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ヒーローの成り方  作者: 立花明日夢
第一幕
7/31

第7部 ゲーム(後篇

 -前回のヒロ成!-

どういう流れか、若菜と共に暮らすことになった拓也。

新たな居候が増え、どう接していけばいいか悩む拓也だったが、翌日になると若菜と愛里は二人で遊びに行ってしまう。

家に一人ぼっちになる拓也。

そんな彼の元を訪れたのは隣の家の幼馴染、雪穂だった。

雪穂は拓也をデートに誘い、ゲームセンターに遊びに行く。

そこで遭遇したのは雪穂の良きライバル(?)萩原シズクだった。

雪穂とシズクは激しい音ゲー勝負の果て、疲れ果てる。

拓也は二人にアイスクリームをプレゼントしようということで、アイスクリーム屋さんを訪れた。

「さぁ、急ぐデスよ!」

 アイスクリームを食べ終えたシズクはアイスクリーム屋を飛び出してゲームセンターへと向かっていった。取り残された僕らも暇なので特に何も考えず彼女についていく。


 ゲームセンターに戻ってくると、シズクは獲物を探す獣のように辺りを見渡した。

「どこデスかー、どこなのデスかー? あ、あったのデス!」

 獲物を捕捉したらしく、真っ先に駆け出して行くシズク。僕らのことなど忘れているのではないだろうか。

 彼女が向かった先に赴くと人の行列が出来ているゲーム媒体を発見した。名前は……ああ、あったあった。看板に『ハイスピードカードアクション! ダイカード!』と記されている。一プレイ百円のようだ。こういうゲームは二百円以上取られる気がしていたので少し驚きだ。

「それにしても凄い行列だねぇ……」

 雪穂が唖然とした。初日導入なだけあって、八台もあるゲーム媒体に関わらず、ざっと三十人は並んでいるように見える。シズクはその列の最後尾に並んでいた。

「ねね、たっくん。折角だし少しやっていこうよ!」

 確かにここまで並んでいると興味が湧いてくる。そんなに人気が出るゲームとは一体どのようなものなのか。

「そうだね。じゃあ僕らも少しやっていこうか」

「やったー! じゃあならぼならぼ!」

 無邪気に喜ぶ雪穂を連れて、僕らはシズクの後ろに並んだ。周囲には連続でプレイする人防止のための警備員までいる。やはり見ての通り凄い人気のようだ。

「おっ、拓也達もやるのデスか? ふふふ、私のプレイングを披露するときが来たようデスね!」

 自身満々に胸を張るシズク。今日から始めるのだからまだ慣れるもなにもないでしょうに……。

「……って、あれ? 対戦することになってるの?」

「当ったり前デスよ! 一緒にやる人がいるなら対戦するのが世の鉄則デス! 覚悟するデス」

 またもや胸を張る。今度はドヤ顔つきだ。

「たっくん頑張ってねぇ……」

 気が付くと雪穂が列から外れて苦々しい笑みで僕に手を振っていた。どうやら今の会話を聞いて抜け出したらしい。

「あ、雪穂! 君がやろうって言ったんだろ!」

「えへへ、勝負事はちょっとねー」

 音ゲーで散々対戦していた奴が何を今更!


 長く長く待ち続けた結果、約四十分でゲームにつくことが出来た。

 まず最初にスターターキットを購入。(どうやらゲームをする前にスターターと呼ばれるカードデッキを買わなくてはいけないらしい。ちなみに値段は一つ三百円だ)スターターキットには五種類のカードが入っていた。どれがどれかよくわからないので取り敢えず放置。

 媒体はよく見かける格闘ゲームの台によく似ていた。違うのはコマンドを入力するボタンの左隣にカードを置いて技を発動するスペース、スキャンスペースが存在するというところだ。周囲の人を見てみるとスキャンスペースの上にカードを全部並べているので僕も真似して置いておくことにした。

 向かいの席のシズクはすでに準備万端のようだ。

「さぁ拓也! 一度きりの勝負デス! 悔いの無いよう正々堂々戦うデスよ! 店内マッチングを選択デス!」

「僕に負けて泣き面かくなよー」

「その威勢、すぐにかけなくしてやるデスよ!」

 僕はシズクの返事を聞くと同時に店内マッチングを選択した。ロード画面が表示されたのちにシズクと表示された敵キャラクターが出現する。ゲームでも同じ名前を使っている人なんて小学校振りに見た気がする。

 画面内でフィールドが作られ、画面中央に自分のアバターが表示された。かなり遠くのほうにシズクの名前も表示されている。シズクの名前の横に表示されているゲージは……恐らく体力ゲージだろう。

 画面いっぱいに三秒のカウントダウンが表示された。その次の瞬間。

 -Fight!-

 ゲーム開始の合図が大きく出現する。

「さぁ! いくですよぉぉぉぉおおおおおお!」

 シズクが激しい咆哮を放ち、こちらに向かって全力で駆けてきた。咄嗟に危険を感じ、僕は素早く左ローリングの回避行動に移る。案の定、駆けてきたシズクは攻撃コマンドを繰り出してきた。回避してなければあそこから攻撃コンボを繋がれていただろう。

 画面をよく見てみると自分の体力ゲージの他に時間の経過と共に増えていくゲージがある。横にはマナと書いてあった。そういえばこのゲームはカードを使って戦うことを前提として作られていたな……。

 僕は試しに武器らしきカードを手でなぞり、選択ボタンを押した。すると緑色のマナゲージが消費され、アバターの右手に西洋刀、サーベルが装備された。これは使える。

「おっしゃ、今度はこっちからの攻撃だ!」

 並んでいる間に読んだ説明書には走りながらの攻撃は威力増加すると記されていた。それに習いシズクにダッシュジャンプ入力のサーベル振り下ろし攻撃を試みてみる。相手のアバターは動く様子がない。当たる! と思ったのだが、実際はそんな上手くはいかなかった。シズクは回避しない代わりに左手に盾を召喚。僕のジャンプ斬りを盾で受け止め、強く薙ぎ払った。空中で態勢を崩された僕は地面に落とされ、無様に転がった。立ち上がろうとしたのだが、立ち上がる前にシズクが僕の上に馬乗りし、拳で一発一発と確実に殴りを入れてきた。威力自体は低いのだが着々と体力が削られていってしまう。

「ふはははは! その程度デスか!? ぬるい! ぬるすぎる!」

 こっちは初心者だっての!

 しかしこのままやられっぱなしというも気に食わない。こちらも少し努力して応戦することにしよう。

 剣に盾、初期カードは五種類なので残るは三枚。その中でこの状況を変えれそうなのは……あった、これだ。僕は選択したカードをすぐに発動した。

 突如自分のアバターの両手にナイフが出現。馬乗りしているシズクに向かって両手のナイフで乱舞を叩き込んだ。

「な、なんなんデスか! くぅ!」

 乱舞は見事にヒットし、シズクの体力を大幅に削ることが出来た。しかしシズクもアクションゲームにやり慣れているだけあり、受けるままではなく途中から盾で僕の攻撃を防ぎ、僕のアバターから距離を取った。

「ここは回復デス!」

 四枚目のカードと思われるカードでシズクの体力の二割が回復する。僕の体力と並んだ。

 どうやら先ほどの乱舞のカードは一時利用限定らしく、発動が終わると両手のナイフが消滅してしまった。さらに最初に呼び出したサーベルは乱舞の重ね掛けが原因で消滅してしまっている。

 こちらに残されているカードは後三枚。その中で理解しているのは回復と盾。あとの一枚はマナゲージ全部消費のため使うのに躊躇いが出る。

 それに比べ向こう側だ。残りカードが三枚という点は同じだが、残っているカードが剣に乱舞、そしてこの全消費だ。向こうはまだ攻撃の手を残している。こちらは防戦になってしまう可能性から、向こうの方が若干有利だろう。

 僕は倒れ伏せているアバターを立ち上がらせて、再度距離を取る。すると今度はシズクがサーベルを装備してこちらに攻めてきた。盾を装備して受け止めようとしたが、タイミングを図るのに失敗し、直接サーベル攻撃を身に受けてしまった。残り体力半分。すかさず回復カードを使い二割回復する。しかしそれでも向こうの体力のほうがまだ上だ。

 シズクはひたすらサーベルを振り回してきた。それに対して僕は何度も何度も回避行動を取るしかない。

「逃げるのは上手デスね。しかし甘いデスよ!」

 突然攻撃パターンを変えて足払いをするシズク。足を取られた僕は再び地面に仰向け状態で倒れてしまった。

「これで終わりデース!」

 この隙を逃さぬとシズクの向けた刃が僕の心臓部めがけて勢いよく振り下ろされた。しかし、この向こうが油断した瞬間を待っていた。

 心臓に振り下ろされたサーベルを僕は真剣白刃取りのように受け止め、刃を右へとずらす。

 突如変な方向に力が加わってしまったシズクは耐える暇すら許されず、サーベルを手放して地面へ転がった。

 僕はシズクが手放したサーベルを奪い取って、立ち上がる。

 これが説明書にさりげなーく書いてあった秘儀、武器奪いだ。相手が剣系武器を使っているとき、素手の状態でのみ可能となるカウンター技だ。実際やるのはかなり難しいとも書いてあったので今のは偶然出来たということだろう。

「ああああ! 武器奪うなんて卑怯デス!」

「このことを想定していなかったシズクのミスだ!」

 今ぞ好機! 倒れ伏せているシズクは隙だらけだ!

 サーベルを構え、シズクに突撃。右手のサーベルをシズク目がけ振り下ろすと、シズクもすぐに立ち上がり、先ほど僕が使ってみせた乱舞を開始した。

 回避入力は間に合わない。ここは……そうだ、防御に移るべきだ。

 すかさず防御入力。アバターはサーベルを横にして見事に無数の斬撃を受け止めてくれた。

 今のガードでマナゲージを急速に回復することが出来た。今ならこの飛んでもカードが使うことが出来る。

 マナ全消費のとんでも技だ、確実に当てていきたい。シズクが放っている乱舞は攻撃終了後無防備になる隙がある。そこにこのサーベルを使ってコンボをぶつけていけば……!

 乱舞終了。

「今だ!」

 僕はサーベルを構え、シズクに向かって再度突進する。まず腹部に一撃、斬撃を入れることに成功した。次に背中に回りもう一撃。しかし追撃が決まる前に、自由となったシズクが素手でサーベルを掴み武器奪取技を仕掛けてこようとする。

「まだ、こちらにも勝機が残ってるんデス!」

 ここで武器が奪われると防戦に回るしかなくなってしまう。ならば相手の無防備な部分を攻撃して!

「顔面が、がら空きだああああああああああああ!」

 僕のアバターがサーベルを握ったまま飛び跳ね、シズクの横顔に回し蹴りをくらわせた。。シズクは武器奪取に失敗し、倒れる前に受け身を取った。だがその受け身が失敗だ。僕は受け身を取って無防備になっているシズクに上から斬撃を一発食らわせ、怯んだところでマナ全消費カードを発動した。

 突如サーベルが赤く光りだす。アバターはサーベルを後ろに構えると、目にも追いつかぬ速さでシズクの全身に重い斬撃を一発叩き込んだ。

 カード効果で追い打ちとなる爆発がシズクを襲った。

 -Game set!-

 勝負が終わったらしい。気になる判定は……?

 -You Win!-

 どうやらなんとか勝てたようだ。

「ぬおおおおお、負けたのデスか? この私がぁ!」

 向かいの台ではシズクが悔しそうに台をたたいていた。ほーら、警備員が見てるぞー……。

「ま、どんまいだね」

 ゲーム終了後、新しいカードが媒体から排出された。ご丁寧に袋でラッピングされている。

 僕とシズクはカードを受け取って媒体から離れた。雪穂の姿が見えないので探してみたら、案の定テレビ付洗濯機をプレイしていた。


「いやぁ、今日は楽しかったデスねぇ!」

「うん、また来ようね!」

「ふふふ、その挑戦状、受けて立つデスよ!」

 なんでこれだけの会話でこんな流れになるのか、理解に苦しむ。

 気が付けば日は暮れ、時間も夜七時を過ぎていた。流石に愛里も若菜も帰っているころだ。僕らもそろそろ帰らないと迷惑をかけてしまう。

「雪穂、そろそろ……」

「あ、うん!」

 簡単に腕時計を見せるだけで理解してくれる雪穂には毎回助かります。

「ではまた明日なのデスよー!」

 シズクは軽い挨拶と共に自宅の方向へと駆けていった。こんな時間だし送っていこうかとも考えたが、シズクの場合護身術を習っていただかで喧嘩は負けなしということだし、心配いらないのかもしれない。

「さて、僕らも帰ろうか」

 夜もすっかり冷えるようになってきた。僕らは暗い夜道をまっすぐ歩いて行った。


 我が家についた。しかしどういうことだろうか。雨戸も閉まってなければ部屋の中の明かりも一切ついていない。玄関の外灯も暗いままだ。

「若菜ちゃん達、まだ帰ってないのかな?」

「多分そうなんだけど、愛里は特別な事情がない限り七時には帰ってきてるからなぁ」

 そしてその特別な事情というのも今まで部活くらいしかなかった。友達と遊んでいたとしても七時には確実に帰ってくる。それなのにまだ帰ってないとは……。。

「まぁ、取り敢えず入ろう」

 鍵を開けて玄関に入る。家の中に人の気配は感じれなかった。

 僕はケータイのメールを確認した。愛里は夕食を家で食べれないとき、確実にメールを送ってくれる。僕も同じように夕食が家で食べれない場合、愛里にメールをしているのだ。

「メールの着信も……ない」

 流石に不安が募ってきた。

「電話をかけよう」

 電話帳から愛里の電話番号を開き、通話にする。しかしケータイから聞こえてくるのは愛里の声ではなく、ただ鳴り響く呼出音だった。

「つながらない……?」

「私からも電話してみるよ!」

 僕がひたすら愛里にリダイヤルするように、雪穂は若菜に何度も電話をかけてくれた。しかし、それでも一切つながることはなかった。

「……もう、なんだよ、繋がれよ」

 繋がらない度、無慈悲に呼出音が流れる度、頭の中には嫌なイメージが何度も何度もしつこく浮かんでくる。

「あ、繋がった!!」

 雪穂の電話が繋がった瞬間、僕は雪穂のケータイを奪って一方的に呼びかけた。それほどまでも僕の心情は不安定だったのだろう。

「若菜! 遅くなるなら電話くらいしろ……」

 強く呼びかけたが、向こうから聞こえてきた何かによって言葉が失われた」でも今確かに、スピーカーの奥からかすれるような声で、小さく「助けて」って聞こえたのだ。

 その声は、愛里の声にとても似ていた。

「……どういう悪ふざけだよ。 おい! 返事しろって!」

 電話はそこで切られた。僕の思考回路はパンク寸前となり、考えることもまともにできない状態になっていた。

今回前回のヒロ成!が上手くまとまらなくて困った……。

さて、今週もあとがきの時間が来ましたよ!


今週はゲームバトルをしていたかと思えば後半でシリアスになったり、結構忙しいストーリーになるのかな。

一話の話としてはもうかなりクライマックスに近いです!

次で最終話になるか、または次の次か!

終わりに近づいていくヒロ成第一話を最後まで応援してください!(笑


さて、今回登場したゲーム『ダイカード』ですが、イメージ的にはlovRe2とエクバを混ぜた空想上のゲームとなっています。

カードを使って武器を召喚して戦うアクションゲーム! こんなのあったら実際にやりたいなー!


では今週はこの辺で!

また次週です!

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