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海辺の別荘と夜会での華やかな波乱 1

わたくし、セレスティア・イヴァンローズと申します――って、いまさら自己紹介も野暮ですわね。ともかく本日、正式に公爵家の邸へ越してきた次第です。ああ、これで晴れて“公爵閣下の新妻”ごっこが始まると思うと胸がときめくやら胃がキリキリするやら。前世のゲーム知識いわく、悪役令嬢の定番ルートは暗い牢獄か遠い辺境への流刑。でもその運命はわたくしが華麗にブッちぎってみせますわよ? むしろ皆さんには天晴れな“ざまぁ”をご用意しておりますから、何か文句でも?


――というわけで新居に到着したはいいものの、見渡す限りまだ慌ただしい雰囲気が続行中。先日の騒ぎの名残はそこかしこに散らばっていて、使用人さんたちがドタバタと片付けに励んでおりますわ。廊下を進むと、出迎えてくれた侍女長が深々と頭を下げながらも「合間に応接室を整えますので、お待ちくださいませ」なんてシニカルに微笑んでくるから、わたくしも負けじとニコリ。だいたい応接室があるだけマシじゃない? ドアやら柱やら、色々吹っ飛んでた場所もあったと聞いてますけど、まあ黙ってスルーが大人の対応ですわ。


「セレスティア様、ご滞在用のお部屋は一応こちらでございま~す」

そろそろ見目麗しい侍女が現れる頃かと思いましたら、やってきたのはリリア。はいはい、あなたの笑顔は1リットルの栄養ドリンクより効くと評判ですものね。だけどわたくしが部屋の入り口を横目で覗いた瞬間、一瞬にして目が点。カーテンがまだ焦げ臭いのはともかく、書斎と寝室の間仕切りが半壊しているのは気のせいでしょうか?

「……これは“大胆なオープン設計”ってやつかしら? うふふ、わたくしにはちょっと刺激が強い気もいたしますわ」

「ごめんなさい、急ぎで修復しているのですがまだ完全には……」

「いいのよ、そんなにかしこまらなくて。そういうスリリングな環境もまた一興ですわ。むしろ美容と健康に良さそうな……気は全然しませんけど」

そう、これぞ“公爵家”カスタム仕様。ドキドキとヒヤヒヤが混ざって、どこかスリル満点な住まいの完成です。何がどうなっているのかイマイチよくわかりませんが、とりあえずベッドは無事そうですし――ええ、そこが重要ですわ。


そんなわたくしを、部屋の外からじっと見やる人影あり。やれやれ、わたくしの旦那様、ルーファス・グレンフィールド公爵がおいででしたか。普段なら「おや、セレスティア。また妙な妄言でも吐いているのか?」とかツッコミまじりに近づいてくるところですが、今日はやけに静かなご様子。あら、もしや昨日の事件(詳細は割愛します)で心配してくださったのかしら? それともまだ“病弱キャラ”としてのクールフェイスを維持なさっているのかしら?

「旦那様、そんな真剣なお顔で見つめられると、わたくしの心臓がバクバクしますわよ」

「いろいろ準備が滞っていて、すまないな」

「いいえ、すまないのはこちらのセリフ。わたくしが来たばかりに、更なる騒動でも招いてはと心配だったのですけど……」

「……いや、むしろお前がいると妙に心強い」

ぽつりと漏れるその一言に、わたくしはほんのり頬を赤らめてしまいました。え? いまなに? わたくしが強気すぎる悪役令嬢だからですか? それとも心のどこかで頼りにしてくださっているんでしょうか? まさかあの冷血公爵がそこまでデレるとか……いえいえ、舞い上がるのはまだ早いですわ。


そこへカイがひょっこり顔を出し、ちゃっかり茶々を入れてきます。「あれー、なんだか今の会話、夫婦っぽいムード醸してません? あー羨ましい。ここ最近、ろくに転がれるベッドもなく過ごした僕には毒ですわー」

「転がれるベッドよりも、現実で転がるお前の頭に一発パンチをお見舞いして差し上げましょうか?」

「ひいい、申し訳ない! でも、俺はあの事件のあとずっと寝不足でフラフラなんですってば。それもこれも教えてくださらないセレスティア様がいけないんです~!」

「はぁ? じゃあ今度はマクラ投げでもして笑いながら寝落ちたいということ?」

「それいいですね! って、違う違う!」

誰もいないのをいいことに、わたくしとカイは子どものケンカみたいに言い合いをしてしまいます。リリアが「お二人とも落ち着いて……」とか言ってますけど、正直止まらない。そんな空気感も久々で、あらちょっと楽しいかも。


すると廊下の向こうからシャルロットが疾走してきて、「みんなー! ステキ情報をキャッチしたわよ!」と息を切らしながら叫ぶじゃありませんの。何かと思って耳を傾ければ、「次の社交スケジュールが早まるかもしれないの。しかも海辺の別荘に行く計画が加速中だとか噂よ?」なんですって。きゃー、聞いただけで脳内に潮の香りが広がりますわ。とはいえ、ただの休暇なんてわけもなく、領地の見回りも兼ねると聞いていたような……。

「公爵家の奥方が訪れるってなると、周辺の貴族連中もうるさくなりそうですわね。わたくしを歓迎するふりをしつつ、針の先でチクチク突っついてくる連中ばかりだったらどうしましょう。洒落たドレスを新調して、“返り討ち”スタイルで臨むしかないかしら」

「ええ、やっぱり“悪役令嬢”には華麗でとびきり痛快な応戦が必要ですものね!」と、シャルロットが妙にノリノリで賛同してくれます。うふふ、大いに結構。わたくしもバッチリ準備をしていきましょう。そう、わたくしは『ざまぁ返しのプロ』を目指す身。皆さままとめてかかってきてちょうだい!


――と、そこへディオンが淡々とした足取りで入ってきました。相変わらず覇気薄げな彼ですけれど、その瞳の奥には何やら決意の炎。どうやら今回、領地周辺に蔓延る不穏な魔力の調査を本格化させるとか。わたくしとしては彼の体調も心配ですから無理しないでほしいところですが、まるでこちらを裏切るわけにはいかないといわんばかりの目をしていて、なんとも切ない。

「ぼくは大丈夫です。セレスティア様に迷惑をかけるわけにはいきません」

「あら、心強いですわ。わたくしも“あなたとルーファス様の魔力問題”には目を向けるべきと思っていましたの。そもそも変な企みが絡んでいるとしか思えませんし、これ以上バカらしい邪魔が入ったらわたくしのストレスがマッハでしょ?」

ここのところゴタゴタ続きで、確かに精神的にボロボロになりがち。でも反転攻勢こそ、悪役令嬢の真骨頂ですから!


そうこう話していると、廊下の先で使用人が走り寄り、「公爵様と奥様のご移動の準備がほぼ整いました!」と知らせてくれました。おお、つまり“海辺の別荘”へ行く流れがズンズン具体化しているわけです。いよいよバカンスと思いきや、その実態は領地の巡回+陰謀めいた問題に首を突っ込む予感がプンプン。でも絶対に逃げませんわよ、だってここが勝負どころですもの!


「さ、皆さま。まずは荷造り頑張りましょうか。わたくしの新調ドレスと、この邸内の復興のための資料やら、どっさり詰め込んじゃいますわよ」

「お、おいセレスティア、そんなに欲張って何をする気だ?」

「決まってるじゃありません。どこへ行こうとも、“悪役令嬢”の名前を轟かせる特大パフォーマンスを用意するんですのよ。あ、旦那様のお体も大事だから、無茶はほどほどにして差し上げますけどね?」

「……ほどほど、か。お前の ‘ほどほど’ は信用ならないが、まあいい。頼りにしてる」

ルーファスは呆れ顔ながら、最後には微かに口角を上げて笑ってくれました。にわかに漂い出す夫婦の連帯感に、カイは「はいはい、ラブラブですね」と茶化し、リリアとシャルロットは「お似合いですわぁ」と手を叩いて喜び、ディオンは小声で「呪縛の問題など色々あるけど、とりあえずハッピーな雰囲気で何より」とぼそり。


こうして、わたくしたちは次なるステージ――海辺の別荘と、その周囲に渦巻くはずの厄介事へ向けて準備を始める運びとなりました。きらびやかな潮騒の下で、さらなる陰謀と婚約トラブルが待っているだなんて、最高に燃える展開じゃありません? さあ、さっさとカーテンの焦げ臭さなんて忘れて、愉快な“ざまぁ劇”を繰り広げにまいりましょう。公爵ご一家――いえ、わたくしも含めた全員が、次はどんな大騒ぎに巻きこまれるのか。楽しみすぎて、もう笑いが止まりませーん!

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