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海辺の別荘と夜会での華やかな波乱 12

翌朝。わたくしは寝起きのぼさぼさ頭を押さえつつ、そろーりとベッドから足を下ろしました。夜会って楽しそうに見えて、実際は体力勝負ですわよね。あれだけハデに立ち回って疲れてないはずないんですもの。ま、おかげさまで今朝は全身が程よい筋肉痛。戦いを経て強くなった証拠……って自分で言ってても悲しくなってきましたわ。


とはいえ、あの夜会でのわたくしたち夫婦のやり取りは、予想以上に社交界で話題になっている模様。廊下を歩く使用人の皆さんが「昨夜はまさかの大激怒シーン!」「あんなふうに公爵様が嫉妬なさるなんて!」とヒソヒソ盛り上がっていますもの。ほんと、大げさに騒いでくれるわね。わたくしとしては「嫉妬? もっとやっちゃってくださる?」くらいの気持ちなのに。


ドアを開けてみれば、廊下の向こうからさっそくシャルロットとリリアがツカツカ近づいてきました。二人とも朝っぱらから目キラッキラさせてます。嫌な予感しかしない……。

「セレスティア、どうだった? 昨日の夜は旦那様の超絶ジェラシーに胸キュンで眠れなかったって噂よ~ん」

「大正解、もしくは大ハズレ。どっちか答えて?」

おいおい、朝イチでそれ聞く? わざわざ答えるのも面倒だけれど、二人の興味津々ビームが刺さる刺さる。

「残念ながら、目を閉じた瞬間に爆睡でございました。跡形もなく」

わたくしが肩をすくめると、シャルロットは「はっはーん」とどこか納得の表情。

「爆睡ってことは、何かあったのかも? そういうことだよねえ? つまり“燃え尽き症候群”ってやつでしょ?」

「ちょ、そこまで深読みしないでちょうだい!」

リリアのむちゃ振りはさらに続きます。

「でも旦那様のあんな顔、初めて見たわ。普段は優男な感じなのに、ときどき“オレの女にちょっかい出すんじゃねえ”的オーラ、出してたものね。ひゅー!」

もはや茶化されまくり。けれど内心、わたくしもそこは思い出すたびに心臓ドッキドキしているわけで……なんなのよあの破壊力。危険にもほどがあります。


廊下を曲がると、今度は遠巻きに使用人の子たちが「きゃ~昨夜、直接見ましたよ~!」と盛り上がっているのが見えました。一瞬こっちと目が合うと、みんなパッとキビキビ動き出すあたりが可愛らしい。正直、わたくしの毒が飛んでくるかビビってるんでしょうけど……大丈夫、朝からそこまでガミガミしませんわよ。


食堂へ入ると、すでにルーファスが先に席についていました。まぁ、わたくしから見ても珍しく早起きですね。顔を見るや否や「あっ、おはよう」となんだか照れ混じり。わたくしも「お、おはようございます」とぎこちなさ満点。昨日あんな…こう…妙に甘ったるい雰囲気でしたから、今朝はどう接すればいいのか迷いますわよ。でも、シャルロットとリリアが後ろからニヤニヤ見てるし。もう恥ずかしい!


と、そのときルーファスが少し咳払いをしてこちらに視線を向けました。

「セレスティア、昨夜はいろいろ迷惑をかけたな。……その…俺が嫉妬なんてするから、周りも騒がしくなってしまった」

「はぁ、別に迷惑ってほどでもないですわ。むしろわたくしのほうが面白……いえ、心強かったですのよ。ふふっ」

……はい、思いっきり顔にやけてるわたくし。これはアカンです。シャルロットたちが「ニヤリ☆」なんて背後で目を光らせてるのが見え見え。やめて、これ以上いじめないで!


なんとか気持ちを立て直しつつ、話題を変えようとあたりを見回すと、そこへ執事が来て「今朝、皇太子殿下より密書が届いております」と神妙な面持ちで報告してきました。わたくしとルーファスが目を合わせて同時に「……やはり来たか」と苦笑い。クロード殿下、夜会であれだけ煽っておきながら、速攻で手紙を放り込むとは手が早い。でも、いかにも彼らしいわ。


手紙を広げると、そこには「おまえたち夫婦に話したいことがある。近々の晩餐会に来い」的な、上から目線の文面がずらり。ああもう、いつもの殿下節ですね。やれやれ、絶対また茶番に巻き込もうとしているにちがいありませんわ。もしかして「セレスティア・サファイア」を牽制してきているのか、それともルーファスの病弱設定を突こうというのか。どっちでもいいけど、わたくしはこのまま黙って引き下がるなんてあり得ません。ざまぁ準備、いつでも万全ですわ。


「おっと、案の定だね。ほら、何かやらかす気満々って感じ」

リリアが手紙を斜め読みしつつ、鼻で笑う。シャルロットも「わたしたちも一緒に行く準備しとこうかしらね~?」とウキウキ。何が楽しいのか……でも、わかる気がします。クロード殿下とのバチバチやり合いは、実はちょっとした見世物になってるんですもの。


「あとはソレーユ皇女の動向が気になりますね。夜会でちらっと姿を見せただけだったのに、妙に影で動いているって噂があちこちから出てます」

シャルロットの言葉に、ルーファスが少し険しい顔をする。皇女殿下が何を企んでいるのか、正直わたくしもイマイチ読めないのよね。ディオンの魔力研究と皇族が結託するなら、ますます厄介なことになる予感しかしないわ。


そして、ディオンと言えば今朝の時点で研究者たちから山のように届いた問い合せ文書を「見なかったことにしていい?」という勢いで放置しているらしいです。彼には彼のペースがあるだろうし、わたくしたちも変に急かすつもりはなし。まあ、そのうち適切な対応を考えましょう。ざまぁ案件はたっぷり抱えておりますので。


「さて、朝飯食ったら“セレスティア・サファイア”の売上報告もチェックしないと。昨日の夜会でも評判がさらに広まって、ただでさえ注文が殺到してるんだから」

ルーファスが言うと、わたくしは「ええ、皆さまに買い占められる前にプレミア価格の設定を考えないと~」と冗談めかして返す。高価格戦略でもいいんじゃありません? 売れるうちにガッポリですわ。……え? 思いきり悪役ムーブ? いいのいいの、わたくしはそもそも“悪役令嬢ふたりドリーム”……じゃなくて、一人だけどそれっぽいポジションなんですから。


ともあれ、あの夜会の濃厚な余韻を引きずりつつも、わたくしたちの日常は容赦なく動き始めています。地味にまたひと騒動起こりそうな予感はビンビン。婚約破棄だの愛憎劇が社交界を彩りそうな時期、いよいよ本番ですわね。もしかして次はクロード殿下が「おまえとルーファスを引き離してやる!」とか言い放つのかしら? そのときは「はいはい、残念でした~。ざまぁでございます☆」と返して差し上げましょう。


「よーし。まずは腹ごしらえして、そのあとサクッと朝のスケジュール片付けて、殿下の晩餐会に向けた作戦会議スタートね」

そう宣言すると、シャルロットが「楽しみだわ~またトンチキな連中を華麗に倒して“ざまぁ祭り”ができるかしら?」とおどけてウインク。リリアは「皆に告げ口される前に、こっちからSNS的拡散……じゃなかった、うわさ話の先手を打たなきゃ!」なんて怪しげなことを言っています。ああ、なんて頼もしい仲間たち。


ルーファスは少し困惑気味に「まだ朝だぞ……」と呟くけれど、わたくしは満面の笑みを返しておきました。社交界を生き抜くガッツと毒舌コメディ精神があれば、一昼夜の疲労だってものの一瞬で吹き飛ばせるんだから。ディオンもカイも巻き込んで、みんなで次なるステージへ出撃よ!


さて、嵐の夜会はひとまずお開き。でも、わたくしたちの日常はまたすぐに新しい嵐を呼びそうな気配。ソレーユ皇女の陰謀とクロード殿下の上から目線、魔力研究者たちの追撃も含め、まとめて面倒見て差し上げましょう。そう、これこそが“悪役令嬢”であるセレスティアの生き方。ページをめくる手が止まらないような大暴れ、今章もまだまだ続きますわよ。


さあ皆さま、全力でついてきてちょうだいませ! この婚約生活、脱落なんて選択肢はなし。これから待ち受ける愛憎トラブルも陰謀も、ザクザク薙ぎ払ってざまぁ祭りをお見せいたしますわ! さあ次の章、とんでもない爆弾が待っているかもしれませんけど……わたくしの準備はバッチリですのよ。どうぞお楽しみに!

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