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EP2 兵器の暴走

先日、翠栄国では暁月の赤子の育成を目的として火事の現場を舞台にした緊急救出訓練を実施した。

しかしそこには異変があった。

現場に乗り込んだ桐生 鏡弥は従来のCGで再現された擬似的な火事ではなく、本物の火事であることを確認する。

その事実に勘付いていた才架 未来もまた、この異変に違和感を抱く。

何かある、そう思っていた彼らの予想通り、世界では大きな波乱が生まれようとしていた。


---------------------


訓練を終えた鏡弥達はカフェで休息を取っていた。

「ねぇ、本物の火事だったって本当なの?」

事情を詳しく知らない時歌は疑問を覚える。

と言うか頭の上にはてながたくさんあるような、そんな感じだった。

「ああ、本当だったぞ。翠栄国軍の人に聞いたが、あまり情報は得られなかった」

翠栄国軍。独立した国であるこの翠栄国にも当然軍備施設が整っている。

暁月の赤子を保護するという目的では、全世界の軍が協力し合ってる点、翠栄国が狙われることはほとんど無いに等しいものの、どの状況にも対応できるようにとのことで設立された。

「とにかく、何かがおかしいのはまず間違いない。注意しておこう」

「変に動けば目を付けられるぞ」

どこからか鏡弥達に注意を喚起する声が聞こえる。

「…だが、おかしいのは明らかだ。探ることは別段おかしくないと思うが?…スキルコード『神速』の『隼水 澪-はやみ れい-』」

「お前は一々他人行儀だな。…まぁいい、権力の持った大人ほど厄介な奴はいない。それをわからないほどバカじゃないだろう?」

「あぁ、肝に銘じているからな。だが、こんなことは初めてだ、今までとは違うんだからな」

「隼水君は興味ないの?」

時歌は首を傾げながら言う。

「ゼロではないけど、それ以上に安全に暮らしたいのが本心だからなぁ。俺はいいや」

そうして思考を巡らせてる最中、翠栄国に警報が鳴り響く。

「何だ!?」

ー緊急警報、緊急警報。謎の兵器が高速機動で領海に浸入。

暁月の赤子達は避難を開始してください。

…異変はさらに大きくなって、彼らを襲ってきた。


---------------------


「鏡弥、どうするの?」

「才架と俺が戦えば対処できるかもしれないが…」

「俺は反対だな、国に任せよう」

未来の問いに対して、鏡弥は澪の気持ちを察する。

「…暫く様子を見よう、危なかったら国に連絡を取り次第、加勢するぞ」

『ガガッ……鏡弥!!聞こえる!?』

鏡弥のスマートフォンから、強制的に連絡を繋げ、応答を呼びかける声がする。

翠栄国軍のオペレーター『瑞樹 胡桃』の声だ。

「瑞樹さん、緊急連絡なんてどうしたんだ?」

『ごめんなさい、別方向から謎の兵器と同じものが急速接近で貴方達の方へ向かってる!

既に国の中に浸入されているわ!』

驚愕の出来事だったが、慌てず鏡弥は対処を試みる。

「瑞樹さん。幸い、ここには俺以外にも時歌や才架、澪がいる、とりあえず交戦を試みる」

『…でも危険すぎるわ!』

「だからって放置すれば、被害はさらに増える!今ここにいる俺たちがなんとかする!」

『…わかったわ。但し絶対に無理はしないこと、いいわね』

鏡弥の強い意志に、諦めたかのように瑞樹は答える。

「そんなわけで、国のお墨付きだ。

神速の力、ぜひ見せてくれ」

「安全に暮らすのが一番なんだけどな…まぁいいや。やるならやるさ」

この二人、あまり話すことはないけど仲はいいみたいと思った時歌と未来の女性組であった。


---------------------


「さて、来るぞ。敵は速い。全員まとまらずに散ったほうがいいかもな」

兵器が来る、実際間近でみると異常なほどまでの速さだ。

しかし…。

「その程度のスピードなら風の力の応用でどうとでもなるっ!!」

鏡弥は両手で風の力を一気に解放し、兵器まで急接近する。

これで二度使ってしまった、これで彼はその体質上、チャージが完了するまであと一度しか力を使えない。

「一度あれば十分だ!」

両手を挙げて風の力をさらに解放する。そしてその風は大きな風の球となり、兵器に叩きつけるように直撃する。

「どうやら、神速の力を使うまでもないスピードみたいだな」

澪はそう判断する、しかし…。

「澪、油断しないで。この兵器、全然本気出してないと思うよ」

「正確に言えば、戦闘モードに移行していない、まぁ移動モードみたいなものだったろうな」

未来と鏡弥は澪の判断を否定し、さらに警戒を強める。

『行動中ニ、予想シ得ナカッタ対処不可能ノ衝撃ヲ確認、コレヨリ戦闘態勢ニ入ル』

どうやら二人の予想通り、この兵器は戦闘モードではなかったようだ。

戦闘態勢に移行したその直後、兵器の姿が消えた。

「!!??

時歌、後ろだっ!!」

鏡弥はあまりの速さに、目視できなかったものの、風使いとしての力で、僅かな風の流れの変化から兵器が何処に行ったのかを推測する。

しかし時すでに遅く、兵器は時歌を攻撃しようとしていた。

間に合わない……。

そう思っていたその直後、一つの閃光が兵器を吹き飛ばす。

「こいつ…速すぎだな。危なかったわ」

やや冷や汗をかきながらも軽々しく対処してしまう神速の力…澪に鏡弥と未来は目を見開いていた。

「普段の性格からなかなかその力を目にできる機会はなかったが…」

「まさかこんな早いなんてね…体がついて行かなそうだよ…」

そんな話よりまずはこっちだろ、と言わんばかりに澪は兵器の吹っ飛んだ方角へと指をさす。

「さて、反撃開始だ。俺がちょっくら隙を作りに行くんで、その間に天才ちゃんと風使い君はでかいの準備しておいてくれ」

天才ちゃんと風使い君という言葉に、未来と鏡弥は少しピクッと反応するが、すぐに頭を切り替え目の前の敵に集中する。

「こっちに来な!」

澪は力を解放し、目にも留まらぬスピードで攻撃する。

兵器は澪の執拗までの攻撃に、行動に支障が出ると判断してか、澪に向けて攻撃を仕掛けようとし始める。

「あれ…だけど隼水くんにはないのかな…」

時歌はあることに気づいてしまう。

「あぁ…弱点、か」

暁月の赤子は、常に能力の制御を目的として暮らしている。

故に成長で言えばあまり成長していると言いづらく、どの者にも弱点というのが存在する。

鏡弥は風の力を三度までしか同時に使えない。次に使うときは15秒ほどのチャージ時間を要する。

時歌は5分までしか飛行できないというタイムリミットが課せられている。

未来は強力な能力を持つものの、体力を異常なまでに消費する。

そう、どの人物にも弱点がある。故に間違いなく、澪にも弱点があるはず…。

「ちっ、もう来ちまったかよ…」

「どうしたんだ!」

澪の舌打ちに気づき、鏡弥は声をかける。

「悪い、俺の弱点だ…能力を使い続けるとそのスピードから筋肉の疲労度が限界を迎えて、しばらく動けなくなる…」

そしてその疲労度がついに限界を迎えて、スピードが落ちる。

「大丈夫だ、澪。あとは休んでいてくれ」

「私たちの準備は完了だよ!」

しかし、一方で鏡弥と未来は最大限の出力での能力を解放させていた。

「そうか、そんじゃまぁ、頼んだぜ」

最後の力を振り絞り、澪は兵器を鏡弥の方へと蹴り飛ばす。

「さぁ、終わらせようか。受け身をとらせる時間もやらない!」

鏡弥は風の力を最大限に発動させ、兵器に強烈な一撃を浴びせる。

「未来、兵器は機械だ!わかるな!」

「当然!雷の力で決めるよ!!」

交代し、未来が解放させていた雷の力を兵器にぶつける。

思考回路がショートした兵器は、そのままエラーを続け、やがて起動を止める。

「あははは…駄目だ、疲れちゃった。

私もまだまだだなー、全力の一撃を出すだけで疲れが限界きちゃうなんて…」

「大丈夫か?仕方ないさ、俺たちは戦うために能力を使ってるわけじゃないんだから」

鏡弥は疲れて立てなくなった未来に手を差し伸べる。

「これにて一件落着かな?」

時歌は確認するように問う。

「……瑞樹さんから連絡だ。もう一体の処理も終わったらしい。とりあえず終わったな」


---------------------


戦いは終わった。だけどこの異変、確実に何かおかしい。

何かがある。そう思った鏡弥は、拳を握りしめた。

「まぁ、今度は失敗しないさ」


続く…

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