第10話:信仰心?無いよ。
日の国の街に着いたわたし達は、早速街を見て回る事にした。
はいいけど………
「なんで低レベルモンスター位しか出ない様な森を挟んだだけで木造平屋建てな家が多い町になって皆和服を着て帯刀してる国になるのにゃ。」
「アイスたんでワンモア!」
「『透、ザコ程度しか居ないような森を越えただけで文化が変わるとかいみふめーです。
この世界を作った神様とやらはふざけてやがりますです??』」
「ありがとうございまぁぁぁす!!」
もう定番になりつつあるねこのやり取りも。
ゆーくんが面白くなさそうな顔をしてるのもセットで。
まぁわたしも楽しいからやってるんだけどにゃ♪てへっ☆
なんて透くんとじゃれてたら香蓮さんが呆れた様にため息をついた…?
「なぁ、柏木先生。」
「んんっ…!はいにゃ?」
「仮にも修道女…いや、今は何故か巫女の格好をしている上に聖女なんて職に着いている奴が神様に対する不敬発言をするのは如何なものかと思うぞ。」
「あ。こりゃ失敬☆
まぁ、そうは言ってもこれ、この国と言うかこの町に近付いてから姿が変わったし、コスプレみたいなものだしにゃぁ……わたし、日本に居た時も無宗教だったし。」
神様を信じるか?と聞かれたら『本当に神様が居るなら世の中に不幸な人は居ないよね〜! 』程度の答えをするね、わたし。
というか、もうね、神様とか漫画アニメゲームのキャラクター化しすぎてある意味身近すぎるのよ。
神様≒キャラクター
な程度には!
と思ってたら、瑠花ちゃんも呆れた様にため息をついた………ありゃ?不味かったかな??
「それとこれとは別ではなくて?
もしこの世界が“神様が実在するタイプの世界”だったらどうするおつもりですの?」
「あはは~…わたし、本当に居るとしても精霊神くらいかと思うな☆」
まぁ、いくら何でもそうそう神様に遭遇したりはしないよねぇ〜
ただ、この世界は本当に呪いはあるし、女神の加護もある訳だから一応神様って居るのかなぁ……なんてね。
「まぁまぁ、そんな事より町を見て回ろうにゃ♪」
「軽いですわねぇ……
「それでは、宿を決めてから町を見て回りましょうか?」
「んっ、またカップル別行動?」
「にゃっ!?
ゆーくん!!だったらせっかくだし芽衣さんとのんびりデートでもしちゃうかにゃ!?」
「あはは…まぁ、追っ手が居ないならそれも良いんじゃないかな。」
「決まりにゃっ!エスコートよろしくね彼氏さんっ♡」
「………貴方達には“緊張感”って言葉は無いんですの?」
「緩んでるな。特に柏木先生。日本に居た時はもっと真面目な教師だったんだが…猫人化の影響か…?
全く、コイツらは…。」
「くぅぅ…羨ましいですなぁ…小生には毒ですぞ本当に…はぁ………なんで、小生は……
「…そしてこの状況、榊原にはキツイ…か…?」
「こればかりはどうしようも無いですわよ…榊原にはそもそも彼女自体居ないでございましょう。」
「それもそうか。
しかし、そうなった経歴が経歴なだけに自業自得だろ、とも言えないな。」
「アタシも香蓮もそうでしたものね。」
「ああ。だから最初は偽装のレズビアンのフリだったんだがな。」
「せめて百合と言いませんこと?」
「百合?なんで急に花の話になるんだ??」
「…………ホントにそうゆう所ですわよ、香蓮。」
「??」
「くっ…!顔がいいッ…!!」
「あーはいはい、とりあえず宿屋行きましょうぞ百合バカップルのちくしょうめ。」
「ちょっ!?榊原っ!?アタシ達をバカップル呼ばわりは許しませんわよー
にゃはは♪
なんだかんだで仲のいいメンバーで良かったのにゃ!
わたしもゆーくんの手を引いて彩人くん達について行ったのにゃ。
「…宿、か。聞き込みだね。」
「にゃ?」
「町と言っても見張りや門番さんみたいな人は居なかった。
門番さんでも居たらオススメの宿屋とか教えて貰えたかもだけどさ。」
「あー…だから宿屋探しも聞き込みからなのね?」
「うん。芽衣のナビに良い宿屋へ案内してくれる機能でもあれば良いけどね。」
「にゃ~…ごめんね?
これ、クエスト案内用だから。」
まぁ、ゲーム仕様だからか武器屋、道具屋、宿屋なんかの位置は表示はされてるけどね。
だけど宿屋のピンキリまでは分からないし、わたしが居ない時でも対応出来るように聞き込みなんかの情報収集能力を鍛える意味でもわたしはあえてそれを口にしない。
ナビに関してだけはわたしの専売特許みたいだからね。
やがて、皆それぞれが集めてきた情報で宿屋を決めて、わたし達は町の探索に乗り出した。
まぁ、王都と比べたら流石にいくらか狭い町だから直ぐに見終わるだろうけどね。
でも大切なのは誰と一緒に行くかよね~!
という訳で!わたしはゆーくんの手をしっかり掴んでくっつきながら町を歩くよ!
うんうん、ゆーくんも満更でもない顔してるからよし♪
「にゃ〜!改めて思うけど、結構賑わってる町だね〜!」
「そうだね、多分あの森が国境の役割もしてるんだろうけど、これだけ賑わっているならこの国と王国は仲がいいんだろうね。」
「ん〜…そうかにゃ?案外、この世界の人間はレベル10あるだけでも凄いのかもよ??」
実際、町中の人々は平均レベル5。
(王国側の無能な兵士達はレベル30だったけど)
一般市民からしたらあの森は脅威なのかもしれない。
それでも森の近くで暮らせるのは………
「なにせこの町、結界で覆われてるのにゃ。」
「えっ…?」
「教会…じゃなく神社があるわね、この町は。」
「あ、うん。さっき宿屋を探している時に見かけたね。」
「うにゃん。それでね、あの神社を中心に結界が張ってあるのを感じるわ。」
「へぇ…?と言うか芽衣はそんな事が分かるの?聖女だから??」
「そうにゃね。わたしもいちおー聖女だし?
実家が神職だったりもしないし信仰心ほぼ0だけど。」
「そんな芽衣がなんで聖女してると言うか聖女になれてるの……
「さぁ?ネトゲだとヒーラーとしての聖女ロールをしていたけどね〜。」
でもホントにそれだけだ。
聖女だからINTだけじゃなくWISも上げてたけど、それは信仰心とかじゃなく叡智ステだし、そもそもキャラステータスとしての、だしなぁ……
と言うか、INT(知恵)とWIS(叡智)って意味近くない??
それで攻撃魔法力と回復魔法力に別れてるのってどうなんだろ。
まぁこの世界での表記は魔力と対魔力ステータスになってるんだけどさ。
閑話休題。
「この世界の神様適当…?」
「まぁ、聖女って意味では人選ミスにゃね〜。なんなら高位聖職者のサクラちゃんの方が余程ミステリアスで聖女っぽいのにゃ。
…とはいえ教師って職は一種の聖職ではあるけどね?
だからわたしはある意味では元々聖職者にゃ。」
「…確かに、日本に居た時の芽衣ってかなり聖職者然としてたね…皆に優しかったし…こんな僕にも積極的に関わってきたし。」
「結果的にゆーくんを惚れさせちゃったから、そこは聖職者失格かもにゃ〜…
あの頃はゆーくんに対する恋心は無自覚だったけど。」
と言うか、ケットシーになって教師で無くなり、本能寄りの言動になってからやっとゆーくんへの恋心を自覚出来た、まであるね!!
ちなみに、聖女だから恋愛禁止なんてルールがあったとしてもわたしは知りませぇ〜んにゃっ♡
…この世界、非処女だと神聖力が無くなるとか弱くなるとかあるのかにゃ?
「そんな事より町にゃ!
ほらゆーくん!あそこの串焼き屋さん、美味しそーな匂いがするのにゃ!!猫まっしぐらにゃーっ♪
おじさーん!二本くださーい!!」
「あいよっ!!嬢ちゃん巫女さんなのに元気だねぃ!!」
「あはは♪わたしは巫女の前に猫人族だからにゃ♪」
「ははっ!違ぇねぇや!!ほらよっ!串2本、銅貨2枚だ!!」
「にゃふん♪はい、お金〜♪」
「まいどっ!」
「ほら、ゆーくん♪」
「あ、うん、いただきます…あむ。」
「いただきまぁ〜す♪
ふーっふーっ……あむっ!あちちっ!はふはふ……
んぅ〜!んみゃーい♡」
「おっ!嬉しくなる程いい食べっぷりだねぃ!」
「おいしーのにゃ!
タレも絶品にゃけど、お肉もジューシィでホントに凄くおいしーのにゃ♡
店主さん!これはなんのお肉にゃ?」
「そら勿論ロックバードさ!
この辺りはよく出没するからな!」
「にゃ〜るほど!定番のお肉にゃね!
オーク肉とかもあるのかにゃ?」
「おっ!嬢ちゃんイける口だねぃ!
オーク肉はあまり出ねぇが冒険者達が狩ってきた時には入荷するぜ!
ちなみに今日は残念だがオーク肉はねぇっ!!」
「そっかぁ…あ、じゃあコレで作ってくれるかにゃ!?」
わたしがストレージから取り出したのは勿論オーク肉!
魔の森で皆が斃したオークを回収して解体したものだよ♪
ちなみに解体はストレージさんが勝手にやってくれます!
そりゃ畜産に関わりのないわたし達が解体なんか出来るわけ無いしにゃぁ。
※ネトゲのイメージが強く反映された芽衣仕様のストレージな為特別。
普通のストレージは解体までしてくれない。
「おっ?そいつぁもしやオーク肉か??」
「そうにゃ♪」
「おー!そりゃありがてぇ!!
この肉をくれるってんなら肉代分タダで作ってやるよ!!」
「ありがとにゃ〜♪なら皆の分とかも欲しいし、ここは思い切って15本よろしくにゃ!」
「ははっ!こんなにデケェ肉をくれたんだ!それくらいしなきゃバチが当たるぜ!任せときな!!」
「……僕達で斃したから元はタダとは言え、気前良すぎじゃないの?芽衣。」
「そうかにゃ?でもおいしー串焼きにはかなわにゃいよ!」
「ーはいよっ!出来たてだぜぃ!!」
「早っ!?え、いつ切って焼いたのさ!?」
「ありがとにゃ〜♪」
「いや芽衣はもっと突っ込んで!?」
「にゃ?調理スキル持ちなんでそんはもんにゃよ??」
「マジで!?」
いやいや、だって瑠花ちゃんも香蓮さんもお嬢様とは思えぬ瞬速調理じゃないのよ。
調理スキルBくらいの2人でそれなら、調理スキル(串焼き)A+の店主さんは言わずもがな、でしょ??
「あむっ♪うーん!!おいしーのにゃ!!
コレは宿屋でエールを飲みながら食べたいにゃ!!店主さんっ!やっぱり追加でもう5本っ!」
「あいよ!アンタになら好きなだけ焼いてやらぁっ!!」
「うん前言撤回するよ!少し自重しろ芽衣!?」
「だがことわーる!!」
ケットシーを止めれるとでも!?
結局、店主さんもノリノリで焼いてくれたし、匂いに釣られてお客さんも沢山寄ってきて大盛況!
わたし、いい事したんじゃないかなぁ〜?
※匂いだけでなく美味しそうに串焼きを頬張るネコミミ巫女のメシの顔に惹かれた客も大いに居た。
さて、串焼きを堪能したし、探索デートをつづけるにゃ!




