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太陽王の世界 ―異世―  作者: 檀徒
◆第二章◆
22/29

第19話 魔法の質問をしたら理科の授業になりました

ちょっと間が空いてしまいましたが、無事生きております。

ちょっと内容が難しいかも? と思った方はななめ読みで大丈夫です!

 トレイスさんは、今日は学校へ行って講師をする予定が無いということで家で奥さんとのんびりしていたところをサヤカちゃんに捕まり、屋敷へと連れてこられてきてしまったようだ。でもなぜか嬉しそうなのはトレイスさんの奥さんがとっても怖……、いやいや、それ以上は考えないようにしよう。

 この人はどこからどうみても優男なんだろうなと思える。家族想いのいい旦那さんだとしみじみ感じる風体だ。表情が常に笑顔だからだろうか? 同じように、サヤカちゃんにも親戚の子供とか姪っ子のように接しているのを見ると、トレイスさんの性格から来るものなのかサヤカちゃんの妹属性が影響しているのかがよく分からなくなる。

「えーと、錚々(そうそう)たるご歴々の皆さんがいらっしゃる場にお邪魔して、なんだか申し訳ないんですが」

「いやいや良いのじゃ。加護の仕組みについてミコト殿に説明できるのは詠唱学講師のトレイス殿しかおらんじゃろうし、ぜひ頼むぞ」

「いつもすまぬ、トレイス殿。よろしく頼む」

「い、いえ! そんな頭を下げていただくものでは! それに、加護の仕組みを真に理解するのは至難の業ですよ?」

「私からもよろしくお願いしますよ、トレイスさん!」

 サヤカちゃんは目をクリクリさせてぴょこんと頭を下げる。ああもう抱きしめたいこの小動物。って、いかんいかん。抱きしめたら犯罪犯罪。

「漠然とした概念はミコト殿にもあるようだから大丈夫だろう。オレも理解が漠然としていたので、この際だから詳しく理解していきたいものだ」

「そうですか。それならばご理解いただけるところまで進められるかもしれませんね。ではまず、改めて自己紹介から」

「自己紹介っすか? 詠唱学講師ってことじゃなくて?」

 トレイスさんが突然改まったためかフォルクスさんも怪訝な顔をしている。自己紹介の必要なんてないんじゃないかと思っていたら、そのあと飛び出した言葉に、やはり自己紹介の必要性があったのだと納得してしまった。


「私は、生まれたところがどこなのか分かりません。8年以上前の記憶が無いんです。それで8年前に地王家の候補者として推挙されましたが、試験には落ちまして……。ただ、加護の概念を理解していたようなので試験後に火王様から詠唱学の講師にお奨めいただいたんです」

「なるほど、そういうことじゃったか」

 マイカ姫がしたり顔で頷いているが、超エラそうだ。最近寝床を共にしていて感覚がマヒしてきてしまっているが、この子は中央王家のお姫様だからやっぱりエラいんだよなあ。

「火王様のとりなしで中央王家の王様から許可をいただき、中央王家の書物倉庫にある加護理論に関係する書物を読ませていただきましたが、読んで良いものは一部でした。それでも詠唱に関してのことはだいたい理解でき、子供たちへ教えることができるようになったんです」

「ふむ、それで詳しいのか。理解した」

「叔父上が連れてきたって聞いてただけだったけど、そんなことがあったのね。もしかしてトレイスさんもアマテラスから来たの?」

「いいや、サヤカ。記憶が無いのでそれも分からないんだよ。私の出自はここまでにして、それでは本題に入りましょう。まずはこの世の物質についてを理解しなければなりません。ミコト様、私の掌の中にある石を見てください」

「ふむ、なんの変哲もない石だ」

 ポケットの中に石を入れていたのか。つまりいつもこの説明は学校で子供たちにもするのだろうな。

「そうです。この石をどんどん分解していくと、最後はそれ以上小さくできなくなる最小単位があるのです」

「ふむ。ゲンシカクだな。最小単位だが、それが最小ではない」

「ゲンシカク? それはアマテラスの言葉ですね。ということは、その概念はお持ちでしたか。これをこちらでは原子と呼びます。ミコト様がおっしゃる通り、この原子は、実はさらに小さなもので構成されているのです」

「……」

 マイカ姫は口を開けて聞いているが、これは分かってないな。分からないでいても加護は使えるってことなのか。でももし分かったら? 何が起きるか楽しみだな。

「ヨウシとチュウセイシ、デンシだな。しかしなぜそこから始まるのだ」

「それもそちらの物理概念にありましたか! 物理学の体系はお互い同じようですね。そう、陽子の周りを電子が飛び回っていますが、原子番号の大きな物質は中性子が陽子を結び付けることで、陽子の数が増えていきます」

「うむ分かるぞ。先へ進めてくれ」

「す、すまぬが」

「どうしたっすかマイカ様」

「もう妾は限界じゃ。陽子から先の意味が分からぬわ」

「俺たちは聞き流すしかないっすね。無理すると頭から蒸気が出るっすよ?」

「そうじゃな……」

「じゃあ絵を描きましょう。この床に石で傷をつけますが、いいですか?」

「良いぞ。それで妾にも分かるようになるのか?」

「ええ、分かりますよ! 真理は単純なんです。加護はこの物理の最終形態ですから」


 え? この加護が、魔法が物理の最終形態と言ったのか? 科学と魔法は水と油じゃないのか? いったいどういうことだかよく分からないで加護の質問をしたら、物理学を教えてもらうハメになるとはまさか夢にも思わなかった。

 トレイスさんは地面に大きな円を描いている。その中に、これは陽子だろうと思しき円と、電子軌道らしきものを描いている。うん、これは中学生の理科で習う原子の仕組みだな。陽子は2つ、中性子も2つ。電子も2つ。スイヘーリーベ、ボクノフネ。いやあ懐かしい。つまりこの陽子が2つの原子はヘリウムだ。「ボ」ってなんだったっけなあ、まあいいや。

「これは単純に原子を描いた図です。これが陽子、これが中性子で、周りを飛んでいる小さいものが電子です。地、水、風、火はそれぞれ、固体、液体、気体、熱体という原子の状態それぞれにまず適応されます」

「なるほど、固体、液体、気体は理解できる。熱体とはプラズマのことか?」

「プラズマ? 陽子や電子が遊離した状態のことを言います。太陽はこの状態にありますね。宇宙の99%の物質はこの熱体の状態にあります。惑星の地面や海のように、固体や液体になっているものはほんのわずかだということですね」

「なるほど、理解した。それが4属性なのだな」

「ふむふむ! 妾にも分かったぞ。トレイス、お主説明がうまいな」

「お褒めいただきありがたき幸せです。そしてここからが難しいのですが、裏詠唱は、地は重力、水は中間力、風は雷磁気力、火は核力の4つから生み出される力です。これはこの原子の絵を、さらに細かく見ていかないと分かりません」

「待て、その4つの力はまさかソリュウシの相互作用……」

 分かる分かる。その4つの力は有名だもんな。ノーベル物理学賞を取った日本人は、たしかそのへんの理論が認められたんだよな。

「ミコト様、そのとおりです。陽子などはさらに小さな素粒子で構成されています。その相互作用が生み出す力こそが、裏詠唱の源なのです」

 トレイスさんは、陽子の内側に円を3つ描き出した。これはクォークのことだろうな。原子を細分化した陽子を、さらに細分化したクォークだ。

「なるほど、陽子はその内側に3つの物体があるのか?」

「じつはこの3つはそれぞれ違う種類のもので、一つ入れ替わると中性子になってしまうんです。このあたりは水の中間力、火の核力が関わっています。電子が離れないでいるのは風の雷磁気力、そしてすべての物体に影響を及ぼす重力があります。その結果、火は振動を制御することによる熱の上下動を。水は分子結合の変更による生命体の疲労回復を。風は雷波を制御することによる意思の伝達を。地は重力子を制御することによる重力変動を生み出します」

「うむ。最後の裏詠唱の結果は分かるのだが、4つの素粒子相互作用からのつながりが抜けているぞ」

「え? ミコさん今の説明、意味が分かったの!?」

「えっ? ツッコミを入れられるほど理解できたんすか!? すげえな……」

「鋭いですね、さすがミコト様。実はこの素粒子はさらに、紐のようなものでできていましてね……」

 そう言うと、トレイスさんがクォークらしき円の中に、無限を意味するマークを書き入れた。それって超ひも理論とかいうやつだろ。それか。それが魔法の源か! 

「これが、小さく折りたたまれているんです。折りたたみを戻すと11次元ほどあるんですが、折りたたまれていない世界は私たちに感じられる空間と、時間だけです」

 つまりその見えない世界から力を取り出すから、とんでもないエネルギーが出るんだな。そしてそれは原子の状態や素粒子の仕組みと連動した力になる。それが4属性なのか。なるほど、分かったぞ! 大雑把にだけど! でも11次元ってなんだろう。まあいいや、細かいのは放置!

「よし理解した!」

「ええええええ!?」

「なにぃッ!?」

「そんな説明で分かるんすか!?」

「やはり太陽王、全てを理解することが可能なのだな……」

「ええと、折りたたまれた次元については非常に概念的なものでしかありませんので、理解するのは大変難しいことなのですが。これで加護の基礎については半分ほど説明が終わりました。発動に関しては生物学を基礎から……あっ、これは!?」

「ん?」

 これはって、何ですかトレイスさん? なんか体が熱いけど部屋が暑いかな?

「ミコさん、加護流が!」

「信じられん……」

「自分には加護流が見えないから分からないんすけど、何が起きてるっすか?」

「たった今、ミコさんの加護流が瞬間的に地面とつながってたんですよ……。もう戻っちゃったんですけど」

 加護が地面とつながったらいけないのだろうか? なんだ? 何が起きた? まあ、よく理解できないことは放っておいても問題ないことがほとんどだ。さあ続きを教えてもらおうかトレイスさん!

「それよりも続きだトレイス殿」

「それよりもって……。ミコト様、大地との交信を成し遂げたのにどうでもいい風なのは、それが当然のことだからですかね……。末恐ろしい方だ」





 ――イギリス・ソールズベリー近郊の平原にあるストーン・ヘンジ。巨石が円陣状に組み上げられた祭壇のように見える遺跡だが、その使用目的は長い間不明だった。その謎を明かしたのは蒼然、そして蒼然の妻である大和悠香だったことは、徹と江里も長い歴史の説明の後で聞いたことだった。

「さて、春日あらため火神かがみ徹君。そして山神江里君。覚悟はいいかい~?」

 春日徹は、母方の姓である火神へと姓を変更していた。徹は、生まれたすぐに素質を見抜かれた当初から目的を伏せられ、尊とともに成長してきたのだ。それは江里も同じだった。

「ええ、俺たちは大丈夫です教授。それより……」

「そうだね。水神香みなかみかおる君、それから嵐神哲弥らんがみてつや君も、いいね~?」

「……四神家に生まれたからにはっ! だだだ、大丈夫デス!」

「自分も、問題ありませんネ。ただ少々、驚いてはいます。まさか4人とも、最初からこうなる予定だったとはネ」

 緩やかな春風が4人の頬へと当たる。その周囲ではものものしい機械群がストーン・ヘンジの巨石を取り巻き、低い稼働音を響かせていた。

内容がトビすぎてて意味わかんねーってのを

マイカ姫に代弁していただきましたwwww

とりあえず、魔法には最新物理学な仕組みがあるんだよってことで。

最新物理学ってマジカルなんすよ! マジっすよ!

間章をじっくり読んだ方には理解できるかも!?

でもあの間章は「おまけ」みたいなものですので、

完結時に読んだらやっと意味が分かるようなものですので・・・w


参考文献

プラトン(著)、 中澤務(訳)『プロタゴラス―あるソフィストとの対話』光文社古典新訳文庫

池田清彦(著)『構造主義科学論の冒険』講談社学術文庫

川合光(論)、木村祐介(論)、花田政範(論)『行列としての時空(最近の研究から)Spacetime as Matrices(Current Topics)』京都大学

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