第9話「ロミオ帰還(物理)」
追放三日目。
帰ってきた。
本当に帰ってきた。
「ジュリエット殿ぉぉぉ! 武者修行は十分にごわすぅぅぅ!」
ヴェローナの街門が、蹴り飛ばされた。
門番が吹き飛んだ。城壁の上の見張りが転落した(下の茂みに落ちたので無事)。
大剣を担いだロミオが、朝日を背に仁王立ちしていた。
追放令を完全に無視している。
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「ロミオ! 追放って三日で終わるものじゃないの!」
街門まで走って出迎えた私に、ロミオは満面の笑みで応えた。
「武者修行が済んだゆえ問題なか! さぁ、一緒に両家を平定するでごわす!」
「問題しかないわよ! 大公の命令を無視してるの!」
「大公殿には後で詫びればよか」
「詫びて済む問題じゃ——」
「チェストで済ませるでごわす」
「大公にチェストしたら国家反逆罪よ!!」
もう原作の展開と全然違うルートに入っている。正規ルートに戻す方法が分からない。
というか、正規ルートに戻す必要があるのだろうか。正規ルートは心中エンドだ。正規ルートから逸脱しているということは——バッドエンドから遠ざかっているということだ。たぶん。
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ロレンス神父の教会に駆け込んだ。
「神父様! ロミオが帰ってきました!」
「三日か。……本当に三日で戻ってきたのか」
「はい。門を蹴り飛ばして」
神父が大瓶の胃薬を棚から出した。
「ジュリエット嬢。ここはジュリエットに仮死の薬を——」
「駄目です。その話は前回却下しました」
「分かっている。分かっているが、一応提案はしておきたかった」
ロミオが教会の扉を——今度は蹴らずに——開けて入ってきた。善処している。
「神父殿! 久しいな!」
「三日だ。三日しか経っておらぬ」
「おいどん、武者修行で一段と強くなったでごわす! さぁ、両家の遺恨を終わらせるでごわすよ!」
神父が私を見た。「止められるのか」という目。
私は首を横に振った。
神父は胃薬をもう一錠飲んだ。
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「ロミオ。一つ確認させて」
「なんにごわす」
「両家を平定するって、具体的にどうやるの」
「簡単にごわす。キャピュレットとモンタギュー、両家の親父殿のところへ行って——」
「行って?」
「チェストする」
知ってた。
「却下」
「なぜにごわす!?」
「暴力で解決しないで」
「暴力ではなか! チェストにごわす!」
「同じよ!」
でも——止められない。
この人を止める方法は、この数日で一つも見つかっていない。
だったら——方向を変えるしかない。
「ロミオ。両家のところに行くのはいい。でも、一つだけ約束して」
「申せ」
「殺さないで」
「当然にごわす。峰打ちにするでごわす」
峰打ち。全身骨折のやつだ。
でも、死なない。死なないなら——もう、それでいい。
基準がおかしくなっている。完全に。でも、この5日間を生き延びるために必要な妥協だ。
「……分かったわ。行きましょう」
「おお! ジュリエット殿! それでこそおいどんの妻にごわす!」
「妻というより、被害制限担当よ」
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作戦会議の結果——
ロミオの要望:両家に正面からカチコミ。
私の条件:殺さない。壊しすぎない。私の合図があるまで突撃しない。
神父の要望:胃薬の補充。
これで、最終決戦が始まる。
> 心中バッドエンド:ルート消滅(もはや原作の面影なし)
> 新ルート:両家強制和解ルート
> 第一カチコミ目標:キャピュレット家
> 第二カチコミ目標:モンタギュー家
> ロレンス神父の胃薬消費:3瓶目




