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#03 笑えん方のサンタクロース
落ちた。
まっ逆さまに。
勢いよく。
この赤い衣装も、真っ白だ。
もちろん頭も、真っ白だ。
初めてだった。
初めましてだった。
このトナカイさんとやるのが。
昨日言われた。
いつものトナカイさんは、体調不良で走れないと。
その時点で、悪い予感がした。
「よろしくー」
「イエイ」
苦手なタイプのトナカイさんだった。
僕は人見知りだ。
ペアをずっと組んでいるトナカイさんとだって、今までうまく喋れなかった。
5年経って、よくやく打ち解けられたのに。
その、明るすぎるトナカイさんと、打ち解けられる訳がない。
5年の付き合いのトナカイさんは、かなりやさしいタイプだ。
それで、仲良くなるのに5年。
今日のトナカイさんとは、やっぱり無理だったんだ。
サンタクロースは、華やかな世界でプレゼントを届ける、明るい感じのオジサン。
そんなタイプだけではない。
雪の上で大の字になる、笑えん方の、僕のようなサンタも、いるということだ。