前は鋼河 星-こうが せい-だ。スキルコードは強化。よろしくな」

強化。身体能力を常人の限界から更に引き上げ、限界を超えた力を見せる能力。

鏡弥の風の力のように、遠距離戦で戦えるような相手には分が悪いものの、白兵戦においては部類の強さを発揮する。

「…けど、いくらお前が頑張ったって神速には反応できないことは知ってるだろ?

それにお前の能力の弱点ももう見きった。

緋星と同じく、時間制限があんだろ、お前は」

「その前にお前の弱点を引き出してやるさ」

「無理だな、30秒しかもたない奴がどうするって言うんだ。俺は無理すりゃ5分は持つぞ」

「ぐっ、確かに」

弱点に対して全く反論できていない星。

…見た目の割に理解は早いみたいだ。

「だが、いつかは絶対にお前を負かしてやるからな!!今に見てろよ!!」

暑苦しい奴だったな、と澪は言っていたものの、その表情にはどこか好敵手として認めているような、そんな表情になっていた。

しかしそのあと、煙が出るほどの猛ダッシュで再び星が迫ってきた。

「忘れてた!!3日後学園祭なことは知ってるだろ?先日のあの件で準備してたものがダメになったらしくてさ、お前らも手伝ってくれよ!」

そしてまた猛ダッシュで去っていった。

暑苦しい奴に慌ただしい奴を加えたほうがいいのかもしれない。

そしてその後、学園祭という言葉に思考を切り替えた。

学園祭。翠栄国が暁月の赤子もしっかりと人としての人生を歩んで欲しいという考えから作られたイベント。

よく聞く文化祭や学園祭とほとんど内容は同じだが、そこは暁月の赤子としての本領発揮で幾つか相違点がある。

まず1つは闘技大会、普段行われている訓練をトーナメント式にしたもので、毎年恒例の行事でもある。

その他にも様々な相違点があるのだが、先日の作業用ドールの侵入、撃退の際に準備していたものが幾つか破損してしまったらしい。

鏡弥達はその手伝いに、それぞれの能力が活かせる場所へと向かっていった。


---------------------


そこからはまさしく奔走と言える出来事だった。

特に便利な能力を持つ鏡弥、時歌、未来、星は便利屋のごとくコキを使われ続けた。


「あー、疲れた疲れたぁー!」

「星くん、お疲れ様!」

「おう!ありがとな、緋星」

学園祭の準備を終えた時歌は、星に差し入れを持ってきていた。

「くたくただねー」

「あぁ、俺たちの能力を完全に便利な物扱いだったからなぁ…

あー、もうちっと能力が長く続けばいいのによー」

だるそうな声で星は嘆いていた。

「能力…。ねぇ、星くん。

私たちのスキルコード…能力って、いつも制御のことばかり考えて、能力を伸ばすって考えはいつもないよね?」

「まぁ…だろうな。

伸ばしちまったら危険すぎるって言ってたろ?だから俺たちは制御を完璧にしなきゃいけない」

「でも、その制御って目的にも何か裏がある気がするの」

「どういうことだ?」

制御という目的に裏…その言葉に疑問を覚えた星は時歌に疑問を投げかける。

「わからない、でも最近本当にいろいろなことがあって、この世界にはまだ私たちが知らないようなことがあるんじゃないかなって。

本当の目的が、ある気がするの」

その言葉を静かに聞く星。

彼らしからぬ行動だが、だからこそ何か思うところがあったのかもしれない。


---------------------


時歌と星が話している裏で、人影がいた。

「勘付いてきたか、暁月の赤子…戦闘能力を持たない彼女にも、注意が必要みたいだな」

そう言って、人影は消えていった。

世界が動乱し始めている。

何かが、始まる。


続く…

だいぶなろうでの書き方も慣れてきましたが、まだまだ不慣れと言っていいレベルです。

これからも精進していこうと思うので、読んでくださった方々、今後ともよろしくお願いします。

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