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#01 朝寝坊のサンタクロース
ヤバイ。
朝寝坊した。
今日は、プレゼントの準備があるのに。
今日の夜に、プレゼントを届けるのに。
「起こしたからね」
母が、包装紙のシワを、体重で伸ばしながら言う。
「本当に? 一回だけしか起きてって、言ってないでしょ?」
僕は、かわいいピンクの袋に、お人形さんを入れながら返す。
「2分いたからね。2分間に、いろんなバリエーションのオハヨウを試したわ」
「本当に?」
「そうよ。2分経っても返事がないから、死んだかと思ったわよ」
母が伸ばした包装紙を受け取り、箱を乗せて、丁寧に折り目をつけてゆく。
「じゃあ、揺り起こしたり、叩き起こしたりしてよ」
「するなって言ったのはあんたでしょ? 一回叩き起こしたら、それからトナカイに襲われる夢を頻繁に見るって言ってさ」
「そうだったね」
「本当に危ないかと思って、トナカイに病院まで運んでもらおうとしかけたのよ」
僕の腕は、最大限のスピードを保って動く。
「トナカイは、夜のために温存しておかないとだからね」
「まあね」
壁の時計を見ながら、ヒゲのお手入れの時間が、少しは出来そうだと気づき、心のなかで笑った。