表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

猫は空へ行く

作者: につき

一、


飼っていた

マーブルの雌猫が

ある日

左前足を脱臼した

大騒ぎして治療したのに

完治したらすぐに

彼女は勝手に

出て行ってしまって

ある日から

戻ってこなくなった


わたしたちには

止めようもなかったけれど

あの狂気を含む

天衣無縫さに

触れることが出来なくなって

寂しく思った


ある夜に

懐かしい声がした

ガラス戸の向こうで

狂ったように鳴いていた

開ければ彼女だった

エサを

食べにきたのだろうか

それとも

なにか忘れものでも

思い出したのか


つぎの日には

いなくなってしまったが

元気そうで安心した

相変わらず

エメラルドの瞳は

美しかった


彼女は

今もどこかで

『まぁー』

と鳴いているのだろうか


何処かの屋根の上で

緩い風に

時折

欠伸しながら

日向ぼっこを

しているのだろうか


それとも

もしかして

誰かの家に上がり込んで

ぎゃおぎゃおと

甘えているのだろうか



二、


つい最近

生まれた

子ねこたちは

お前の顔を知らない


あの

気まぐれすぎる

柔らかさの

最も

猫らしい

お前の足音を知らない


また

お前の好きな

紫陽花が咲くだろう


うす紫の

濡れた明るさは

お前のいたころと

変わらないのに


たくさんの

猫がいなくなってしまった


たくさんの

明日が塞がれてしまった


今なら

お前たちが

なぜ塀の上を

好んで歩くのかが分かる


細い道が続いている

しとしと小雨降る

紫陽花の間を潜り

ちょろちょろと

流れる溝を見下ろし


途切れたら

また見つけて

先の見えない

隘路を

ただ少しの明るい空を

求めて

行くのだろう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 猫かわいいですよね
2019/10/24 02:20 退会済み
管理
[一言] 初めまして、大本営と言います。 一行一行が短文であるため、猫の視点で描かれているのではないか、と僕に錯覚を与える作品でした。 「一」はともかく、「二」はそれでも意味が通るように思えるのです…
[一言]  につきさん、猫は空へ行く、作品読ませてもらいました。  わたしも色々と猫を飼う縁があって、猫の種類は違いますが、同じような経験があって、思い出してしまいました。  猫の振る舞いほど、仮…
2016/07/03 12:15 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ