ボン
掲載日:2026/08/07
ボンと呼ばれた男がいた。かわいそうな男だ。
ボン。
ボンと呼ばれた男がいた。どういう意味かは不明だ。ただ良い意味ではない。彼はかわいそうな男だった。幼い時父親が亡くなった。ボンの母親と祖父母はたいそうボンをかわいそうだと思った。かわいそうな子だ。母親はボンがかわいそうでならない。だから父親の葬儀のあとから、ボンを背負って学校に送っていった。来る日も来る日もかわいそうなボンを背いっぱいの愛情で母親はボンを背中に負ぶって学校に送った。母親より大きくなりそれでも母親はボンを負ぶった。その結果、見事な三文安のボンが出来上がった。中学生になり母親の送り迎えはなくなった。そしてますます三文安が光った。なぜかわいそう、では親が負ぶって学校に行くことになるのかわからない。やがて祖父母が死に、母親の手には負えなくなった。こんなはずじゃなかった。母親は困惑した。それでも戦後の結婚難の時代、嫁はきた。他人に騙され金品を脅し取られ、そして、いつか母親も死んだ。嫁は同じ家に住み、他人のように暮らした。孤独に生きた。そんなボンだった。
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