テトル村 その2
第六節 妹の行方
カラスの攻撃によりぼんやりとしていた頭が、少しはっきりしてきた、しかしそれと同時に頭の中に何か大きな一物を感じるロクト、「とても大事な何かを忘れているような、、、」「ん??どうしたんだいロクト君!」「そんなに思いつめた顔をしてぇ、」ガラさんが心配そうな声と共に目のライトを弱くチカチカと点滅させている、するとロクトは何かに気づいたかのようにハッと立ち上がり「パムーー!!」「いるなら返事しろーー!!」「パムーー!!」とあたりに叫んだ、「どどどどどどどどどーしたんだい!!ロロロロクト君!」急な出来事にとても困惑するガラさん、そんなガラさんにかまうことなくロクトは叫ぶ、「パムーー!どこだーー!」あんな化け物がいた畑だ、もしパムがこの畑にいたとしてあの化け物に襲われている可能性は十分にある、そしていくら呼んでも返事がない、不安ばかりが膨張していく、、、不安に押しつぶされそうになったその時、ガラさんの声が聞こえた、「ロクト君!ロークト君!もしかしてだけど君が探しているのって白髪の小柄な子かい?」その以外な目撃者に目を丸くしながらづかづかと近づくロクト、「ガラさん!パムを知っているんですか!どこで見たんですか!どこに行ったんですか!パムは大丈夫なんですか!」ロクトは絶え間なく質問を投げかける、「おおお落ち着きたまえロクト君!そ、そんなに一気に質問されても答えられなくもないけど一つずつ頼むよ!」すっかり気が動転していたロクトはその言葉で少し冷静になった、「す、すみません、ガラさん、つい、心配で、、、」ロクトは沈んだ様子で言う、「まぁ仕方ないよロクト君!だって唯一の肉親だものね、、、僕にそーいった存在はいないけど大事なのはわかるよ?」「ん?どうしてガラさんが、パムは僕の唯一の肉親って知ってるんですか?」「ん?だって僕とパム君は友達だよ?それぐらい知っているさ!」その時なぜパムが最近モルスおじさんの畑に出入りするようになったのか理解できた、最近新しくできた友達、ガラクタのガラさんに会いに来ていたわけだ、「それでガラさん、パムは一体どこへ行ったんですか?」「ん~~~~、、、本当はパム君に言わないようにって言われてるんだけど、、、ロクト君の頼みだ!!教えたげる!」「でもごめんねロクト君、、、僕はこの場所がどこかはわからないんだ、今まで聞いたこともない場所でね、、確かパム君は"約束の花畑"って言ってたと思うんだけどね、、、」それもそのはずだ、約束の花畑とは、、、するととたん、目の前が強く歪み、世界が回った、そしてロクトは地に倒れ、そのまま意識を失ってしまった、、、。
第七節 約束の花畑
約束の花畑、、、それはパムと約束を交わしたあのお花畑、でも僕はその約束を思い出せない、、、とても大事な約束なのに、、、、どうして、そんなことをいうんだい、、、パム、、、目の前が光に包まれる、、、。
おそらくそれほど時間は立ってないとは思う、パムの居場所が分かり、少し安心したのをきっかけにカラスと戦った際の疲労と腹部の痛みがどっと押し寄せ気を失ったようだ、目が覚めると綺麗な青空と共に機械的な赤いモノアイが一つあった、「あぁぁ!ロクト君!目を覚ましてくれたようだね!よかったぁああ、」どうやら僕が気を失っていた間ガラさんが僕を見てくれていたようだ、カラスの攻撃で腹部に負った切り傷は綺麗に処置されていた「ガラさんって、動けたんですね、」ロクトがぽつりと言い放つ、「もちろんだよ!ロクト君!なんたって僕は、、、、ガラクタ、だからね^^」「それ、説明になってるんですか?」今まで本当に気を張っていたのだろう、ロクトの表情が少し緩む、それを見たガラさんは、なんだか少しうれしそうに見えた、「それよりロクト君、行かなくていいのかい?パム君のところへ」そうガラさんが言うとロクトはハッとして「そうだった!、ありがと!ガラさん!」と一言言い足早に去っていった。
約束の花畑はモルスおじさんの家を出て東側の壁沿いにある人ひとりやっと通れる小さな穴をくぐった先の森を抜けたところにある、テトル村の左側にある森は周りとは一風変わっており、木々の密集率が高くかつ普通の木に比べ葉の生成量も多いため、外からの光をほとんど遮断している、しかし、だからと言ってこの森が真っ暗闇とゆうわけではなく、ここにはほのかに光るキノコが自生しているため、かろうじてあたりは見える、ロクトは約束の花畑を目指しひたすらに森を進む、するとだんだんと目の前が明るくなってきた、出口が近い証拠である、ロクトは急いで出口へと向かう、森を抜けたロクトを出迎えたのは美しい鳥のさえずりと優しくまぶしい太陽の光、そして、、、あたりを埋め尽くす白と黒の可憐な花々だ。
相も変わらずきれいな景色に見とれていると数メートル先の花々がかすかに動いた、それもとても不自然に、、、そしてその得体のしれない何かはすごい勢いでこちらへと向かってきたのだ。
第八節 奇襲
数メートル先の花々が不自然に動いた、そこに何かがいる、その何かはこちらに気づいたのか、息をひそめて動かなくなった、お互いに緊張が走る、ロクトは自らの心音をうるさいほどに感じながら元動いていた所を見つめる、つい先ほど危険な存在に出くわしたばかりだ、無理もない、緊迫状態になり数秒が経過したころ、突如右後方数メートル先の花々が動き出したのだ、突然の出来事に反応が遅れたロクト、しかしその”何か”もそれを見逃さない、それは恐ろしい速度で急接近してきたかと思うと、バっ!とこちらに飛びついてきた、ロクトが振り返った時にはもう遅く、その何かに押し倒されていた、ゴスッ!、倒れた拍子にロクトは頭を打つ、視界が揺らぐ、うっすらと見えるそれはロクトにまたがるような形で上に乗っており、子供ほどの大きさだった、そしてそれは何かをこらえるようにプルプルと震えている、視界の揺らぎが止み、はっきりと見えてきた、ロクトの上にはつややかな白髪をおなかあたりまで伸ばし、胸に青い宝石のブローチのついたワンピースを身に着けた、妹、、、パムがその吸い込まれるように澄んだ蒼い瞳でこちらを除きながら、くすくすと笑っていた、、、。
第九節 帰り道
「く、ぷくく、あはははははは!」「だめだ!おなか痛い!はははは!」「アニキビビりすぎだって!そんなに社に構えなくても、あはははは!」パムは兄の気も知らないでロクトの上で笑い転げている、「誰のせいだと思ってるんだよ!」「ごめんごめん!ごめんってば!」「お前なぁ、、、すごく心配したんだからな!お前に何かあったら俺は、、、俺は、、」「そ、そんなに心配しなくても、、ただアニキがなかなか帰ってこなかったからちょっと遊んだだけだって」「とりあえず、、、無事でよかった、、、。」ロクトは両手で上に乗っているパムを抱きしめた「ちょっ!アニキ!」パムもはじめ少し突き放そうとしたものの、すぐにそれを受け入れた、「今日のアニキ、なんか変だよ、」「いろいろあってな、お前が生きててよかった、ほんとに、、、」ロクトはそう言い放つとパムの両肩をわしづかみ、力いっぱい花畑に投げた、「きゃ!」パムもそれなりに軽いので割ととんだ、「ちょ!馬鹿アニキ!なにすんのさ!」パムがほえるとロクトは声大きめで「仕返しだ!ほら!帰るぞ!」というとづかづかと歩いて行った、「ちょ!まってって!」パムも急ぎ足でついて行った、、、と、とたんパムが立ち止まった、「おいパム!どうしたんだ?」ロクトは振り返ることなく大きな声で呼びかける「アニキ、、、まずいかも」パムのあまりにも余裕のない言葉にロクトも歩みを止める、「村の方から、、煙が、出てる、、、」それを聞くや否やロクトは「パムはそこに残ってろ!!」と大声で言うと村の方へと走っていった、「待ってよアニキ!」パムもすかさずロクトの後を追っていった、、、。
今でもロクトは後悔する、この時もっとしっかり言っておくべきだったと、この時もっとしっかりパムのことを見ておくんだったと、、、、。