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疑惑の来訪者と愛の誓い13

「え、やっぱりこのタイミングで“次の面倒事”が来るんですの?」

朝イチで届いた使用人からの報告を聞いた瞬間、わたくしは思わずそう叫んでしまいました。つわりと眠気のかけ合わせで軽く栄養不足な脳みそが、警報を鳴らしまくっています。詐欺師父娘の処罰もこれから本格化というタイミングだというのに、王宮から“新手の勅令”が下りそうな雰囲気? あの方々、本当にわたくし達の平穏を邪魔することに命を懸けていらっしゃるのかしら。


「セレスティア、また表情が険しくなってるぞ。ほら、水分をしっかり摂らないと」

そう言って、お手製のハーブティーを差し出してくれるルーファス様。わたくしの次なる難敵が“猛烈につわりを呼び起こすトマトスープちゃん”だと気づいたのか、朝食からメニューをこっそり変えてくださったらしくて、なんだか妙に感動を覚えます。でもハーブティーを一口飲むだけで軽く噴水状態になりかけるこの体たらく。くうっ……こんな時こそプチ(お腹の子)にパワーを借りて、すべて優雅にやり過ごしたいものですわ!


そんなわたくしの苦悶をよそに、リリアが「さてさて、王宮の動きがかなりせわしなくなっているようですねぇ。具体的には王太子殿下がまた何か謀っているとか」とさらりと爆弾発言。ルーファス様の眉がピクリと動いたのを見逃しませんでした。ああ、もう、あの野心満々の皇太子クロードが何をしたところで、このわたくしを籠絡できるわけが……いやいや待て、ストレスは胎教に良くないから過度の敵視はNG。一時的に無視モードが正解ですわ。わたくし、今は平和主義者(?)な妊婦なのですもの。


「ならば、本格的な社交界の嫌がらせ大会、開幕ってところでしょうか。当然、わたくしに砂かけたい輩が列を成すでしょうけど、なんなら優先割り込み券でも配って差し上げましょう。どれだけ集まっても、まとめてざまぁで一蹴してみせますわ」

毒舌気味にそう言い放ったら、シャルロットが「そういう大胆発言、絶対に王宮に筒抜けですよ」と苦笑いしながら耳打ちしてきました。むしろわたくしとしては、“ツワリの妻を怒らせると怖いぞ”アピールを存分に拡散してくださるのは大歓迎ですわ。舐められたら最後、こっちのメンタルが先にガリガリ削られますもの。


「ディオンの様子は?」と尋ねると、ロータスは「まだ少々お疲れのようですが、魔力使用の反動よりも“モンクシュッド男爵父娘が持っていた書類の怪しさ”が気にかかっているご様子」とのこと。ディオンったら、また余計なところに首を突っ込んで自爆モードに陥らないでしょうね。まあ、そのへんはリリアとカイがしっかりサポートしてくるでしょうし、わたくしはわたくしで悪女根性を発揮しつつ、ステージ裏から手を差し伸べるのみ。それにしても、闇を引き寄せる体質って本当に大変そう。いつか根本解決したいところですわ。


「奥様、ドレスの仕立て直しが終わりました」

ステラリアがそう報告に来てくれたのですが、サイズどころかデザインまで結構派手に変わっている雰囲気。ふわりとしたハイウエストに切り替えたおかげでお腹まわりが楽ちんになっているはずが、ガッツリと緻密なレースがあしらわれていて、まるで“貴方達を翻弄する女神、ここに爆誕”みたいな刺激的アピールが加味されているんですけど。……ええ、いいじゃありませんの。腹が重くても、華麗に舞い散る花びらみたいなスカートをひるがえして、ついでに妬み嫉みを一掃する格好の材料にしてやりますとも! あら、新手のドレス姿で王宮のざわつく令嬢たちにざまぁして、ついでにクロード皇太子の不愉快な面をギャフンと言わせる展開もアリですね。


「あまり無理するな。ドレスは軽そうに見えて布が多いから、長時間の着用は疲れるだろう」

ルーファス様のやや心配そうな声に、「王家の連中に負ける前にわたくしがドレスに負けちゃったら意味がないですわ」と返した途端、隣のカイが噴き出しました。あなた、笑い過ぎですよ。けれど、こうやってみんながわたくしをサポートしてくれる温かさは、何物にも代えがたい安心感。無理しないペースで、ちゃんと休めるときに休んで、そのうえで一撃必殺の毒舌をお見舞いする。それがいまのわたくし流、“優雅な悪役令嬢の過ごし方”なのですわ。


ところが、リビングにて小一時間ほどソファで休息を取っていたら、また妙な情報が入ってきました。何でも、「この春の社交界では“公爵家の赤ちゃん詣で”が一大ブームになるに違いない」と囁かれているとか。ブーム? 勝手に観光名所みたいにしないでほしいんですけれど! わたくしを大写しにした新作の肖像画まで勝手に用意される予感がして戦慄します。もう、むしろチケット制の公開日を設定したくなる勢いで、外野が盛り上がりすぎている。ルーファス様は渋い顔で「何なら腕ずく通り抜け禁止令を敷いてもいい」と物騒な提案をし始めるし。わたくしはそこまでの鎖国体制はいりませんけど……(でもちょっと魅力を感じているわたしもいます)!


「ねえ、でもこのままいけば“娘がほしい”とか“やっぱり跡継ぎは男子”とか勝手な論争も起きそうですね」

カイの言葉に、ルーファス様があからさまに苦い顔。わたくしだって性別とか本当にどうでもいいんですのよ。元気に生まれてくれれば万々歳。次期公爵になるか、将来王室へ嫁ぐか、それとも気ままにアーティストにでもなるか。少なくとも、わたくし達親子に余計な口出しをしてくる連中はまとめてざまぁ対象でございますわ! ああ、これから先、お祝い事に便乗した“因縁の再来”がどれだけ来ようとも、涙より笑いの方を増やしてみせましょう。だってわたくし、すでに“次代のざまぁクイーン”養成に向けて一歩踏み出している気分ですもの。


そんな妄想をめぐらせていたら、「セレスティア、おなか、痛まないか?」なんて、ルーファス様が急に真顔で見つめてきます。その顔が余りに真剣なものだから、わたくしまで不覚にもうるっと来そうに。もしかして、念願の子ができたこと以上に、わたくしを失うかもという不安が大きいのかもしれませんね。ああ、もう、こういう時は素直に寄り掛かってしまいたい。


「大丈夫ですわ。あなたがいる限り、怖いものなんて何もありませんもの」

そう伝えた途端、ルーファス様の頬がほんのり上気したのがわかりました。くすりと笑いながら、でもわたくしは最後に付け加えます。

「ただし、よそから“無礼者”が攻めてくるなら、遠慮なく一緒に蹴散らして差し上げましょうね。公爵家の誇りをかけて、派手にざまぁ返しをするの、結構クセになりましたもの!」


すると周囲で聞いていたみんなが、わっと笑い声を上げました。いいですね、この連帯感。どんな陰謀劇が忍び寄ろうと向かうところ敵なし、まさに妊婦パワーの無敵モードです。だってわたくし達には愛と仲間と、ちょっぴり痛烈な毒舌がある。何があっても、わたくしが皆を“ざまぁ”と一喝しながら守り抜くたくましさを見せてあげますわ。さあ、まだ見ぬ次なる波乱よ、いくらでも来るがいい。残念ながらこちらはおめでたいオーラ満載の絶好調モード。“クライマックス”の扉など、まだまだ通過点にすぎませんわよ!

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