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自分自身に対する嫌悪感や恐怖、そして千川にしてしまったことを考え、眠れないまま朝を迎えた。

鏡に映る自分の顔色は、いつも以上に酷かった。


どういう顔をしたらいいんだろう、でもあんなことをしてきた奴にもう関わってこないだろう。もう一度しっかり謝るべきではあるだろうが……。そんな思いを抱えながら、教室へとたどり着く。千川の席を一瞥してみるも、まだ来ていないのか空席だ。ほっと力が抜けたのも束の間、「青山、おはよ」後ろから、警戒していた人物の声が降ってきた。しかも昨日の今日で、あんなことをした張本人へ向けて。

こいつは正気か?と疑念を抱くも、気まずい思いに耐えきれず、千川に気づかないふりをして自分の席についた。それは千川から逃げる一日の幕開けだった。

授業中後ろからの視線が痛い。プリントを回すときに視線をやれば、その先にはこちらを凝視する千川がいた。目が合えば少し嬉しそうに、にっこりと手を振ってくる千川に恐怖を覚えた。休み時間の度に声をかけてこようとするから、授業が終わると同時に教室を飛び出した。そのおかげで、昼休みなのに何も持たずに屋上まで逃げてきてしまった。何を食べても味はしないのに、当然のように腹は空く。

味覚と相反する体の仕組みに悲しくなりながらも、別に食べなくても何も変わらないと言う気持ちが勝った。息を吐きながら青山はその場に寝転がる。ポケットからフォーク用タブレットの容器を取り出し、目の前でそれををカチャカチャと振ってみる。無機質に音を鳴らすそれを見ながら「なんにも役に立たなかったなぁ」そう呟き、そのまま無気力に腕を下ろし目を閉じる。天気が良く暖かい陽射しにうとうとしたところで、目の前の陽が何かに遮られた感覚に目を開ける。

「やっと捕まえた」眩しさに目が眩み、僕のことを見下ろす千川の顔はよく見えなかった。が、早くこの場を離れなければと立ちあがろうとする。どうして僕の方が逃げ回っているのか。

「ダメだよ、ちゃんと話そう?」優しい口調でそう言いながらも、青山の上にまたがり、手首を掴んで逃げ道を無くしてくる千川。組み敷かれ手首を押さえつけられている姿はどんなに滑稽だろうか。


(もういっそのこと、こいつを脅して怖がらせて、一切僕に近づかないようにしてしまおう。)

改めて謝罪を考えていたことなど忘れ、己の自尊心を保つためにも、ここはフォークであることを武器にしようと、千川へと視線を向けた。

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