はじまり
自分が誰なのか。世界が何なのか。
_____ただ、わかりたかった。
瞼を開けると、そこに僕がいる。一面に野原が広がり、朝日があった。朝日というものは知ってはいたけれど、ずいぶん長い間、見ていなかった。そんな感じがした。
野原を歩くと風が吹いてきた。白い絹の服はだいぶ汚れている。瞼を閉じて自分のことを思い出してみる。でも、なにも思い出せなかった。ここがどこなのか、それさえわからない。向こうの方に大木が一本ある。とりあえずそこまで行こうと思った。
その大木に触れると、緑の葉は音をたてる。すごく心地よくなって、背中をあずけて眠ってみた。
「あの…」
声がして目が覚めた。 目の前に女の子の顔があって、その子の黒く柔らかい髪が風になびいて鼻先に触れた。
「なに?」
「あの、なんでこんなところで寝てるんですか?」
「風が心地よかったから」
「そうなんですかー」
僕はいつの間にか草むらに寝転がっていた体をまた木を背もたれにして彼女を見る。黒く長い髪が印象的で、優しい顔つきをしていた。
「ここはどこだろう?」
「え、しらないの?」
「しらない」
「うーん、ドラフの高原よ」
「ドラフ…」
「そう。あなた、どこから来たの?」
「わからない」
「へー、不思議ね」
彼女は僕の手を掴んで笑顔で言った。
「わたしの家に来るといいわ。おばあちゃんに色々聞くの。あなた、なまえは?」
僕は起き上がって服についた草を払いのけた。
「ロアン」
「ロアン? わたしソシアよ」
「たぶん…ロアンだと思う。記憶がない、ロアンはなまえを聞かれて勝手に出てきた」
「やっぱり不思議ね。さぁ、はやく」
僕は見上げた。そこには青く澄んだ空が広がっていたけれど……。
~ファンタジアソング~




