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王宮夜会の騒乱と公爵家の策略10

カーブルトとトリーシャの挙式が無事に終わり、祝宴もそろそろお開きかしらという頃合い。にもかかわらず、わたくしセレスティアは何やら落ち着かない胸騒ぎに包まれていました。だって、あちこちに人ならぬ“黒い意思”がピリピリ立ち込めているんですもの。よく見ると、皇太子クロードの取り巻き連中がやれ「どう出ます?」だの「まだ逆転の目はある」とかほざいてるし、その隣でソレーユ皇女が頬杖をついて動かないまま、周囲をぐさぐさ睨みまわしている。あのドレス姿がすっかり台無しになるくらい険悪な表情ですが……ええ、どうぞご自由に。不満満載なら満載なほど、こちらとしては“ざまぁ”がいっそう盛り上がるというものですわ。


「おーい、セレスティア。ニヤニヤしてるの目立ってるよ?」

隣のルーファスが小声でツッコんできました。わたくし、思わず口をとがらせて反論。

「だってほら、あの陰鬱な皇太子サイドの団体が、今にも『よし、次は婚約破棄をぶちかましてやるぞ』みたいな会議を開きそうじゃありません? そんなの心踊る展開以外の何物でもないでしょう?」

すると彼はため息まじりに「お前、楽しんでるな」と呆れ顔。でも、その瞳の奥にはしっかり笑いが混じっているのをわたくしは見逃しません。やっぱり夫婦っていいですよね、こういうアイコンタクト一つで伝わるのが最高に楽しいんです。


「セレスティア、聞いて聞いて!」

やたら楽しそうな声でリリアが駆け寄ってきました。あら、そのお顔、今にも飛び跳ねそうなほどテンションが高いじゃありませんか。

「また新しいゴシップ? まさか『式の最中にカーブルトが逃げ出した』とか言い出すんじゃ……」

「そんなわけないでしょ! でも近いものはあるわ。さっき当の新郎がこっそり言ってたんだけど、どうやら皇太子が“別の祝宴”と称して人を集めようとしてるらしいの。しかもグレンフィールド家に絶対冷や水ぶっかけるぞって、高らかに宣言してるとか!」

……ははあ、私は思わずシャンパンを置いて指をトントン。なるほど、やっぱりあちらさん、即リベンジマッチの算段ですのね。結婚式に負けじと“真逆の宴”でも開いて、こちらの幸せムードを台無しにしてやろうって腹積もりでしょうか。


「バーカバーカ、かえって燃料投下になるってわかってないのかしら。」

毒舌丸出しで言い捨てると、リリアは「ほんっとそれ!」と吹き出しました。わたくしが言うのも何ですが、この子とわたくしの性格、似たり寄ったりなのではなくって? 嫌いじゃありませんわ。


そんな皮肉たっぷりの会話を背に、わたくしは少し離れた柱の影をそっと見る。そこには案の定ディオンがいて、さっきよりは呼吸が落ち着いているようだけれど、その顔色はいまだ青白いまま。ハーブの香袋の効果が多少は効いてくれたのならいいのだけれど、劇的な回復までは望めなさそう。ディオンの魔力の問題は今後、大きく爆弾化する可能性が高いと聞いているから、いっそまとめて解決してあげたいところ。でもそうよね、ルーファスが言う通り、今日の祝宴を台無しにするわけにはいきませんもの。焦りは禁物。


「ごめんなさいディオン、後でしっかり話しましょう。無理はしないでくださいね?」

遠目に視線を交わすだけで、彼はかすかに「はい……」と唇を動かす。さらに向こうではソレーユ皇女がわたくしに気づいた様子で、「ふんっ」とばかりに視線をそらしました。そうやって示威行動が通じると思っているのかしら? 可愛いこと。


「……セレスティア、見てあれ、たぶんあの取り巻きども、やり口を練ってる。」

シャルロットがそそくさと近づいてきて、ビシッと皇太子サイドを指差しました。まったく、どいつもこいつも仏頂面のオンパレード。明らかに議論が白熱しているらしく、うっかり近づいたあの辺の貴婦人が「まあ怖っ!」と逃げ腰になってるのが見え見えでした。

「まあ、次にどんな『大掛かりな婚約破棄ショー』を用意してくれるのかは楽しみですね。わたくしとしても“ざまぁ”フラグ大歓迎ですわ。」


するとシャルロットはわざとらしく目を丸くし、「なんだか、あの人たちに哀れみすら感じるのは気のせいかしら?」と笑います。いいえ、ご明察、その通りでしょうね。わたくしたち相手にケンカ売るなんて、エンターテインメント<ざまぁ>が待ち受けてるのに気づいてないなんて、本当に可哀想でしかありませんわ。


そんな折、ルーファスが「……そっちは任せた。俺は父に連絡を取る」と言って、少しだけ場を外しました。お義父様——グレンフィールド前公爵の意向によって皇太子への制限がいっそう強められるとかで、あちらこちらに先手の布石が打たれているらしい。クロード皇太子には気の毒な状況ですが、まあ自業自得という言葉がこの世には存在しますもの、存分に味わっていただきましょう。


一方で結婚式本来の主役であるカーブルト&トリーシャは、いまだ“撮影ラッシュ”に追われて大忙し。あちこちで「おめでとう!」の嵐にさらされながら、新郎新婦ツーショットやら家族写真やら、さまざまなポーズを要求されてうれしい悲鳴を上げています。双方とも目じりが下がりっぱなしで、それはもう見ているだけでこちらまで幸せな気分。きっと今夜は目が腫れ上がるくらい泣いたり笑ったりしちゃうでしょうね。


「はあ……新郎新婦を心から祝福しているのに、その背後で出口の見えない陰謀劇がぐつぐつ煮込まれてるなんて、なかなかシュールな構図よね。」

タルトをサクッと一口かじりながら、シャルロットがぼやきます。さすがに祝宴会場で続く“裏事情”に、ちょっと酸味が強いようですわ。


そうこうしていると、突如会場奥の扉がバタンッと開いて、見たことのない紋章入りの封書を抱えたメッセンジャーが勢いよく駆け込んできました。おや……今度はどんな爆弾報告かしらと、わたくしは内心ドキドキしながらメッセンジャーの動向を見守ります。すると真っ先に皇太子サイドへ駆け寄り、深刻そうな顔で何かを渡している。あっちの連中、ガタンと椅子をなぎ倒す勢いで立ち上がって……え、これ次の火薬に点火したんじゃなくって?


「セレスティア、どうする? あれ、ヤバいんじゃない?」

カイがそわそわしながら聞いてきたので、わたくしはお腹の内で「ウェルカム」とつぶやきつつ、完璧なる淑女スマイルを浮かべて返答します。

「もちろんわたくしたちは、ヤバいのを加速させちゃいましょうか。どうせ何を企もうと、この祝宴の後には“華麗なるざまぁ”をお見舞いするだけなんですから。」


そう、それがいちばん性に合っている。しばらくして戻ってきたルーファスが「嫌な報せか?」と小声で問うので、わたくしは彼の腕にそっと手をまわし、「いえ、むしろ期待の報せかと。」とニヤリ。彼はけげんそうに首をかしげつつも、私の言いたいことは把握してくれたらしい。


周囲からは祝宴の歓声や拍手が沸き続け、新郎新婦は無限に続くハッピーコールに照れっぱなし。そこでわたくしはグラスを手に取り、ルーファスや仲間たち、そしてこれまでお世話になった方々へ目を合わせながら、ほんの少しだけ立ち上がりました。歓迎するわよ、嵐なんて。寧ろ、どうぞとことん盛り上げてくださいませ。どんな難題が来ようと、わたくしは悪役令嬢の名に恥じぬやり方で“ざまぁ”を華麗にプレゼントしてあげるんですから。


ディオンやカイやシャルロット、そしてリリア、皆がまばゆい笑顔や頼もしげな視線で応えてくれる。わたくしは満足げにグラスを掲げ、「改めて二人の門出に、幸せの乾杯を!」と高らかに声を張り上げます。パリンと鳴るグラスの音、人々の歓声。その裏で密かに進行している陰謀ごとなんて、いずれ全部“ご愁傷さまでしたね”に塗り替えてやるわ。


こうして祝宴は、表向きは最高にハッピーな盛り上がりのまま幕を引きかけています。けれど次の幕開けがどんな大波を連れてくるかは、もう火を見るより明らか。クロード皇太子とソレーユ皇女のあの剣呑な眼つき、ディオンの魔力問題、大量に詰まった根回しや横槍。ああもう最高ね! 波乱のメインディッシュがこれから訪れるかと思うと、わたくしの胸は期待と刺激でうずきっぱなし。


「さあルーファス様、覚悟はよろしくて? 何が起きても一人で走るのではなく、わたくしをお忘れなく。」

ドレスの裾をひらりと翻しながら、そっと夫を見上げれば、彼は苦笑まじりに「頼むぜ、相棒」と手を差し出してくれました。その手をぎゅっと握り返すと、パッと周囲の燭台の明かりが一段と輝いて見える。さあ、大団円のあとに待つ悪役令嬢としての舞台、これからが本当の見せ場ですわ。

(次回、いよいよ暗躍とざまぁのカロリー爆盛り回が開演確定ですわね!)

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