~繋がれた短剣
朝、目が覚めるとカタカタという物音が聞こえた。テーブルが置いてある部屋で、ソシアとおばあさんが小さな機械で布を縫っていた。
「それは?」
僕が言うとソシアは気づいて微笑んだ。
「ロアン。おはよう。これ? 服を作っているの。お仕事よ」
「そう…」
「ロアン、朝食のパン。今持ってくるから」
ソシアは少し慌てた様子で戸棚から食器を取り出した。椅子に座るとおばあさんに話しかけた。
「おばあさん、僕は何をしたらいい?」
「おや…どうしたんだい?」
「僕はどうしたらいいんだろう。それ、手伝えるかな?」
「いいんだよ…ロアン。とりあえず朝食をお食べ」
「はい」
朝食を食べ終わると外に出てみる。町をぐるりと一週すると草原に向かった。あの大木に寄りかかると、瞼を閉じて風が奏でる草の音を聴いた。それから青い空に広がる白い雲の形を眺めているうちに、また少し眠ってしまった。
ソシアの家の前に戻ると二人の兵士がいる。ソシアと何か話している様子だった。その内の一人の男がソシアの腕を掴むと平手で殴った。僕はその男に向かって言った。
「なにをしている」
「なんだ、こいつは? 帝国をナメているのか」
ソシアが泣きそうな顔をしながら、「ロアン! やめて!!」と僕に向かって叫んだ。
すると兵士たちは突然後ろを振り向き呟いた。
「アーシェ様…」
兵士たちが見つめる方から、全身を鎧で纏った人とその隣に金髪をした青年らしい男が歩いて来る。近くまで来るとその鎧を纏った人は、兜で顔を覆い隠したその奥から兵士たちに声を発した。
「どうした?」それは女の人の声だった。
「いえ…銅貨が足らんのです」
「騒ぎを起こすなと言った筈だ。他にまわれ」
「はい…アーシェ様」
兵士たちは逃げる様に去って行く。
アーシェという人がソシアと僕を見ると、その重い鎧の片足を地面に付けて言った。
「ご無礼を申し訳ない。彼らには私から厳しく言っておこう。お嬢さん、今回の足りない銅貨はいりません。このアーシェの名を持って、許して頂けませんか?」
ソシアは頷いた。アーシェは立ち上がると引き返し歩いて行く。けれど金髪の青年は僕を睨むようにそこに立ったままでいた。
「おまえ…」金髪の青年は僕に言った。
「なに?」
「おまえはこの女のなんだ?」
僕がソシアを見るとソシアは「ロアン。ロアンは記憶がないの。だから今、私の家にいるの」そう言った。
「記憶がない? まぁいい。おまえは武器を持っているのか?」
金髪の青年の背後からアーシェの「ディウ!」と呼ぶ声が響いた。デュウという名の青年は僕の前に何か物を投げつけてアーシェを追いかけて行った。
僕はデュウの投げた物を拾った。
それは、短剣だった。




