表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジアソング   作者: ブルー・ブラックリン
4/4

~草原を駆ける二人の足音

「ロアン。それとって」

「これ?」

「ちがう。緑の針よ」


僕は大きな裁縫箱の中から緑の針を探した。色とりどりの糸や針が入っていて、虹のようにきれいな色たちに見えた。ソシアとおばあさんの仕事がおわると、僕とソシアは買い物をするため外に出る。


「ロアン。これ、なにかわかる?」

「ん、なんだろう。果物かな」

「これはねカラナフルと言う食物なの。スープにすると、とてもおいしいのよ」

「へー、カラナフルかぁ」

僕が店先に並んだカラナフルを一つ手に取ると、白黒の猫が一匹狭い路地に入るのを見た。

「どうしたの、ロアン?」

「いや、猫がいたんだ」

「どこ?」

「そこの路地に入っていったよ」

「ロアン、そろそろ帰りましょ。おばあさんが待ってるわ」

「うん…」


僕は夕食を食べおわると部屋の窓から夜空を眺めた。満月といくつかの星がきらめいている。引き出しからディウに渡された短剣を手にした。古びた柄と曇り一つない刃。

短剣をしまうと僕はベットで眠った。



朝食を食べおえると、ソシアと僕は草原を歩いた。

「ソシア…」

「なに?」

「ディウはどうして僕に短剣をくれたんだろう…」

「わからない。なんでだろうね」


僕たちは大木まで来ると、そこに座った。

ソシアは小さな声で歌を口ずさむ。

「それ、なんの歌?」

「これ? 小さい頃におばあさんから教えてもらった歌よ」


僕は瞼を閉じると、ソシアの歌に耳を傾けた。それはやさしくて、とても心地よいメロディーだった。


「おい! いたぞ!!」

兵士が二人こっちに向かって来る。僕はソシアの手を掴むと言った。

「ソシア、走って」

僕たちは草をかき鳴らし走った。ソシアの息遣いが荒くなったと思うとそこにつまずいた。兵士たちに追いつかれると僕は腰から短剣を取って彼らに向けた。

「はぁ…はぁ…。さぁ、捕まえたぞ…」一人の兵士が言った。

「僕たちをどうするつもりだ!」

「帝国のご命令だ。ドラフの住民は皆、ザザの監獄行きだ」

ソシアが「おばあさんは?」と言うと兵士は刀を抜き「歯向かうのなら容赦はするなと、帝国のご命令でもある」言った。


兵士たちが僕らに近寄ると、一つの影が兵士の顔めがけて直撃した。影は空に舞うともう一人の兵士の顔にも当たり、空を旋回する。それは翼を広げ羽ばたく鳥だった。


「ソシア今のうちに」

「おばあさん…」

「ソシア!」


僕らはまた手を繋ぎ、走り出した。



夕陽が沈みかける頃になると、大きな岩場を見つけた。小さな洞窟になっている中へと僕らは身を隠した。


「ソシア。だいじょうぶ?」

「うん…だいじょうぶ」

ソシアのスカートの裾には赤く滲む色が付いていた。僕は短剣で自分の服の袖を切ると、彼女の膝に固く結んだ。

「ソシア、そこに横になるといいよ」

「ロアンも」

「僕はもう少し見張りをしてからにするよ」

「うん…。ありがとう」


ソシアが眠ると僕は洞窟から出て辺りを見回した。すでに夜になっていて空は少し曇っている。僕らを助けてくれた鳥は見えない。ポツリと雨が当たると僕は洞窟に引き返し、地べたについて横になった。

雨が強く音を立てはじめ、僕も瞼を閉じる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ