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98.黄金小麦の行方

「あー、眠かった……」


 退屈な勉強を終えたアーサーは自室へと向かっていた。だが、その足は軽い。なぜならば今日はハーヴェの部下が黄金小麦のスイーツを持ってきてくれる日だからだ。

 ケイの淹れた紅茶を飲みながら、食べる黄金小麦のスイーツはとてもおいしく憩いの時間となっていた。

 本当は毎日ほしいのだが、黄金小麦はここ最近は他国でも話題になっているため、希少になっていることと、あんまり暴飲暴食するとモルガンに嫌味を言われるため、二週間に一度で我慢しているのである。

 そう、アーサーは確かに我慢強く成長しているのである。



「アーサー様、今日はとっておきの紅茶を準備しておきましたよ。エリンさんが甘いものにあうだろうからとプレゼントしてくださったんです」

「おお、いいな!! ケイもケーキを遠慮なく食べていいからな」

「もう、私はあくまでアーサー様の付き添いで食べるんですよ」



 ほほを膨らましている専属メイドのケイだが、彼女がちょっと? 食いしん坊なのはもはやアーサーの中では周知の事実だ。

 個人的にはケイが幸せそうな顔で何かを食べるのを見るのはこっちもうれしくなるため問題ないのだが、それを認めるのは乙女心が許さないらしい。



「もう三時か……遅いな」

「珍しいですね、なにか事件に巻き込まれていないと良いのですが……」



 ハーヴェの使いは不気味なほどきっちりと三時にくる。というのも、食にこだわりを持つハーヴェは、アーサーがお昼を食べて小腹がすき、晩御飯に影響を受けないもっとも美味しくかつ気軽に時間に食べてほしいと考えているからだ。

 だから遅れたりすることはこれまでなかったのだが……


「大変です、アーサー様!!」



 噂をすればなんとやらは一人の騎士がノックもそこそこに部屋にやってきた。息をきらしているその騎士には見覚えがある。

 ハーヴェの使いでありいつも甘いものを運んできてくれる人だ。そんな彼をアーサーとケイはこっそりとお菓子の人と呼んでいた。



「そんなに慌てて一体どうしたというのだ?」

「その……倉庫に保管していた黄金小麦が……黄金小麦が盗まれたのです!!」

「なっ!?」

「え?」



 ケイの淹れてくれたお茶にも目もくれない騎士の言葉に二人の驚愕の声を響く。それも無理はないだろう。

 なぜならば建国祭で黄金小麦は一躍有名になっており、その重要度も増しているのだ。警備も当然厳重なはずである。



「夜に何者かが集団で忍び込んだものと思われまして……今朝見回りのものが倉庫を開けると地面に大きな穴が空いており、黄金小麦は盗難されたあとだったのです……」

「まじか……」

「そのため、アーサー様に献上するはずだったケーキの準備もできていないじょうきょうでして……。本来でしたら、もっと早くお伝えする予定だったのですが、こちらもばたついておりまして……」



 気まずそうにいう騎士の話を聞きながらアーサーは険しい顔でケイを見つめる。正直ハーヴェがばたばたしているのはどうでもいい。

 いや、全然良くはないのだが、そんなことよりも話を聞いているケイが露骨に悲しがっているのがわかりアーサーは胸を痛めた。


 ケイにこんな顔をさせるなんて絶対に許せない。


 そう、今のアーサーはケイにこんな顔をさせたこととおいしいものを奪った犯人に強い憎しみを出だしていた。食べ物の恨みはこわいのだ。



「それで犯人はわかっているのか?」

「はい、やり方からして砂漠の民でまちがいないかと……奴らはわざわざ近くの空き屋敷に忍び込んで魔物を使って穴をほり黄金小麦を奪っていったと考えられます」



 砂漠の民がわざわざブリテンまで来るのは本来ならばありえないことだった。騎士は簡単に言っているが隠密行動が得意な彼らとはいえ砂漠ではなくブリテンでは勝手が違いリスクも高いはずだ。

 そもそもだ。王都の近くの倉庫を狙うというのはブリテンへの挑発ともとれるのだ。



「それは許せんな」



 最近は温厚になったという噂のアーサーが激怒しているのを見て騎士は、王族として面子がつぶされたことを不快に思っているのだろう、そして、その怒りは見張りを担当していた騎士である自分たちにくると身構えたのだが……



「報告ご苦労だった。砂漠の民共には俺の方から文句を言っておく。ハーヴェには気にするなと伝えておいてくれ」

「え……それだけですか?」

「それだけとは……?」



 騎士の質問に質問で返すアーサー。これはアーサーの器が決して大きいわけではない。単に単純な性格なため責任問題などは気にもせずお菓子を奪ったやつが悪いと考えただけである。



「約束を守れなかったことを攻め我々を叱責するどころか、心配までしてくださるとは……」



 面子とかではなくおいしいものを奪われたと怒っていることに気づかなかった騎士はなぜか感極まった表情で帰っていった。



「アーサー様、黄金小麦のケーキははとっても残念ですが、せっかくお茶を淹れたのでクッキーでもいただきましょう」

「ああ、そうだな。ありがとう、ケイ」

「あ、口がよごれてますよ」



 ケイにハンカチで口を拭いてもらいながら、クッキーをつまんでこれからの事を考える。

 


 ケイを悲しませたことは許せん。国同士の外交はモルガンが担当している。あいつに詳しいことを聞いてみようと……



 口うるさい幼馴染から口うるさいが頼りがいのある幼馴染にモルガンの評価は変化しており頼ることにも抵抗はなくなってきた。

 そうしてのちにアヴァロンへいくことが厄介ごとへ巻き込まれるきっかけになることをアーサーはしらないのだった。


今月の29日にこの作品の二巻が発売されますので、よろしくお願いします。


表紙はアーサーとガウェイン、マリアンヌとなります。

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