表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/222

波乱を呼ぶ隣国からの客人15

ラフレス皇太子とヴェロニカ皇女が、連行されるどころかむしろ引きずられていった――そんな劇的場面から少し時間が経ったころ、わたくしはひと息つく間もなく“正真正銘の証拠提示タイム”に突入しておりました。まさかこのわたくしが、王宮の公証役人様たちと一緒に「はい、こちらが皇太子殿下の下僕が手配していた怪しげな香水のリストでして」とか何とか、ペラペラ書類を広げる羽目になるなんて思いもしませんでしたわよ。しかも、向こうの使用人から出てきた「姫様に下薬を入れたのはラフレス皇太子のご命令でした!」という爆弾発言もついでに付き。はい、どうもありがとうございます。あなたのご主人様もこれで終わりですねって感じですこと。


「ちょっと! 余計なことを――!!」

と叫んだヴェロニカ皇女は、先ほどから崩れ落ちたみたいに床にへたり込んでおりますわ。いくら気が強いったって、自国の下僕がこれだけカミングアウトしてしまったら身の潔白を装うのは難しいでしょう。あんなに高飛車だったお顔が青ざめて震えてるのを見ると、正直スカッとしちゃうわたくしがいます。ほら、ざまぁとかいう言葉が脳裏をよぎってちょっと口元が緩むの、仕方ないですわよね? 自業自得って最高のエンターテインメントですもの。


「わ、わたくしは知らなかったの! 皇太子殿下が勝手に――」

もう必死の言い訳を垂れ流すヴェロニカ皇女に、近衛騎士の長が「残念ながら、証言はお二人が共謀したと示唆しています。ひとまず安全のため、身柄を押さえさせていただきます」と粛々と告げるもんですから、必死さが一層加速。さっきまであんなに“上から目線”な態度でわたくし達に絡んできてたのが嘘みたいですわね。ここぞとばかりに証言をきっちり拾ってくれる近衛騎士さんたち、実に頼もしい――というか、これまで散々好き勝手やってたあの二人の行いを、ようやく白日の下にさらしてくださったというわけです。拍手! 


さらに、わざわざ偉い人たち(具体的な役職は門外漢には難解すぎなので省略)が横一列に並び、バーンと厳粛に「王宮の名誉を著しく汚した」と宣言してくださったので、ラフレス皇太子とヴェロニカ皇女は隣国へ強制送還がほぼ確定。あらまあ、あれだけわたくしを拉致しようとしていた二人が、今度は御自分たちが強制退去だなんてオチ。人生、何があるかわかりませんわね。えっ、わたくしが裏で糸を引いた? まぁ実際、細かい情報収集や証拠品を探し出す作業は友人たち総出で暗躍しましたけども。「悪役令嬢パワー舐めんな」という話ですわ。


そんな中、「セレスティアを守れなかったら、俺は公爵失格だろう?」とばかりにルーファス様が威風堂々と登場。ああ、このタイミングを待っておりました! 現場はほぼ収束していたものの、やはり最後の決め手はルーファス様による“公爵の権威”ってやつ。バシッと言ってくださるんですの。「わたくしの婚約者に危害を加えるような者は――」と淡々と、けれど鋭い視線を込めて言い放つから、場の空気が一瞬でキリリと締まったのが分かります。おまけに周囲の貴族たちは「あれが噂に聞くグレンフィールド公“石のように冷静”モードなのか…!」なんてひそひそ言っていて。普段はなんだかんだ穏やか路線のルーファス様ですけれど、この土壇場では絶対に引かないその姿勢、最高に頼もしい! そのおかげで、「公爵家としての圧倒的存在感を示す」とやらに成功してしまったみたい。何やら回りの貴族方が口々に「やはりグレンフィールド公爵は別格だ」なんぞとビビっておられます。あらあら、日常はもっとフワフワした方なんですのよ? でもわたくしだけの特権ということにしておきましょうか。


そこへ飛び込んできたのが、リリア、シャルロット、カイを先頭にした“いつものメンバー”でございます。彼らの顔を見れば、みんなふっと安堵の息を吐いて、互いに目と目で「お疲れー!」なんて合図を送りあうんです。リリアは書類片手に「あの下僕が証言を翻さないうちに記録をきちんと残しておきませんと」って張り切るし、シャルロットは「これで晩餐会がぶち壊れになったら嫌なので、後片付けの手配を先にしなくちゃ」と現実的なことをサラサラ言うし、カイなんて「お前、こんな派手な事件持ち込むなら先に相談しろよな」ってまた皮肉ぽく肩をすくめる。……いや、相談してどうにかなる程度の話でもなかったのよ? そもそも隣国からの襲撃(というか拉致計画)なんて、普通のメンタルじゃ想定外すぎますわよ。


一方、ディオンは少し離れたところで静かに様子を見守っているんですけど、不思議と遠巻きに手を当てながらこっそり息を整えているように見えるのよね。少しばかり、落ち着かないというか何というか。「ディオン、大丈夫?」と声をかけると、いつもの優しい微笑で「ええ、ただ少し疲れが出たようで」と言うんですけれど、その瞳の奥が何やら不穏に揺れ動いているような……気のせいかしら。彼にはどうも、まだ解決しきれていない“闇”があるんですっていう噂が、やはりちらつく。いずれにせよ、今すぐ大事にはならないようなので、わたくしとしては一旦静観することにいたしました。ほら、わたくしだって無理矢理首を突っ込むほど無粋じゃありませんのよ。ディオンが本当に助けを求めるなら、いくらでも力になりたいですけれどね。


かくして、問題児たちが引き立てられていった後のホールには、変にピリついた空気と、事件後の疲れのせいか微妙にテンションの下がった貴族の面々が残されております。でもその一方で「いやはや、グレンフィールド公爵の婚約者殿がこんな形で手柄を立てるとは」「ちょっと怖いわね……でもやること成すこと華やかすぎるわ」なんて、半ば感嘆しながら噂している一団もいたりして。ええ、噂されるのは慣れっこですから、どうぞご自由に。むしろ、新手の陰謀が出てくるなら全部まとめてわたくしが処理してあげますわ。もう今さら、妙なドロドロの愛憎劇に巻き込まれようと「またですかーYeah!」って感じで華麗に交わしてやるんですから。


でも、こうして大騒動が終わってみると、わたくしちょっぴり日常が恋しくなっちゃう。ここ最近、あまりにも波瀾万丈で息つく暇もなかったんですもの。疲れた身体をドレスごとベッドに放り投げたいという誘惑が、今にも襲いかかってきそうですわ。ルーファス様に「君は無理をしなくていいよ」なんて柔らかく言われたら、ほんと気が抜けちゃいそう。でも、ここでほっこりしてる場合じゃなくてよ。これから公爵夫人(予定)としての務めもあるし、学友たちとのテストも控えているし、意外と普通の日常っていうのは事件処理とは別の意味で忙しいのですわ。しかも、いつまたクロード皇太子とソレーユ皇女が妙な仕掛けを企んでくるか分かりませんからね。大人しそうに覗いてる彼らが一番危険かもしれませんわよ? 


とはいえ、わたくし、心はいたって元気。次また陰謀が起こったら、「そりゃあ面白そうね! ざまぁ展開をご所望かしら?」って鼻歌交じりに応戦して差し上げますわ。何たって――一連の騒動を乗り越えたおかげで、ルーファス様とわたくしの“婚約者チームワーク”はさらに強度が増したのですもの。あの方が隣にいてくれるだけで、何やらんや安心感が違うんですわ。それに友人たちという最強サポート部隊が即スタンバイ状態。これなら、この先どんな荒波が押し寄せようと、余裕でサーフィンしてやれますわよ。


「それじゃあ、いったんこの騒ぎは幕引きにして、少し休憩しましょうか?」

わたくしがそう提案すると、シャルロットがぱーっと笑顔になって「ご褒美にスイーツでも食べに行きましょう」と言うんです。ええ、同感! 既視感ある展開だけどケーキは裏切らないからよしとします。リリアは「わたくし、リポートも書かなくちゃなんです」と相変わらず忙しそう。でもあなた、ケーキを前にすると一瞬で書類の存在忘れ去るじゃない? まあいいわ、細かいことは気にしない。カイとディオンも苦笑を浮かべながら「しゃあねえな」「ええ、行きましょうか」なんて乗り気の様子。やはり甘い物は正義! 今後待ち受ける新たな騒動に備えて、糖分をばっちり摂取しておかなきゃ。


さて、そんなわけで、わたくし達は慌ただしい拉致未遂騒動にきっちりケリをつけ、新たな一歩を踏み出すことに成功いたしました。もちろんこの先、さらに面倒な陰謀が敷き詰められている可能性は否めません。でも、怖がってては面白くないでしょ? 隣国の皇太子なんぞひっくるめて葬り去った(送還という名の強制退場)この悪役令嬢に死角はない! 誰が来ようと、ざまぁ上等。華麗に舞い踊ってみせますわ。ルーファス様をはじめ大事な仲間たちと一緒に、わたくしの“次”をぜひ心待ちにしていてくださいませ! さーて、まずはイチゴタルトでエネルギーチャージといきましょうか。ご褒美万歳! 一難去って糖分いっぱい! わたくしの社交界ライフは、これからますます楽しくなる予感しかしませんわね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ