幕間―滅亡へのカウントダウン(1)
この議事録は、合衆国大統領が就任時に確認するものとし、内容を公表してはならない。なお、出席者および大統領閣下が公表の意思を持った場合、生命の保障は無いものとする。
1945年8月11日 緊急会議・議事録。
ソヴィエト連邦参戦から2日、大日本帝国からの無条件降伏についての許諾文が届く。その内容についての緊急審議。
国体護持の件:そのままとする。
理由1:戦闘状態終結後の国民意識に敵意を含ませないようにするため。
理由2:後述の大和家の件にて勘案。
大和家の件:要調査、その間は保留とする。
理由1:主張されている内容が第一次大戦中の、発表していない国家機密を含むため。
理由2:一部の考古学者が主張していた内容と一致するため。
理由3:大統領閣下からの強い口調による調査・分割占領保留命令のため。
上記2件を勘案し、大日本帝国の文化保護を徹底する。
連合国軍最高司令官総司令部GHQについては、計画通り丸の内地区にあるオフィスビルを接収し、その中の第一生命館へ設置。8月14日付けでマッカーサー元帥を最高司令官に任命する。
今後のスケジュールについては8月13日に大日本帝国へ最終連絡を行い、大和家の件を保留することで妥結した場合、翌8月14日までに最終降伏許諾を行うよう勧告。
理由3について。4月12日に急死したフランクリン・ルーズベルト前大統領に替わってハリー・トルーマン副大統領から昇任された経緯を明かされる。大統領閣下はこれが決まっていたことだと発言。真偽は不明。
この議事録は国立公文書管理局にも保存せず、次代の大統領との認識共有の為に保存され、ホワイトハウス内で取り扱う極秘情報とする。出席者は大統領閣下と議事記録者以外、基本として記録しない。
1945年8月14日 緊急会議・議事録。
大日本帝国降伏受諾。以後、この会議は大和家に関する会議とし、大日本帝国の政治統括については別途会議を行う。
受諾文とは別途、大和家からのメッセージが到着。大日本帝国はあくまで邪馬台国とは別国家であり、邪馬台国は属人的で現在国土の無い国家であるとのこと。邪馬台国はアメリカ合衆国へ宣戦布告しておらず、占領の対象とはならないという通告文。
この内容に対する返答は無期限で保留とする。
1945年8月30日 不定期会議・議事録。
マッカーサー最高司令官が厚木飛行場にて大和家当主と会談した報告についての不定期会議。
1:主張通り、王としての威厳に満ちていた。
2:純粋なロイヤルタッチに遭遇。マッカーサー最高司令官は耐え切れず跪いた。
3:三種の神器が国内考古学者の研究以上の状態を保っていた。
4:月の石、火星の石と主張される岩石が存在した。なお、全量の持ち出しはできないが一部はロスアラモス国立研究所にて分析予定とする。
1945年9月26日 不定期会議・議事録。
分析中の月の石および火星の石の欠片についての一次報告。対象岩石は、地球上に同様の鉱物が存在しないことを確認。それぞれ、ルナマイト、マーサマイトと仮命名した。詳細な分析結果は後日となる。ソヴィエト連邦側との連絡は、重要機密事項以外について、ある程度行うことを決議。
1945年10月2日 不定期会議・議事録。
イエローストーン国立公園、インド、オーストラリアの指定された地点で古代遺跡を発見。なおオーストラリアの遺跡はエアーズロック内にあり、大和家の記録との照合を行った。三代目の時分に一旦発掘された際、オパール的発光色の二酸化珪素結晶が雑に回収されたことにより、台座上に結晶が残されていたというところまで一致。火星との政治的闘争が発生し、回収を急いでいたのが結晶残置の理由。また、台座の裏には、五芒星が刻まれていた。
これらはすべて大和家にて捏造した可能性を含め、長期調査へと入る。年代測定は12月に終了予定。インドで発見された遺跡は英国にて調査予定。
1945年12月1日 不定期会議・議事録。
大和家より、12月5日に浮動異界点が発生するという予測が得られた。雷撃機、観測機を派遣することを決定。
1945年12月6日 緊急会議・議事録。
12月5日に海軍アヴェンジャー雷撃機5機が大和家に指定されたバミューダ浮動異界点に到達したことの報告。
地球軌道、および惑星配列から推測される浮動異界点の現出予想日時から遅れること12分後、肉眼では確認不可能な電磁波体をレーダーにて確認。該当空域へと雷撃機を編隊飛行で向かう。到達直後、観測機からの肉眼観測上で半透明化し、やがて消失。訓練生の最後の通信内容は、存在しない大陸についての発見報告だった。なお、その時点では観測機は洋上を飛行し続けていたため、眼下に島状陸地は存在せず。
当該実験が民間無線通信士に傍受されていたため、同型機を近隣海域へと水没させた。後日、これを発見させることで消失をカモフラージュする予定。
1945年12月16日 不定期会議・議事録。
古代遺跡の年代測定終了。遺跡の主要構造が作られた年代は20000~30000年前で、大和家の主張と一致。
ヴェガ星系への電波発信を行うための電波望遠鏡を複数設置することを決定。送信開始は1946年8月予定。順次大型の電波望遠鏡を開発し、送信電波の増強を行う。
1946年1月11日 不定期会議・議事録。
大和家の主張について、今後は月の指定地点への到達および遺跡発見後に保留を解除するものとする。なお、当国とソヴィエト連邦のうち、先に到達したものが分析権利を得ることを打診予定。また、現在の技術力では月面への到達は不可能。国家航空宇宙諮問委員会へは目的を伏せて月面到達計画を企画・立案させる。
1946年8月24日 不定期会議・議事録。
電波発信開始の報告。なお、受信も同時に行うが電波望遠鏡の技術不足による受信能力の限界のため、ヴェガ星系からの通信は受信できず。
1946年12月12日 不定期会議・議事録。
フリーメイソンの活動についての会議。表向きは特に国政へ害を及ぼすものではないとしながらも、大和家との繋がりについては疑わしいという報告があった。話が進まないうちに大統領閣下が会議の解散を命じたため、この議題は終了。
1947年6月14日 緊急会議・議事録。
メキシコ湾上空にて第八航空軍の戦闘機P47サンダーボルト6機がフー・ファイター1機と遭遇。警告に反応しないため攻撃を開始したところ、激しい空中戦に発展。初期戦闘を行った6機の他、緊急発進したすべての戦闘機、合計38台すべてが撃墜された。なお、戦闘空域から脱出したフー・ファイターは、機体に損傷を負っておりまもなくニューメキシコ州の農村地帯に墜落した。
フー・ファイターの機体回収計画を大規模かつ隠密に行うことを決定。墜落した機体は現在墜落予想地点で捜索中。
1947年6月15日 緊急会議・議事録。
6月14日に発生したメキシコ湾上およびニューメキシコ州でのフー・ファイター事件について、緊急会議を継続。
断片的な情報ではあるが第一次世界大戦中に目撃されたフー・ファイターと同型機であることを推測。機体の損傷が著しく、使用されているテクノロジーは不明。機体と搭乗員の遺体は一旦ロズウェル陸軍飛行場へ回収した後、ロスアラモス国立研究所に移送される予定。
1947年6月29日 不定期会議・議事録。
フー・ファイター機体内の微粒子の含有鉱物がマーサマイトと一致。墜落地点にマーサマイトは無いため、マーサマイトの存在する地域から飛来したと断定。
1947年7月8日 緊急会議・議事録。
ロズウェル陸軍飛行場がプレスリリースにて発表した内容についての緊急会議。
空飛ぶ円盤を回収したという内容を真面目に発表してしまった者についてはしかるべき処分を行う。また、信用できる航空軍司令官から至急、訂正リリースを流すことを決定。
以後は情報の漏洩を防ぐ為、ネバダ州に建設予定のグルーム・レイク空軍基地で解析を行う。基地建設完了後、速やかに対象物を移送する。
1947年7月11日 不定期会議・議事録。
プリンストン高等研究所にロバート・オッペンハイマー博士を配置決定。アルバート・アインシュタイン博士とともにイデア理論の完成に向けて始動。アインシュタイン博士によると、イデア理論は一般相対性理論を包括するものであるが、数段階上の理論であるため中間理論を発見することに苦労するだろうとのこと。
フー・ファイター機体についてはリバース・エンジニアリングを目的とした分解を開始。技術水準が異常に発達しており、理解できない機構が多いとのこと。
1949年1月21日 不定期会議・議事録。
ミドリ・ミコト・ヤマト氏がトルーマン大統領閣下の二期目執務開始を祝うためワシントンを訪問。大統領閣下も含めた会議出席者全員がロイヤルタッチの現実を知り、床に膝を落とした。ミドリ氏は当国とソヴィエト連邦の対立に遺憾を表明。重ねて、2012年12月の対処で、当国へ協力を要請。
当国は公式的には協力できないと伝達、ただし隠密に協力するためには、確たる証拠である月面遺跡を発見できるだけの科学技術力が必要で、フー・ファイター機体からリバース・エンジニアリングで得られた宇宙航空技術力が一定の水準へ到達するまで不可能という見解も大統領閣下が述べた。
ミドリ氏は明日以降、ロスアラモス国立研究所およびプリンストン高等研究所を訪問して帰国する予定。
1949年1月25日 不定期会議・議事録。
アルバート・アインシュタイン博士がミドリ氏と対面したことについての報告。アインシュタイン博士はロイヤルタッチが、未知の素粒子が関係していると直感的に理解。電磁気力、重力などの各力の延長線上に存在する、「見えない力」がその本質であるとした。
――議事記録者:アレクセイ・ソクラテス――
本当にたくさんのご評価、お気に入り機能の登録、ありがとうございます!
ポイントをいただいた皆様のために予定を少し変更して、
取材活動本格出動前に一発だけ予約投稿!
第一章にちらっと出てきた歴史の補足的なものです。
核心的なものもありますがw
どうやら、尊くんのお爺さんの頃の話ですね。
なにやらきな臭くなってまいりました(´Д`;)
内容を見てピンと来る方も、
何これ? っていう方もいると思いますが
あれもこれも、ぜーんぶ陰謀でしたっていうことに(゜∀゜)
念のため言っておきますが、
特にノンフィクションであるという記述が小説内に無いかぎり、
その小説はすべてフィクションです。
実在の国家・団体・人物等とは
何の関係もありませんです(´∀`*)