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婚約と古文書が導く新たな迷宮3

「あーもう、わたくし毎日がエンタメ尽くしで笑いが止まりませんわ! と言いたいところですが、いやはや、公爵家というのは想像以上に慌ただしくて――ゴホン、いまのは別に泣き言じゃなくて事実ですのよ?」


そんなわけで、優雅なお姫様ライフなんて夢のまた夢。実際には朝から晩まで社交行事の準備に駆けずり回っておりますわ。わたくしとしては、優雅にティーカップを片手に「まったく、悪役令嬢ライフ最高ですわね」とか言ってみたかったのに、オイル切れ寸前の機械のようにがくがく動いているのが現状。なかでも今朝いちばん苦労したのは、執事ロータスの「この書類はお取り違えのないよう、厳重にご確認くださいませ」という冷静ヴォイス爆撃でした。古文書らしい分厚い束を前に、わたくし小娘扱いされているような気がしてちょっぴり悔しい。いや、わたくし古文書に見合う骨董品ではありませんし、専門家でもありませんから当然かもしれませんが!


「セレスティア様、大丈夫ですか? やつれてません?」

と、カイが覗き込んできた時には「むしろあなた、この肩コリと脚の疲れをどうにかしてくれませんか?」と叫びたくなりました。彼は彼で、薄汚れた書類の整理に手を貸そうとすると即ロータスの視線が突き刺さるらしく、早々にギブアップ。

「ごめん、近づけないんだ。ロータスさん、古文書のガードが固すぎてオレにはちょっと無理」

とのたまうものだから、わたくし一人で書類を抱えてコツコツ整理していたというわけ。ああもう、執事殿は“女主人の尊厳”なるものを荒ぶるほど重んじてるらしいですけど、こんなに過保護(?)なのも考えものですわね。コケた瞬間、本当にわたくしを抱きとめに飛んで来そうで逆に怖い。


そこでちょっと気晴らしを……と思いきや、

「セレスティア様、少しよろしいでしょうか?」

なんて声をかけてくるのが侍女ステラリア。お人形のように優雅に一礼してくれる姿を見ていると「本当にただの新人侍女?」とツッコミたくなるわ。

「んなに隠さなくても怪しいわよ、あなた」

――という心の声が聞こえる気がしますけど、表面上は笑顔で「はい、何かご用かしら?」などと言ってみせますの。

すると彼女は「実は、夜のパーティー用のドレスについて仕立て屋より連絡が参りましたが、公爵様のご意向をどう扱うか相談したく……」とかなんとか。断片的に聞こえるそのフレーズ、妙に王宮の侍女っぽい。わたくしの過去データからすると、“王宮派遣”なんてろくな展開になりませんよ? ま、ここは大人しく話を聞いて、「ええ、わかりましたわ。ルーファス様にも確認をお願いするわね」と送還しておきましょう。下手に穿り返すと、また何か余計なトラブルを呼び寄せるかもしれませんし。


でも折を見て覗いたステラリアの手元には、やけに金属箔の印がついた封筒が……しかも表面には皇太子の紋章っぽい刻印がちらり。うわー、これ絶対ヤバいニオイしかしないやつ! と、わたくしの冒険者的勘(前世のゲーム知識込み)が警鐘を鳴らしている。そこへ偶然リリアが通りかかったので、彼女に目線で「アレ見えた?」と合図を送れば、目をキラッキラさせて「ヤバい。超怪しいよ!」と興奮気味。

わたくし達はこっそり「これはもっと探りを入れるべき案件ですね」とアイコンタクトを交わし、今度二人でステラリアをランチに誘ってみようと即決。ごめんなさいね、疑い先行で。でもこういうの大事ですのよ、特に“悪役令嬢”としては怪しい動きを見逃すわけにはいかないんだから!


さて、そんな陰謀モードばかりに浸っていると疲れますから、シャルロットの登場で華やぎを取り戻しましょう。

「セレスティア、聞いて! この屋敷の庭園、ようやくパーティー用に飾り付けが完了したみたいよ。いかにも『ここは貴族の社交界の入り口ですわ』って感じに仕上がってて、めっちゃインスタ映え――じゃなくて絵画映え、ばっちり!」

「あら素敵。そういうの大歓迎ですわ。もしここで大規模なお茶会とか開いたら、あちこちで噂になりそうね」

「それなら、わざとスキャンダルっぽい演出をしてみたら話題になりますわよ! 『公爵夫人(予定)セレスティア、まさかの婚約破棄か!?』とか」

「いやいや、わたくしがそれやったら割とシャレになりません。どこかの記者が面白半分に騒ぎそうだから却下!」

わたくしが慌てて止めれば、シャルロットは「えー、大胆なネタのほうが面白いのに」と悪戯っぽく笑います。危険すぎよ、ほんと。ルーファス様が本物の病弱だったとして、そんなニュースを耳にしたら更に青ざめて倒れちゃうかもしれませんから。


肝心のルーファス様といえば、本日も「仮病なんじゃないか疑惑」が忍び寄るくらいの笑顔でフラフラ歩き回っていましたが、途中、階段で「少し胸が……」なんて囁いてロータスをオロオロさせていました。えっ、大丈夫なの、ほんとに? わたくしとしては「休まれてください!」と必死に叫びたいのに、ルーファス様はやんわり手を振って「ご心配なく」と微笑むもんだから、ロータスですら「ご当主、無理なさらぬよう……」と震え声。もう勘弁してほしいですわ。


さらに外野からは「そういえばディオンの魔力がどうたらって噂、また騒がれてるの知ってる?」とか言われる始末。自分のことで手一杯なのに、ディオンの魔力暴走が再燃する可能性があるだなんて聞かされたら、もうレッドアラート点滅ですよ。例の古文書にヒントがあるとかないとか、どこから湧いてくる情報なのか知りませんが、これ以上面倒事を増やさないでいただきたい。

まあ、いざという時は、わたくしの“破滅回避術”をフル稼働してバッサバッサと処理してやりますけれど。ええ、ここで散々鍛えられておりますからね、多少の陰謀なら余裕ですわ……たぶん。


そして事件は夜更けに訪れる――といっても大爆発ではありません。むしろ静かな廊下の片隅で、あのステラリアがこっそり外の黒い馬車へ書類を持って行き、何やら受け取ったのを目撃しちゃったのです。わたくし寝る前にハーブティーでも取りに……とキッチンを横切ろうとしただけなのに、これ公式に覗き見したことにならないかしら? っていうか、案の定あの馬車に乗っていたのが皇太子関係者の影なら、いろいろ面倒な爆弾が待ち受けていそう。

「ねえ、これどうしましょうか?」

「どうしましょうって、決まってるわ。わたくし達の好奇心に火をつけてくれるなら、全力で泳がせて差し上げるだけよ」

脳内会議の結果、ついに本格的な探りを入れることを決意。ここから先はますますトラブルの香りが強くなる気がするけれど、わたくし、どんな苦境も“笑って毒づいてざまぁ”と言える女ですからね! 絶対に潰されるものですか。むしろ望むところ、ハラハラドキドキ上等ですわ。


――こうしてわたくしの“公爵家での日々”は、さらに波乱の予感を背負って加速していく運命に。ルーファス様の体調問題も見過ごせませんし、古文書にディオンの魔力、皇太子の書状、そして侍女ステラリア。変に絡み合った糸が、今後どんなドラマを織り成すやら。

でも、もしあなたが「大丈夫? 本当に破滅フラグが待ってるんじゃ?」なんて心配しているなら、どうぞご安心なさいまし。わたくし、悪役令嬢は慣れっこですから! 陰謀でも愛憎でも呼んでこい! なにせジェットコースターみたいな人生こそ、わたくしがいちばん輝ける舞台なんですもの。次はどんな騒ぎを見せてくださるのか、張り切って期待して差し上げますわよ!

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