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幕間―滅亡へのカウントダウン(2)

 この議事録は、合衆国大統領が就任時に確認するものとし、内容を公表してはならない。なお、出席者および大統領閣下が公表の意思を持った場合、生命の保障は無いものとする。


 1953年1月20日 不定期会議・議事録。

 ドワイト・アイゼンハワー大統領閣下の就任。トルーマン前大統領は懸命な説明を行うが、大統領閣下は大和家の存在について終始懐疑的。ミドリ氏からイデア理論の総合的な助言が届くも、オッペンハイマー博士へは伝達せず。ミドリ氏の年齢が若すぎることが大統領閣下の信用に影響。しばらく会議の開催を見合わせることが決定。


 1954年9月24日 不定期会議・議事録。

 ミドリ氏に長男誕生。アルバート・アインシュタイン博士によりソウゼンという名が贈られた。トルーマン前大統領の再度の説明に、大統領閣下は終始苦笑していた。


 1957年10月4日 緊急会議・議事録。

 大統領閣下が沈痛な面持ちで会議の開催をメンバーへ伝達して始まった。ソヴィエト連邦がスプートニク1号を人工衛星化することに成功したことについての緊急会議。宇宙航空技術は今のところソヴィエトが一歩先を進んでいることが判明。早急に対抗人工衛星の開発を進めることで決議。宇宙航空技術の総まとめを行なうこの会議の意義について、大統領閣下が改めて認識。

 ヴェガからの通信はいまだ傍受できず、月面到達の件も含めてこれらを解決させるためにもNACA・国家航空宇宙諮問委員会を次のステージへと発展させることを決議。ミドリ氏からの助言をプリンストン高等研究所へ伝達。

 ニューメキシコ州で多発する未確認飛行物体の目撃事件については、対処方法が見つからず。


 1958年2月2日 不定期会議・議事録。

 プリンストンから包括的なアイデアが生まれたとの報告。世界各地の物理学者と連携し、理論の構築を行う体制へと進行。日本の湯川秀樹博士が提唱した中間子理論が突破口となることが判明。同じく日本の南部陽一郎博士が助言内容を最も理解した。それでもイデア中間理論の突き詰めは、数年はかかるとのこと。

 未確認飛行物体目撃事件は都市伝説化するなどの対処が必要。見間違いであると科学的に説明するための内容はNACAの後継組織で開発する。


 1958年7月29日 不定期会議・議事録。

 本日、NACA・国家航空宇宙諮問委員会を発展解消し、NASA・合衆国航空宇宙局が発足したことについての報告。予算を膨大にすることで、このMJ―12委員会の目的とする研究を秘密裏に行うだけの枠ができることとなる。

 エアーズロック遺跡内の壁面にある模様が、カレンダーのようなものと判明。カレンダーの行数は24000行で、1行が1年という扱いであることが理解できたが、言語の解析は難航している。イエローストーン遺跡にはこのカレンダーは存在しない。


 1959年3月3日 緊急会議・議事録。

 未確認飛行物体フー・ファイターとの交信をマイクロ波にて達成。使用言語は古代日本語に似たアルタイ諸語族。交信内容の解析に時間を要する。


 1959年4月10日 不定期会議・議事録。

 ミドリ氏の助言により未確認飛行物体フー・ファイターとの交信を以後禁止とする。理由は相互不可抵触の条約が締結されているため。先の交信内容もその警告であった。グルーム・レイク空軍基地・エリア51に保存してあるフー・ファイターの機体と搭乗員の遺体は、同基地の中心部に定置し、別のフー・ファイターによる回収を促す。


 1959年4月22日 不定期会議・議事録。

 本日、エリア51に定置してあった機体と搭乗員の遺体が葉巻型フー・ファイターに回収された。リバース・エンジニアリングで得られた宇宙航空技術は、すべてエリア51で新規開発されたものとしてNASAへ引き渡される予定。


 1960年1月9日 不定期会議・議事録。

 月探査計画を公式的にNASAに指示することに決定。秘密予算枠では月探査を行うことが不可能なため。また、ソヴィエト連邦の宇宙開発も急激に進歩しているため。ソヴィエト連邦でもフー・ファイターを撃墜・回収していると思われるが、機体がどの程度の損傷率かによってその後の宇宙航空技術発展が左右されることになる。

 ヴェガ星系との通信はマイクロ波で行うべきではないかという提案がなされた。ミドリ氏の主張に沿ってフー・ファイターとヴェガ星系がともに同一文明から発展したことを考えると、使用周波数帯はマイクロ波よりエネルギーが高い可能性がある。大気によって減衰したマイクロ波をかろうじて捉えられれば、そこに通信が成立する。発送するエネルギーが高いため、電波望遠鏡の開発には時間が必要。

 コーネル大学のドレイク博士がウエストバージニア州のアメリカ国立電波天文台で開始する予定の、1.4ギガヘルツ帯観測「オズマ計画」完了後、2.8テラヘルツ帯のサブミリ・マイクロ波での受発信が可能な改修を行う。

 なお、ミドリ氏の主張どおりならば、12000年前当時の北極星がヴェガであるため、道標としてヴェガが選ばれた可能性が高い。同様の受発信を現在の北極星、ポラリスへも行なうことを決議。


 1961年1月20日 不定期会議・議事録。

 ジョン・F・ケネディ大統領閣下の就任。この委員会の存在を非常に驚かれていたが、ロズウェル事件について懐疑的に考えていたとのことで、すぐに納得された。MJ―12委員会へミドリ氏を招聘するという提案がなされたが、月面探索を行なうまではやはり保留することとなった。


 1961年4月12日 緊急会議・議事録。

 ソヴィエト連邦が有人宇宙飛行に成功。ソヴィエト連邦側のリバース・エンジニアリング技術はさほど高くはなく、保有するフー・ファイター機体も損傷の度合いが激しいという推測が立ったが、宇宙開発予算を膨大にしているため先を越されたと判断。NASAへの月探査計画の綿密な進行指示を、リンド・ジョンソン副大統領に行なわせるようにすることで決議。

 ミドリ氏の指定する月面の静かの海・サビーヌDクレーター地下に、赤外線撮影で大規模構造物らしきものを発見。像が鮮明でないため人工物かどうかの判断ができず。


 1961年5月18日 不定期会議・議事録。

 5月5日、マーキュリー計画で合衆国も有人飛行に成功。NASAにて、衛星軌道を行なう理論がほぼ完成。来週、5月25日に大統領閣下がNASA支援を表明することで決議。

 月探査計画は、以後アポロ計画と呼称することに決定。マーキュリー計画とアポロ計画の間には、ジェミニ計画を挿入して有人飛行技術、ドッキング技術などを実証実験する。


 1961年11月10日 不定期会議・議事録。

 ヴェガ星系へのサブミリ波送受信体制が整う。本年度中に900ギガヘルツへ到達、以後1.6テラヘルツ、2.8テラヘルツへ順次拡張予定。2.8テラヘルツへの到達は1963年予定。以後、この電波送受信計画をオリヒメ計画と名づける。


 1962年10月1日 緊急会議・議事録。

 キューバにて不穏な動き。ソヴィエト連邦が核兵器を配備している可能性。U2偵察機を緊急的に向かわせることで決議。


 1962年10月14日 緊急会議・議事録。

 トルーマン元大統領、アイゼンハワー前大統領を招聘しての緊急会議。キューバにてソヴィエト連邦側の核ミサイルサイロを発見。以後この案件はMJ―12委員会を離れ、危機管理委員会へと移管する。危機管理委員会へはミドリ氏が招聘され、ソヴィエト連邦側との連絡を務める。


 1962年10月28日 緊急会議・議事録。

 キューバの不安定な状況を脱出。以後はソヴィエト連邦の首脳とのホットラインを接続するよう、ミドリ氏が危機管理委員会内で提案。早急なホットラインの開設を決議。また、トルコに配備したジュピターミサイルは撤去する方向。ミドリ氏の機転により、第三次世界大戦への突入は避けられた。


 1963年10月29日 緊急会議・議事録。

 オリヒメ計画の電波送受信体制が2.8テラヘルツへ到達。減衰したサブミリ波受信に成功。ただし、波形はかなり乱れており、有意な信号形態としては読み取れず。さらなる高周波への移行と、ノイズ除去技術が必要と判断。ドルビー社へノイズ除去技術の開発を指示することで決議。

 電波を受信できたことで、大和家の主張はほぼ追認できる状態となったことについて、大統領閣下がこれらすべてを公表すべきではないかと提案したが、出席者全員が否決。否決の理由は、大和家の主張が真実だとすると2012年12月に起こる事象についても公表せざるを得なくなり、パニックによって世界経済が崩壊するため。


 1963年11月19日 緊急会議・議事録。

 大統領閣下不在で会議を開催。昨日大統領閣下は、近日中に重大な発表を行なうつもりだと報道記者へ明言しており、早急な対処が必要。大統領閣下が公表の意思を持ったため、当初の規程により暗殺することで決議。


 1963年11月24日 緊急会議・議事録。

 11月22日、ダラスにてジョン・F・ケネディ大統領閣下の暗殺に成功。急遽リンド・ジョンソン副大統領が臨時大統領となるため、招聘して会議を行なう。隠蔽工作はすべて順調に行なわれる予定。ジョンソン副大統領は心労と衝撃的な内容により会議室内で倒れたが、すぐに回復したため会議を継続した。

 なお、以後もこの会議の内容を公表してはならない。公表の意思を持った者は、たとえ大統領であっても生命の保障は無い。


 1964年8月8日 不定期会議・議事録。

 プリンストン高等研究所からのアイデア提供を受けたマレー・ゲルマン博士などがクォーク理論を提唱。これによって湯川秀樹博士の中間子理論が補強され、素粒子間の強い相互作用についての説明が完成。コーネル大学のスティーブン・ワインバーグ博士などが提唱している電磁気力・弱力統一理論、クォーク強相互作用理論、一般相対性理論から派生した重力量子理論により、電磁気力、弱い力、強い力、重力と、4つの力が出揃った。この4つの力が、ミドリ氏の提唱するイデア理論の基礎となる4元素である。この上層に第5要素のイデアが存在し、ロイヤルタッチ時に感じ取れる威圧感、畏敬感はこの第5要素によるもの。

 この状況下で南部陽一郎博士は対称性の破れを発表。重力理論を補強することでストリング理論へ発展する。ミドリ氏のロイヤルタッチを物理学的に証明するには、これらの理論を統一する必要性がある。今後公表される理論名は、イデア理論と呼称すると旧来のアリストテレス理論と誤解されて弊害があるため、便宜的にMagicのMを取ってM理論と呼称することを決定。南部陽一郎博士のストリング理論がその中心的構成となる可能性が高い。


 1966年11月11日 不定期会議・議事録。

 エアーズロック・カレンダーの内容を一部解明。これが預言の一種であると判明したのは、24000行のうち12000行から先がほとんど空白となっており、23000行から先にいくつかの歴史的事件が起こる年と一致して、書き込みがあるため。

 最後の行には終末を意味する言葉が刻み込まれているが、カレンダーの終末なのか、それ以外の意味を持つのかが不明。

 カレンダーによると、人類は24000年前と12000年前の2回、他星系へ移動を行なっている。フー・ファイターの技術は12000年前の文明のものと推測される。


 1967年3月10日 不定期会議・議事録。

 アポロ計画は着陸船の建造が難航。追加支援を決定。M理論はまだ全体像が見えてこず、魔法の利用については現段階では到達不可能な目標と感じる。2012年12月までにM理論を完成させ、魔法利用を可能な状況としなければならない。場合によってはそれよりも速い段階で必要となる。


 1967年6月24日 不定期会議・議事録

 ミドリ氏の協力を得て、ミドリ氏と長男ソウゼンの肝細胞を採取。初見でミトコンドリア数の異常が確認できた。ミトコンドリア数はミドリ氏が17000個、長男ソウゼンが9500個。常人が5000個であることから、ミトコンドリア数がロイヤルタッチへ影響を及ぼしている可能性が高い。長男ソウゼンはミドリ氏よりも数値が低いが、それでも常人の2倍。


 ――議事記録者:アレクセイ・ソクラテス――





 1967年9月25日 不定期会議・議事録。

 9月19日、議事記録者アレクセイ・ソクラテスが66歳で死去。後任は長男のエキッソス・ソクラテス、43歳。


 1968年12月25日 不定期会議・議事録。

 アポロ8号が、11号の着陸予定地点上空を通過時に赤外線撮影。緻密な構造物が存在することが判明。アポロ11号の乗組員の選定完了。

 オリヒメ計画でヴェガの通信内容の解析に成功。内容は、現在ヤマト暦11931年、アマテラスからの王を待つというもの。25.3光年離れているため、ヤマト暦とされる年数に25を足すと、2012年が12000年ちょうどとなることからも大和家の主張が追認された。

 また、七夕伝説はこのヴェガとの関係がその元となっていると思われ、本来の彦星は地球または太陽であると思われる。アマテラスという呼称については日本の神話に同名の太陽神がおり、また地球を指すEarth、およびTerraの名称がアマテラスから派生している可能性が高いことが判明。

 これらを考慮して、キューバ危機の際に設置した危機管理委員会を再構成してミドリ氏が議長を務める連合会議を設置することが提案される。


 1969年4月1日 不定期会議・議事録。

 CMA・カタストロフィ対策連合会議を設置。議長はミドリ氏となる。当初の参加国は西側諸国のみ。ソヴィエト連邦からも良好な返答があり、準備が整い次第参加予定。


 1969年7月20日 不定期会議・議事録。

 アポロ11号が月面着陸に成功。ニール・オールデン・アームストロング船長、バズ・オルドリン宇宙飛行士が月面歩行。着陸は予定地点から僅かに南西へはずれた、静かの海領域内、サビーヌDクレーター南西20キロ地点。着陸地点から北東12キロほど離れたところに、目標としていた地下構造物の露出点と見られる突起物があるが、そこまで移動することは不可能と判断。遺跡の確たる証拠は発見できず。12号以降に期待。


 1969年7月21日 緊急会議・議事録。

 アームストロング船長が砂礫の下に人工物を発見。縦20センチ強、横15センチ程度、厚み3センチ程度で何かの板のようだが、アームストロング船長は明らかな人工物であると瞬時に判断。その人工物を発見したさらに下には、建築物の一部であるかのような構造物を発見。これ以上の船外活動は生命維持装置の動きにくさを考慮すると発掘が不可能であるという判断をするしかない。発見した人工物は回収後、グルームレイク空軍基地・エリア51にて解析される予定。

 これにより大和家の主張はすべて追認され、CMAに国家規模で協力することを決議。以後、アメリカ合衆国はCMAと歩調をあわせ、2012年のカタストロフィ対策を迅速かつ緻密に行なう。

 また、本日以降、MJ―12委員会はCMA・カタストロフィ対策連合会議に吸収される。


 ――議事記録者:エキッソス・ソクラテス――

読者様のための年表企画第二段です!

年表はこれで終わりです。

自分用に作ったこの小説の裏設定集を肉付けしただけなんですが

これはこれで面白いので投稿してみようと、

ちゃんと取材して年代の裏付けをしたら、

自分の理解がひどくてびっくり。

危うくNASAに質問しようとするところでしたが

変な質問でも答えてくれるんでしょーか?w


まだまだ年代、日時に間違いがたくさんあると思いますが

これ以上は調べ切れない状態です……。


物理用語(少し砕いた表現にしてます)は難しいと思いますので、読み飛ばしてオッケーデス。

理論とか言われてもよく分からないな~、という方でも

存分にこの小説を楽しめるようにしますので!

もちろん、理論を理解している人には物足りなかったり、

なんだこりゃ、全然違うぞってなるかもしれませんが(´Д`;)


フィクションですのでご容赦ください。


SFジャンルは面白い小説がいっぱいありますよ!

是非SFジャンルを開拓して、ポイントを入れてみてください!



参考文献

川合光(論)『弦理論による統一へのアプローチ (特集 量子論と相対論―二つの理論の統一にむけて)』京都大学

川合光(論)『格子ゲージ理論Lattic Gauge Theory』京都大学

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