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アショーカ王の聖妃  作者: 夢見るライオン
第四章 ウッジャイン 覚醒編
114/222

これまでのあらすじ

「アショーカ王子と恋愛オンチの花嫁2」を一気にこちらに移動しました。

真夜中にひっそり引っ越したつもりですが、ご迷惑だった方には申し訳ありません。


間もなく第五章を更新します。


紀元前 三世紀


 イエス・キリストが生まれる三百年も前。

 中国を統一した秦の始皇帝とほぼ同じ時代。

 アレクサンドロス大王が大帝国ペルシャを倒しながら早世し、後継者争いが続く動乱の最中。



 インド亜大陸のほとんどを統一した伝説の王がいた。


        ◆       ◆



 紀元前三世紀、ヒンドゥの地はマガダ国のチャンドラグプタ王が強大な足場を築き、時代はその息子ビンドゥサーラ王の世代になっていた。


 そして凡庸なビンドゥサーラ王には、百を超える子供達がいたが、中でも二人の優れた王子が頭角を表しつつあった。


 長子スシーマ王子は、栗色の長髪を右肩に垂らし、思慮深い藍色の瞳は甘く涼やかで、ヒンドゥ中の姫が憧れる存在であったが、モテ過ぎるせいか女性に一切の興味がない生真面目な堅物だった。


 一方の次男アショーカ王子は、シリア王女の母から生まれ、浅焼けた肌に西洋の顔立ち、柔らかな黒髪に灰緑の瞳の珍しい容姿だった。更に幼少の頃より破天荒な乱暴者で、父王への反抗心を疎まれ、いつ失脚してもおかしくない問題児でもあった。

 されど軍神のごとく武の才能と、天才的な算術の才能を持ち合わせ、各地の反乱討伐にかり出され、若くして自軍を組織し、また商人を取りまとめて多額の利益を得ていた。


 そんなマガダ国が、西方の小国シェイハンに攻め込んだ。

 すべては、ラピスラズリが唯一とれる鉱山欲しさにビンドゥサーラ王が謀った浅はかな侵略であった。


 神の国と呼ばれるシェイハンにはミスラ神の神妻である聖大師がいた。

 アサンディーミトラ、通称ミトラは、次代の聖大師となるべく神殿に住まう巫女姫であった。


 神秘の翠の瞳を持つ聖大師は、名だたる覇王達をも退ける不思議な力を持つと言われているが、まだ神に嫁いでいないミトラは僅かな片鱗が見える程度だった。

 そして翠の封印と呼ばれる呪によって堅く恋愛を封印されていた。


 まだ十四の年齢より更に幼いミトラは、恋愛に関する記憶をすべて封印され、知識を蓄積されないがゆえに、出会った男達を唖然とさせる事ばかりしてしまう。

 更にはよこしまな男達を清らかな気持ちにしてしまう妙な力があった。


 自国シェイハンを侵略され、兄である王太子や父王達を殺され、つかえていた聖大師様を殺され、マガダ国に連れてこられたミトラは二人の王子と出会う。

 

 最初、マガダ国と二人の王子を憎んでいたミトラだったが、次第にその人柄に触れるうちに心を開くようになる。


 そして西方のタキシラの反乱討伐に向かうアショーカの軍に紛れ込んだミトラは、無事反乱を収めタキシラ太守となったアショーカの元で、シェイハン国の未来の為に自分が出来る事を模索するようになった。


 この時代の女の多くは強大な男の庇護のもと後宮深くに守られて暮らす事を理想としていた。

 二人の王子もまた、ミトラを正妃にして自分の庇護の中に入れる事を望んでいた。


 しかしミトラは恋愛を封印された上に、神妻になるために育てられていた。

 自分を囲い込もうとする男達が理解出来ず、さらにはシェイハンの民を不幸にしてしまった悔恨から、そんな生き方をするぐらいなら死んだ方がマシだと思っていた。


 それでもミトラへの愛ゆえにヒンドゥの女が持つ最高の権力を与えるからと、次代のただ一人の王妃になれと願うスシーマ王子。


 逆に、せいぜいタキシラ太守夫人の地位しか与えられないアショーカは、ミトラの望む道を共に歩む決意をする。しかしそれは、後宮に囲うよりもずっと困難の多いいばらの道だった。

 そのあらゆる困難を共に背負う覚悟をしたアショーカは、次の乾季に行われるシリア王の立太子式典に同行するようミトラに告げる。


 それを知ったスシーマ王子は、ミトラを手元に置くために危険な選択をしようとするアショーカを非難し、シリア行きを阻止しようと謀る。


 自分の最精鋭の隠密、五麟を使ってミトラを眠らせて攫い、次の公務先であるウッジャインに向かうスシーマだったが、ウソンという謎の遊牧民もそれを追っている事にはまだ気付いていなかった。


 アショーカ王子はスシーマに攫われたと知りながら、膨大な公務を押し付けられ身動きのとれないまま、凄腕の隠密アッサカをミトラの元に送る事しか出来なかった。


 そうしてミトラを乗せたゲル馬車は間もなくウッジャインに到着しようとしていた。


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