表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
厄災のパティム  作者: 枝豆た
1/2

テトル村 その1

第一章 テトル村


 第一節 門番の少年


 どうしてこんなことになったのだろう、あたりは火の海、村人たちは囚われ、魔物どもが暴れまわっている、村の広間には周りの魔物とは体格、風貌共にあからさまに違う個体が一匹いた、その魔物は子供の首をわしづかみ持ち上げている、「こんながきんちょがねぇ、、、ま、悪く思うなよ」そいつはそうつぶやくと、その細くすらりとした幼い首を、、、、、、、、。


 鳥のさえずりが聞こえる、草木は風になびき、心地よい音色を奏でている、「今日も平和だ、」村の門にすがりながらそうつぶやく少年がいた、彼は フェン・テトル・ロクト この村の門番の一人だ。

 ロクトは立ち上がり二三歩前へ進むと大きく背伸びをした、「はぁ、暇なだけだっつの、」突然、斜め後ろから声がした、後ろを振り返ると同い年ぐらいの少年が門右側に暇そうに腰かけていた、彼は トム・テトル・ラーズ ロクトの幼馴染であり親友、仕事仲間である、「いいことじゃないか」そうロクトが言い放つ、するとラーズは「俺は暇で暇で仕方ないけどな」と文句を言うと腕を組みうつむいた、「ちょいとひと眠りするわ、なんかあったら起こしてくれ」そうロクトに伝えるとラーズは仮眠を取り始めた。


いつもの日常、門にすがり、流れる雲や横切る動物を眺めたり、通り過ぎる風や照り付ける日差しを感じながら、平和に時を過ごす、ロクトはそんな日常に満足していた、こうやって平和に年を取って、平和に死んでいくんだと、そう思いにふけっていると、後ろから野太い声がした、「ロクト、交代の時間だ、、、」そこには優に二メートルは超えているだろう細目で短髪の大男がたっていた、「あ、モルスおじさん」彼の名前は モルス 村でも一番の大男だ、「ラーズはまた居眠りか」と一言モルスがいう、「そうですね、また居眠りですね」ロクトは答える、「そうか、、、、そういえばロクト、パムが探していたぞ?早く行ってやれ」モルスはそう言うとロクトの背中を押し門より中へと押し込んできた、「え!わかりました行ってきます!」ロクトは足早にその場を後にし、途中モルスにお礼を言おうと振り返ったが、モルスは恐ろしい気迫と共に居眠りしているラーズに近づいていたのであきらめた、そのあと世にもおぞましい叫び声が聞こえることは語るまでもない、、、。


 第二節 妹のパム


 仕事も休憩に入りとりあえずパムを探す、「家を見てみるか、」ロクトは一度家に帰る、門から家まではそう遠くなく、門を出て二つ目の十字路を右に進み突き当り右側の家である。

 「帰ったぞ、パム、いないのか?」返事はない、家の中を自分の声がむなしく響く、「いったいどこへ行ったんだ、」ふと目を落とすと、そこには木製の食卓があり、その上に小さな紙きれがおいてあった、ロクトはその紙を手に取り、内容に目を落とす、、、そこにはキレイな字でこう書かれていた「アニキが帰ってくるの遅いからかくれんぼ!私はどこでしょう~!!」とゆうことで本格的に妹探しが始まった。


 とりあえずは情報収集だ、家の向かい側に武器やがあるのでそこのおじさんにパムを見てないか聞く、「あぁ、パムちゃんね、パムちゃんならうちの店の横を走り去っていったよ、」どうやらパムは武器屋と隣の民家の間を通って行ったようだ、その先には確かモルスおじさんの家があったはずだ、そういえばモルスおじさんがパムのことを知っていたな、、、モルスおじさんに話を聞いてみよう、ロクトはモルスおじさんに話を聞くべく、仕事場である南門へと足を運んだ、「モルスおじさん!お疲れ様!」ロクトが元気よく挨拶をするとモルスおじさんはかすかに微笑みながら「あぁ、ロクトか、どうしたんだい?」と答えた「いえ、モルスおじさんがパムのことを知っていたので仕事に来る前にパムがどこへ行ったか知らないかなぁ~と思いまして」そうロクトがモルスおじさんに尋ねると、モルスおじさんは申し訳なさそうに答えた「すまないな、ロクト、パムがどこへ行ったかはわからないんだ」ロクトは当てがはずれ少し残念そうにする「そうですか、」さあどうしようか、そう考えていると横から声がした「お前まだパムちゃん探してんのか?」ラーズだ、「仕方ないだろ?あいつ紙切れ一つ残してどこか行ったんだし」多少抵抗する「まったく情けないお兄ちゃんだなぁー、ちょい耳かせ!」そういうとラーズはロクトを強引に引き寄せ、小声でつぶやいた「お前。モルスに話聞きに来たんだろ?」「そうだけど、」「てことはパムちゃんはモルスん家のほう行ったってこったろ?」「おう、」「それならパムちゃん畑の奥にいるかもしんねーな」「なんでそんなことわかんだよ」「大体パムちゃんがモルスん家らへんいくときゃそうなんだよ!」「ほら!パムちゃん待ってるかもなんだから早く行け!」そうラーズが語気強めにいうとロクトを突き飛ばした、「お、おう、ありがとな!仕事頑張れよ!」「おうよ!任せろ!」ロクトは南門を後にし、モルスおじさんの家の裏側にある畑を目指した。


第三節 モルスの畑


  モルスおじさんは大きな畑を持っており、そこで多くの野菜、食物を育てている、その畑はモルスおじさんの家の裏側にあり、入るためにはモルスおじさんの家から裏口に出る必要がある、、、パムは一体どうやって畑に入っているのだろうか、毎回モルスおじさんの家に侵入しているとでもいうのか?、くまなくあたりを散策してみると、畑を囲む高い柵に一部、ちょうど子供ならぎりぎり通れるであろうぐらいの小さな穴を見つけた、どうやらパムはここから畑へと出入りしていたようだ、しかしどう畑に入ろうか、勝手に入るのもバレた場合が面倒だ、、、そうだ、畑のお手伝いとゆうことで畑に入るのはどうだろうか、それならモルスおじさんも畑に通してくれるはずだ、モルスおじさんに畑仕事をもらいにロクトは再び南門へと向かった、、、「モルスおじさん、さっきぶりです、」「あぁ、ロクトか、パムは見つかったのかい?」「はい、たいした用事じゃなかったです、」「そうかい、それで何かようかい?」「はい、ちょうどてがあいているので畑の手伝いでもと思って」「本当かい?それは助かるね、それじゃあ僕がいない間畑をカラスから守ってほしいんだ、」「カラスですか?」「あぁ、僕がいない間だけ現れて畑を荒らすカラスがいるんだ、だから僕がいない間だけでいいからカラスを追い払っておいてほしいんだ」「わかりました、カラスを追い払えばいいんですね」「それじゃこれが僕の家のカギだよ」そうモルスは言うと、懐から一つのカギ束を取り出しロクトへと渡す、「あ、そうだロクト、僕の家の物を勝手にいじったりしないでね、危ないから」「はい、わかりました」ロクトはモルスへ一礼すると駆け足でモルスの家へと向かっていった「やる気、十分だな、」そのロクトの背中を微笑みながらモルスは見送るのだった、、、。

 再びモルスおじさんの家に来たロクト、正面玄関の鍵を開け中に入る、中には様々な防具が立ち並んでいた、どれも職人が作ったとわかるようにきめ細やかく芸がいきとどいている、そう、これらはモルスおじさんが作ったものである、モルスおじさんは趣味で防具を作っており、その防具は王都のほうでも名のある貴族や上級国民などが愛用するほどのものらしく、この村にもモルスおじさん目当てで王都の人間がよく訪れるのだが、モルスおじさんが面会を拒否するため、モルスおじさんの素顔を知るものは王都にはいない、、、そんな名のある品々を横目に奥の部屋に向かう、奥の部屋はモルスおじさんの自宅兼作業場のようだ、あたりからはモルスおじさんの生活感と趣味への熱が感じられる、作業場には今モルスおじさんが制作中の鎧があり、もう少しで出来上がりそうな様子である、相も変わらず芸が細かく繊細なつくりだ、、、少しその鎧をまじまじと見たくなり、一歩二歩と近づく、まるで何かに引っ張られるかのように鎧の近くまでやってきてしまった、鎧をまじまじと見つめていると、ふと横におそらく仕上げに使うのであろう宝石らしきものがあった、その宝石は命、生命をほうふつとさせるほど赤く、熱く、燃えるように淡く光っており、そのあまりにも綺麗な様についつい手に取ってしまう、手に取った瞬間、命の温かさとゆう言葉がふさわしいほど心地よいぬくもりを感じる、、、その手から伝わるぬくもりとその美しさに見とれていると、突如外から「ガァー!!」と野太いカラスの鳴き声が聞こえた、「そうだ!カラスを追い払わなきゃ!!」幸か不幸か畑に現れたカラスのおかげでその不思議な宝石に魅入られることはなかった、ロクトは急いで畑へと向かった。


 第四節 ヤタガラス


 裏口のドアを勢い良く開けると、目の前には大きな畑が広がっていた、ここがモルスおじさんの畑、土の香りと野菜の香りがしつこいほどに鼻にまとわりつく、急いであたりを見渡す、すると数メートル先に野菜をむさぼる黒い影が一つあった、その影は想定を上回る大きさであり、軽く膝ほどの高さはあった、「あれがモルスおじさんの言っていたカラスか、」ぽつりとロクトがつぶやくと、その黒い影、もといカラスはこちらに気づいたらしく、むくりと起き上がりこちらを向く、大きく翼を広げ「ガァーー!!」と野太い声で威嚇し飛び立った、、、かと思うと、そのままこちらへと空中からのくちばし突進を試みた、

そのカラスはすさまじいスピードでロクトへと突っ込む、反応が少し遅れてしまったロクト、くちばしが腹部を直撃する寸前で体をよじり間一髪でかわしはしたものの横腹を軽くえぐられた、「うぐぅぅ!」呻るロクト、想定外の激痛に一瞬意識が飛びかけるが何とか踏ん張りカラスへの反撃を試みる、攻撃をよけるために体をよじった反動を生かし、そのまま通り過ぎようとしているカラスを殴りかかろうとする、カラスもまさか回避をそのまま攻撃に転じてくるとは想定していなかったらしく、ロクトのこぶしは確かにカラスの胴体部を捕えていた、しかしここは野生生物、その持ち前の野生の勘により何か危険だと察したカラスは突発的に速度を上げる、しかし遅かった、ロクトのこぶしは胴体に直撃しなかったもののカラスの尾羽を地面にたたきつけそのまま尾羽をむしり取った「ガッ!!」尾羽を多く失ったカラスは軽く鳴くとコントロールを失いそのまま端にある道具小屋へと一直線に突っ込む、するとカラスはその大きな翼を目いっぱいはばたかせ垂直に上昇し、衝突を免れた、カラスは次の攻撃を繰り出そうと軌道を修正している、しかしカラスも尾羽を損傷しており、次の攻撃までにはわずかながら時間があるようだ、ロクトは次の攻撃に備え近くに落ちていた桑を手にし構える、カラスはロクトへと狙いを定め一直線に、すさまじい速度で飛んでくる、お互いにこの攻撃が最後の一手になると確信していた、、、カラスが数メートル先まで近づく、するとロクトはその手にした桑先をカラスのくちばしの先端より数ミリ左の場所に当たるようにずらす、そのたった数秒の出来事はロクトにとっては数分にも長く感じられた、カラスの口先は確実にロクトの心臓を捕えている、そしてその時は訪れた、ロクトの突き出した桑先は見事にカラスの口先のほんの少し右に当たり、カラスの軌道を右へとずらす、そしてその桑先はカラスのくちばしを撫でていき、そのつぶらな瞳を直撃した、カラスは「ギャン!!」と叫ぶと空中で大きくもがき血を振りまきながら地面へと激突し8メートル先まで吹き飛んだ、カラスが空中で暴れたことによりその大きなかぎづめが頭部を直撃したロクトもそのまま近くの草むらへと吹き飛んだ、、、戦いは痛み分けで幕を閉じた。


 第五節 ガラクタ


 しばし静寂が世界を支配した、、、先に起き上がったのはカラスだった、カラスはよろよろと立ち上がると、ロクトめがけて「ガァァアア!!」と雄たけびを上げるとそのボロボロの羽を何度もはばたかせ飛び立っていった、カラスを追い払うことに成功したロクト、しかし頭部へもろに攻撃を食らったロクトはそのまま草むらで伸びていた、、、いかほど時間がたっただろうか、「おい!大丈夫かい?」何か声が聞こえる「あらっらこれははでにやられたねぇえ」「おーーーーーい!おーきろー!」「まさか死んじまったかな?」「あのときのあの判断すごかったよぉ?まさか桑使っていなすなんてすごいねぇ!」「・・・あえ?マジのマジにやばい感じ?」そのやかましい声のおかげか意識がうっすらと回復しだしたロクト、「う、うぅう、、、」「ここは、、、」目が覚めたロクト、頭部に強い衝撃を受けた影響か記憶が少しあいまいだ、「お!!やーーーーーと起きたか!!」「もーーーーーーだめかとおもったよおぉおお!」近くで何やら男の声がする、あたりを見渡すがそれらしき人影は一切見当たらない、「こっちっこっち!したした!」ふと下方に目をやるとちょうど手のあたりに何やら小さなスクラップの山があった、その山をよく見ると山のてっぺんに何やら両手で覆えるほどの球状の機械があった、その機械は一眼らしく中央部が赤く光っていた「やーーと気づいた、初めまして!君の名前は?」「ロ、ロクト、、です。」「ロクト!いい名前だね!!僕もそんな名前が欲しいよ!」どうやらこの球体はかなりおしゃべりなようだ、さっき起きたばかりのロクトに容赦なく大きな声でしゃべりかける、「あ、あなたは一体何なんですか?」そうロクトが尋ねると球体はしばし黙ったあとこう答えた「、、、、、、僕かい?ぼくはただのガラクタだよ!名前はニュ、、、、ガラクタだよ!」「ニュ、ガラクタ?」「ガラクタだよ!」「ガラクタさん、」「そう!ガラクタ!愛称は何でもいいよ!何て呼びたい!!!!!」「じゃ、じゃあ、ガラさんで、」「ナイス!ネー―ーミングセーーンス!!!!」「大変気に入ったよ!よろしくねロクト君!!!」、、、こうしてロクトに新しくとてもやかましい知り合い、ガラさんができたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ