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僕はスキル振りを間違えた  作者: ごぼふ
地雷少年様々な人間と触れ合う
13/58

保健室での出会い

 という訳で、ヒラクはチュルローヌの使いで保健室へ向かうことになった。

 保健室は、ポータルが使える転送室への廊下のすぐ隣に位置する。

 ちょうどヒラク達が装備を身に纏う更衣室の、反対側にある格好だ。


 なるほどこれならば怪我人が出たとき対処しやすく、身体検査等もやりやすかろう。

 などと考えながらも、ヒラクはその扉をノックした。


「すみません。チュルローヌさ……先生からのお届け物です」


 まるで配達人のような文言を放ちながら、ヒラクは相手の反応を待つ。

 先ほどまでより慎重なのは、チュルローヌが相手を苦手だと評したからであった。


「入れ」


 無愛想な声が、扉の内側から聞こえる。

 が、それだけで相手の印象を決めてかかるほど、ヒラクはそそかしくはない。


「怖そうな人ですね」


 耳元を飛ぶ慌てん坊を「まだ分からないよ」と軽く叱って、ヒラクは扉を開けた。


「失礼します」


 部屋の内部は、四つに区切った内の一角がカーテンに囲まれている。

 おそらくそこは、ベッドが置いてある場所であろとヒラクは予想した。


 そして二角の壁を覆い尽くすように薬棚が置いてある。

 そこには所狭しと瓶に入った薬品が置いてあり、硝子で仕切られているにも関わらず薬品の臭いが部屋中をほのかに覆っていた。


 残った最後の一角。そこにはヒラクが学園で使っている物の二倍ほどの、大きな机が鎮座している。


 そしてそこには、その机から少しでも体を離したい、しかし椅子からは立ち上がれないというような反った姿勢で、男が一人座っていた。


 年の頃は二十代後半か。気だるげな表情と鳥の巣のような髪のおかげでもう少し老けているようにも見える。


 パリっとした白衣を着ているが、それが逆に胡散臭さを増すような男だ。


「えーと、ダスティ先生ですか?」


 ヒラクが入室しても、彼は目も合わせない。

 おそらく間違いは無かろうと思いながらも、ヒラクはそう呼びかけた。

 

「……おう」


 すると彼――ダスティはしばらく間を空けてから、ようやくヒラクを見て、短く返事をした。


「これ、チュルローヌ先生からのお届け物です。どこに置けば良いですか?」


 流石に彼の態度を不審に思いながら、ヒラクは袋に入れてあった包帯を一つ取り出してダスティに見せた。


 すると彼はフンと鼻を慣らし、薬棚の方へ視線を向けると顎で示す。


 極力口を開こうとしないダスティの態度に、リスィが頬を膨らませた。

 が、彼女が何か言う前にヒラクは愛想笑いを浮かべると、リスィを薬棚へと誘う。


「すごく無愛想な人です」


 渋々それに従いながら、薬棚の硝子越しにダスティを睨みながら、リスィがこぼした。


「たまたま虫の居所が悪いとか……さ」


 ヒラクのほうは硝子の中の薬品を見つつ、彼女をなだめる。

 中身は青や紫、赤と緑のまだら模様など、一見すると毒薬のような色合いの瓶が並んでいた。


「お薬がいっぱいですねぇ。これもポーションなんですか?」


 リスィも諦めて、ヒラクの手伝いをする事に決めたようだ。

 もしくは好奇心が勝ったのか。彼女は棚に並んだ薬を見ながら、感嘆の声を漏らす。


「怪我とか毒の治療用……あぁ、これは凄いな。高級な薬ばっかりだよ」


 薬物鑑定(ポーションアナライズ)のギフトでその効能を見ながら、ヒラクはリスィとは違った意味で感嘆した。


 陳列されているポーションは、どれもある程度の傷や不調なら完璧に直してしまうような高位の物で、一瓶だけでもヒラクが一ヶ月は暮らせそう品物だ。


「じゃぁ、これが倒れちゃったら大変な事になるんですね」


 ヒラクの説明を受けて、リスィがそんなことを呟く。


「いや、怖い発想しないでよ……」


 恐ろしい事を言うリスィに身震いしつつ、ヒラクが包帯の置き場所を探していると――。


「おい」


 またしても短く、そして不機嫌そうな声が、ヒラクの背中に浴びせられた。


「は、はい。なんでしょう」


 価格を計算していたことが後ろめたい気分を連れてきて、ヒラクはぎくしゃくと返事をする。


 そして彼がダスティの方を見ると、彼はやはり不機嫌そうに、腕を組んでいた。


「さっきから聞いてたが、お前、その辺の薬の価値が分かるのか?」


 恐々としながらヒラクが振り向くと、そんな彼にダスティが問いかける。


 途中で彼がリスィを睨みつけたのは、彼女による自分の評価を聞いていたせいだろう。


「あ、はい。ある程度なら」


 震え上がるリスィが自らの陰に隠れる様子に若干緊張をほぐしつつ、ヒラクはダスティに答えた。


 詳しい効能や効果は分からないが、薬物鑑定のスキルのおかげで種類と価値は見抜けているはずだ。


「ふむ……」


 ヒラクの答えに、ダスティは顎をさすり考え込むような仕草を見せる。


 どうしたのかとヒラクがリスィと顔を見合わせていると、彼はまたもヒラクを睨みつけて尋ねた。


治癒魔法(ヒール)のギフトは?」


「えーと、1レベルだけなら」


 彼の意図は分からないが、ヒラクはとりあえず正直に答えることにした。

 

 すると今度は、ダスティはなるほどと大きく頷く。

 今までで一番大きなリアクションと言える動きであった。


「……医療の心得は?」


医学(メディスン)を1レベル持ってますから、応急手当ぐらいなら」


 更に投げかけられた質問にも、同様に答えるヒラク。

 その雰囲気に、ヒラクがまるで面接のようだと思っていると――。


「よし、お前今日から保健委員になれ」


 顔を上げたダスティが、ヒラクにそう告げた。


「……はい?」


 あまりに唐突な指令に、ヒラクは間抜けな顔で聞き返してしまう。


「俺が留守の時、保健室でけが人や病気の奴の面倒を見るのがお前の仕事だ」


 そんな彼に対し、既にヒラクが了承した体で話を進めるダスティ。


「いや、僕の治癒魔法ヒールじゃひどい怪我は無理ですよ!」


 ヒラクの持つ魔法では、止血や応急手当が精々である。

 自分が一番それを分かっている。そう考えたヒラクが慌てて辞退しようとすると、ダスティは薬棚を指さして言う。


「その為の薬だ。ばんばん使え」


「ばんばんって……」


 確かに量はあるが、気軽に使えるような値段ではないことは、先ほどの見立てで分かっている。


 尻込みをするヒラクに、ダスティがふんと息を吐いた。

 右の口角がわずかに上がっているのを見るに、鼻で笑ったらしい。


「授業中にまでここを担当しろってんじゃない。ひとまずは休日の十二時から十四時の二時間でいい」


「はぁ……」


「休日でも人が来るんですか?」


「この学校にゃ、病院なんて気が利いた物は無いからな」


 リスィが素朴な疑問を呈すと、やれやれとでも言いたげにダスティが答える。


 要するに休日でも校舎は開いており、学生が怪我をした場合はこの場所に来るということだろう。


「はぁ、なるほど」


 ポーションを使わなければならないほどの怪我をするのは、大抵迷宮探索の授業ぐらいなものだ。

 なるほど、それならば重病人がかつぎ込まれることはあるまい。

 しかしそのひとまずという言葉がひっかかり、ヒラクは曖昧な返事しか返すことができない。


「腕が千切れかけたぐらいなら、お前が持ってきた包帯でくっつく。見た目死んでる場合だけ俺を呼べ」


 それを強引に了承と取ったのか、それとも彼の中ではもはや決定事項なのか。

 ダスティがそんな風に話を進めていく。


「し、死んだ人を生き返せるんですか?」


 その中で出た彼の言葉に、リスィがまるで釣られた魚のようにびょんと飛び上がった。


 しかしその横で、ヒラクは目を伏せる。


「……無理だ。死者を生き返すなんて、そんなギフトは存在しない。一見死んだように見える奴までなら、俺が何とかするがな」


 そんな彼をちらりと見てから、ダスティはリスィに答えた。


 彼の言葉に、ヒラクは心の中でその通りだと頷く。

 ギフトが人間に授けられて以来、人々は死者蘇生という大願を行う為の術を探し求めてきた。

 しかし、どれだけ回復魔法のギフトを高めても、どんな素材でポーションを作ったとしても、神の元へと向かった魂が戻ることはない。


 自分は、それをよく知っている。

 血の匂い、冷たい体、迷宮の静けさ。

 ヒラクの意識が、追憶に沈みかける。


 ぶぃー! と、そんな彼の意識を呼び戻そうとするかのように、どこか間の抜けた音が保健室の中に響いた。


「そんな訳で、俺を呼ぶときはこのスイッチだ」


 我に返ったヒラクが見ると、ダスティが机の上にある丸形のスイッチを押していた。


「これを押せば俺が持ってる受信装置に伝わる。ただしくだらないことと荒事では呼ぶなよ」


 言いながら、彼は自らのポケットから楕円形の宝石を出してみせる。

 どうやらエンチャントの技術を使った通信装置の一種らしい。


「以上だ。質問は?」


「ひ、ヒラク様は忙しいんです! 今日だって帰ってポーションを作らなきゃいけないんですから!」


 すっかりヒラクを保険委員にする事と決めた様子のダスティ。


 そんな彼に対し、ヒラクを庇うようにリスィが立ちふさがった。

 ヒラク自身はまだ少しぼぅっとしており、すっかり出遅れてしまった。

 彼女をめんどくさそうに見た後耳をほじると、ダスティは顎をしゃくってみせる。


「……なら、そこの空瓶と引き替えならどうだ?」


 彼の誘導に従ってヒラクが薬棚の隅を見ると、そこにはポーションの空き瓶が並べられている。


「保存性良好、硬度も高い。高級とは言わないが、それなりの価値はあるぞ。一回来るたびこれを三個やろう」


 気づけば、ダスティは随分と雄弁になっていた。

 先ほどまでは本当に不機嫌だったのか。それともそんなにヒラクを勧誘したいのか。


「そんな物、勝手にくれて良いんですか?」


 どちらも何か違う気がして、ヒラクの声は疑いに満ちたものとなった。


「やるなとは言われていない」


 しかし、ダスティは飄々としたものだ。ぼそりと呟くと、口角を上げて見せた。


 陰気で不気味なその笑顔は、ヒラクの警戒心を更に強める。


「……わかりました」


 だが、ヒラクは結局そう答えていた。


「良いんですか?」


 横を飛ぶリスィがこちらの表情を伺うが、それに頷いてみせる。


 釈然としない物があるのは事実だったが、ヒラクは彼の提案、もしくは命令に従うことにした。


「ま、できることを探そうって約束したからね」


 理由の一つは、昨日リスィとした「自分のできることを探す」という約束の為だった。

 先ほどの問いかけを聞くに、一応自分は彼にとって必要な人材のようだ。

 この先替えが利くかもしれないが、とりあえず今のところはそう考えて良いはずである。

 ヒラクはそう解釈したが、当のリスィは「それってこういうことなんでしょうか?」と不満顔だ。


 そんな彼女に気弱な笑みを向けてから、ヒラクは改めてダスティに向き直った。


「それと、下の棚に入っている本も勝手に読んで良いですか?」


 そして、彼に問いかける。

 薬棚の下側を開けた際、医学書、薬学書の類が無造作に置かれていたのをヒラクは見つけていた。


「目ざといな。許可しよう」


 するとニヤリと笑い、ダスティが鷹揚に頷く。


 話はまとまった。そんな時、計ったように部屋の中にピンポンパンポンという音が鳴った。


 続いて、人の声。


『ダスティ=ブグラウド先生、ダスティ=ブクラウド先生。校長先生がお呼びです。校長室までお越しください』


 告げられて、またピンポンパンポンと鳴り静かになった。


「な、何ですか今の?」


 周囲をきょろきょろと見回しながら、リスィがおっかなびっくりヒラクの袖にしがみつく。


「校内放送だよ。あそこのスピーカーから音が出て、離れた複数の場所に声を送れるんだ」


 そんな彼女に笑いかけながら、ヒラクは保健室の天井隅を指さした。

 そこにはヒラクの頭ほどの大きさの箱がくっついている。


 幽鬼の類では無いと分かったおかげか。リスィが目をぱちくりさせた後いつも通りに戻って呟いた。


「へー、ハイテクですねぇ」


「ハイテク?」


 彼女の操る単語の意味が分からず、今度はヒラクが目をしばたかせた。


 まぁ、おそらくまた神語の類だろう。

 そう納得してから、ヒラクは彼女から視線を離した。


「ダスティ先生。呼ばれましたけど行かなくていいんですか?」


 それから、呼び出しをされたというのに動く気配のないダスティに問いかける。


「……あぁ、俺を呼んでたのか」


 すると彼は、気怠げな様子でそんなことを言った。


「二回も呼んでましたけど」


「まだ馴染みがねぇんだよ。偽名だからな」


 怪訝そうな様子で尋ねるリスィに対して、さらりとそんな事を告白するダスティ。


「えぇ!?」


 彼の発言に、リスィは飛び上がって驚きを露わにした。


 一方、もちろんヒラクも驚いている。


 しかし、だから部屋に入って名前を呼んだ時、彼の反応が鈍かったのかと今になって思い当たり、納得もしていた。


 そんな中、ダスティと名乗っている正体不明の男は椅子から腰を上げようともしない。

 どうやら呼び出しを無視するようだ。


「でも、何で偽名なんて使ってるんですか?」


 ヒラクが彼を促すべきか迷っていると、その間にリスィがダスティに尋ねる。


「俺が叩けば埃が出る体(ダスティ)だからだ。決まってるだろ」


 すると彼はそう答え、どうだビビれとばかりにニヤリと笑った。

 世界的デザイナーの次はおそらく犯罪者。

 彼を恐れるというよりこの学園の不思議さにヒラクはますます混乱したが、隣のリスィにはそんな様子がない。


「あー、だからですね」


 むしろ彼女は何かに納得した様子で、ポンと手を打った。


「何が?」


 何のことか分からずヒラクが聞くと、リスィも自信がなくなったのか、首を傾げながら答える。 


「え? 埃が出るから、潔癖性のチュルローヌさんが苦手って言ったのかと」


 彼女の言葉に、ひくりとダスティの眉が動く。


「叩けば埃って、そういう意味じゃないよ」


 当の本人の前でそれを言ってしまうリスィに、ヒラクは目を覆った。


「あぁ? あの女そんなこと言ってやがったのか」


「あ……」


 案の定不機嫌な声を出すダスティを見て、ようやく自分の失言に気づいたらしい。

 リスィが口を手で塞ぐがもう遅い。


「ったく、こっちのセリフだっての。あの浮かれ女め」


 彼は彼でチュルローヌに対して思うところがあるようだ。

 ダスティが彼女への不満をこぼす。


「あー、ていうか良いんですか? 僕たちに偽名だなんて話しちゃって……あと校長室に行かなくて」


 よろしくない空気を感じたヒラクは、話題転換も兼ねてダスティに尋ねた。ついでに彼を促す。


「バレた時はバレた時だ。どうせあいつらが本気で探したら、名前なんて関係ないからな」


 すると彼からは、先ほどよりもっと剣呑な言葉が飛び出してくる。


 ごくり。ヒラクとリスィが同時に唾を飲み込んでいると。


「……こんなギフト持たされたせいで、いい迷惑だよ」


 幸いと言うべきか、ダスティはそうこぼして「あいつら」とやらにはそれ以上触れなかった。


 しかし、持たされたとはどういう意味か。

 不思議な、だが、妙に馴染みのある言葉にヒラクが戸惑っていると。


「お前もそうだろ?」


 そう言って、ダスティはヒラクに淀んだ目を向けた。


 その目は自分の中は見せないくせに、ヒラクの中身を見通しているようで、彼をひどく不安定にさせる。


「僕は、自分で選んだ結果ですから……」


 それでも、何とか目を逸らさずにヒラクはそう答えた。

 あるいは目を逸らしたら、自分の中で何かが折れてしまいそうな確信があって、逸らせなかった。


「ほぉ、そうかい」


 彼の答えに、ダスティが唇を歪める。

 おそらくヒラクを嘲っているのだろう。

 しかしそれが自嘲のように見えて、ヒラクはより不気味さを覚えた。


 ヒラクがそんな風におののいていると、再びピンポンパンポンと音が鳴った。


 そして、先ほどより少し早口でダスティを呼び出す。


「……それじゃぁ、僕はここで失礼します。週末には、また来ますから」


 これ以上この場所にいるのは良くない。いろんな意味で。

 そう感じたヒラクは、放送とかぶせ気味にそう言うと、踵を返した。


「え、え? 待ってくださいヒラク様」


 先ほどから会話についていけていなかったらしいリスィが、慌てた様子でついてくる。


 彼女を伴って、ヒラクは保健室を出た。


「あ、あの、ヒラク様……」


 しばらくは勇み足だったが、途中でリスィが自分を心配そうに見ていることに気づき、歩調を緩める。


「チュルローヌ先生が、あの人の事を苦手だって言った理由が分かった気がする」


 そうして、呟いた。


「多分、自分のギフトが嫌いだからだよ」


 死ぬギリギリの人間を元の状態に戻せる回復魔法の使い手は、世の中にそういない。

 チュルローヌと同じく世界有数の物だ。

 しかし彼は、そんな自分のギフトを好いてはいないようだった。


 その辺りが、自分の仕事、ひいては自分のギフトに自信と誇りを持っている様子のチュルローヌと相容れないのではないか。

 ヒラクは、そう感じていた。


「でも、自分で選んだのに……」


 それを聞いて、リスィが悲しそうに目を伏せる。

 ギフトは、最後の最後は自分で選ぶものだ。だが、それでも自分の意志で選べない者もいる。

 ヒラクはそれを知っていたが、リスィにそれを言うのははばかられた。


「自分で選んだからこそ、後悔する事もあるさ」


 代わりに、そんなことを呟く。


 ヒラクにはチュルローヌがダスティを苦手とする気持ちも、ダスティが、自分のギフトを嫌う気持ちも分かってしまった。


 きっと自分は、彼にその辺りを見抜かれたのだ。

 そしてあまり光栄ではないことに、彼は自分を同類だと思っている。


 そんな風に考えていると、三度目。

 来るまでは流し続けるぞと脅しつけるようなせっかちな間隔で、もう一度スピーカーからダスティを呼ぶ声が響く。


 その声に不機嫌になるダスティを想像し、少しだけ気分を上向きに戻しながらも、ヒラクは自分の寮へと戻ったのだった。


 薬瓶

 ポーションを入れるための瓶には様々な種類がある。

 重要なポーションを入れる長期保存用、前衛が持つ為の頑丈な保護用、蓋を開けると割れやすくなる投擲用などである。

 大別された用途によって瓶の形を変えるのが通例だが、例によって徹底はされておらずきちんと見分けたい場合は鑑定の出番となる。


 通信

 現在イルセリアでは魔法を使ったもの(ダスティが持っていたもの)と、発明のギフトによって生み出されたもの(スピーカーなど)に通信方法のシェアが二分されている。

 どちらにも欠点利点があるが、開発所が違うのでお互いがお互いに対してネガティブキャンペーンを行っている。

 なおスピーカーによるアナウンスは迷宮鉄道でも行われていたが、リスィは列車と景色に夢中で気にしていなかった。

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「し、死んだ人を生き返せるんですか?」 「……無理だ。死者を生き返すなんて、そんなギフトは存在しない。一見死んだように見える奴までなら、俺が何とかするがな」 生き返す✕→生き返らせる。 自分のスキル…
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