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【完結】慎みが無いと評判の令嬢です。破廉恥だの令嬢失格だのと言われますが、婚約者と離れるわけにはいきません。  作者: ごんちゃん


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(4)番外編 公爵夫人は天恵を黙秘したかった

ブックマーク1700超え、総合評価pt24000超え、2週間ランキング入り御礼として番外編を追加しました。

クラウディアとアルーシャの女子会話です。

ブクマ、評価、いいね、感想等くださった皆様、本当にありがとうございました!

王太子アレクシスと私、クラウディア・ゴールデンバルト公爵令嬢の結婚式が華やかに執り行われてから2週間が過ぎ、連日続く夜会や列席した他国からの賓客たちとの外交活動がようやく落ち着いてきた。


あの国中を震撼させた夜会から、既に4年の月日が流れている。


昨年、兄のアルドリックと親友のアルーシャが学園の卒業を待ちかねたように結婚式を挙げたので、親友は義姉へと華麗にクラスアップを果たしていた。


ちなみに、時折頂く愛ある叱責も年々クラスアップしているのはご愛嬌だ。


それもこれも、夫となったアレク様が魅了酔い解消後も、クラウディアに隙あらば触れようとするせいであったのだが……まぁ、私自身も抱きしめられたりキスされたりの触れ合いは嬉しかったりするので、言われても仕方ないなと思っている。


魅了酔い解消後、私と寝室を分けることにさえ激しく反発したアレク様だったから、本来なら戻るべきであった自宅へは結局学園の帰りに夕食を摂るだけの日帰り帰宅になってしまった。


父も母も苦笑しつつも許してくれたが、兄からは渋い顔で反対されたし、アルーシャからはせめて学生のうちは節度ある触れ合いに留めるべきだと叱責を受けた。


兄もアルーシャもアレク様に意見しても、この件に関してだけは全く聞き入れてもらえないと半分諦めているようだった。


だから私が自分で拒否しないと、どこまでも付け入られて好き放題されると言われたものの……既に一線を越えていないだけの状態であることは流石に2人にも言えなかった。


いやだって、あの綺麗な顔で可愛い癖に色気駄々漏れにして『ディア、お願い?』『愛してるよ。だから…いいよね?』なんて蜜みたいな甘い声で囁かれてみて?!


誰ですか、チョロすぎとか言ってるそこのあなた!


拒否できるもんならやってみて欲しい。


絶対無理!!少なくとも私には無理!!


実際、結婚までは一線だけは越えませんという約束を守ってくれたアレク様であったので、当然のように結婚式の夜は……うん、まあお察しですよ。


あんなにトッロトロに甘ーーい顔して『もう一回、ディアお願い?』ってあの人何回言ったかしら。


翌日の昼頃目覚めた私に、流石に謝ってくれた愛しい夫は、その日の夜にはすっかり反省したことが頭からスッポリ抜けていたんじゃないかと思う。


つまりは2週間が経過して、外交活動だけでなく、夜の王太子妃業務もようやく少し落ち着いてきた、というのが今の私の状況であった。


そして今日は、かなり久しぶりにアルーシャお義姉さまと2人で、王宮の庭園にあるガゼボでティータイムを楽しんでいた。


平民の同級生に言わせれば、女子会というらしい。


仲の良い女性だけが参加して気軽なおしゃべりをする会だなんて……なんて素敵な響きかしら!


貴族令嬢同士のお茶会は、見た目は優雅だけど正直言って選ぶ場所から出すお菓子やお茶に至るまで気が抜けない戦場だもの。


今度から私とアルーシャお義姉様と2人だけの時は、『女子会』と呼ぶことにしましょう。


嬉しくてニコニコと笑っていると、アルーシャお義姉さまが心配そうに顔を覗き込んできた。




「クラウディア、大丈夫?随分無理したのじゃなくて?」


「ありがとう、アルーシャお義姉様。他国の賓客の方々が昨日皆様帰国なさったので、やっと少し落ち着いてきたわ。ふぁ…あら、ごめんなさい」


「そちらもだけど…寝不足なのでしょ?全く、アレクシス殿下にも困ったものだわ。いくら溺愛しているからって限度があると思うのよ」



なるほど、そっちの方の無理ですか。


確かに10歳から9年間我慢してきたとか言われて、散々散々つき合わされましたけども、拒否できないのだからもう諦めていますのよ。


なんだかんだ言って、私も結婚して4年ぶりに抱きしめられて眠れるようになったことは、とても嬉しいのです。


か、回数は少し……いや、だいぶ減らしてくれてもいいかなぁとは思っていますけど。




「あはは……まあ、アレク様だから仕方ないかなと」


「貴女はもっと彼に厳しくしないとダメよ!これからは王太子妃になるのだから、流されてばかりでは生き抜いていけないわ」


「ごもっともです……いつも色々助けてくれてありがとう、アルーシャお義姉様」


「あ、義姉として当然のことをしているまでですわっ」




少々ツンデレ気味な親友兼義姉は、薔薇色に染まった頬を隠したいのかフイと横を向いてしまったけれど、その耳も赤く色づいているのに気付いていないのが可愛いなと思ってしまう。


彼女を崇拝レベルで溺愛している兄は、本当はアレク様のように遠慮なく愛でたいのだろうが、この生真面目で愛らしい彼女のことが好きすぎて人前でも常識的な振る舞いを崩そうとはしない。


そんな兄を立派だと思うし尊敬もしているが、本当はアルーシャお義姉様が人目がない場所でならば、もう少しイチャイチャしたいと思っていることには気付いてもいいんじゃないかと思っている。




「それにしても、やはり貴女の天恵はすごいわね!『完全保護』は伊達じゃなかったって、この大陸中に知れ渡ったんじゃないかしら」


「えええ……あまり嬉しくはないですが、これのおかげで今回も助かりましたわ」


「まさかまだ、あんな祝いの場で襲撃するような輩が残っていたなんてね」



2週間前の結婚式当日、大聖堂で結婚式を挙げた私とアレク様がパレード用の屋根のない馬車へ乗ろうとした時、かなり遠くの屋根の上からアレク様に矢を射掛けられたのだ。


風魔法を纏った矢はかなりの威力だったが、私をエスコート中だったアレク様には当然のように私の魔力を流していた為、傷ひとつ負うことなく矢は地面へと転がり落ちた。


犯人はすぐに警備中だった王家の影に捕らえられ、騎士団へと引き渡され、4年前の件で天恵の隠蔽に加担していたとして処分を受けた魔術師の子供だったことが後日判明している。


どうやら彼の父が処分を受け収監されたため、事情をほとんど知らぬまま孤児院へと預けられてしまったのが5歳の時だという少年は、本来なら王族を襲った時点で死罪は免れないが、まだ10歳にも届かない子供だったことや事情を考慮して私から助命を願い出た。


ゴールデンバルト家が陞爵したことを気に入らない何者かが、少年に私とアレク様のせいで父親が収監されたのだということだけ囁いていたようで、何故彼の父が処分を受けたのか教え諭すと、少年は青い顔で厳罰に処して欲しいと這いつくばったと聞いたから。


最初はアレク様にも陛下にも難色を示されたものの、最終的には隣国の叔母が支援している孤児院への紹介状を少年に持たせて隣国への国外追放処分としたのだ。




「本当に。でももう安心ですね」


「王弟殿下の天恵、初めて見ましたが驚きましたわ。『国外追放』だなんてどんな力なのかと思っておりましたけど、まさか犯罪者が二度と国内に入れないように任意の国外へ転移させてしまうほど強力だとは思っていませんでしたもの」


「マクシミリアン殿下は、『この力は外に出せないけど、国王にも不向きな力だから継承権もいらないんだけどなぁ』なんておっしゃっていましたわ」


「まあ。それってきっと早く世継ぎを作れとおっしゃっているのでしょうね」




おそらくそれで間違いないでしょうけど、それは気付きたくなかったです。


この2週間、アレク様の夜のご機嫌がやたらと良くて、嬉しいのは嬉しいのですが、流石に私の体力が持ちませんから。


子供が出来るまで毎日このペースだと流石に……とりあえずもう少し体力をつけますわ。




「……それ、絶対アレク様には言わないでくださいね」


「そうですわね。でもおそらくマクシミリアン殿下が既におっしゃっているような気は致しますけど。どちらにしても、この国の王族は溺愛体質らしいので…」


「あー……やっぱりそうですよね」




2人で顔を見合わせて苦笑を交わし合う。


こんな夫婦生活のことまで話せるような、本当の意味での友人が出来るなど4年前までの私は想像もしていなかった。


けれど、アルーシャお義姉様と友人になり、親しく付き合ううちに次第に親友となり、彼女を通じて多くの方々と交流したおかげで、今では社交界での交友関係も大いに広がり王太子妃として不足のないレベルになったと王妃様からも太鼓判を頂いている。


アレク様や家族とは違う意味で、大好きで大切な人なのだ。


ただ、親友になっても義姉妹になっても、未だに教えてもらえていないことが一つあった。


それは……。




「アルーシャお義姉様、もう義理とはいえ姉妹にもなったけれど……やっぱりお義姉様の天恵は教えては頂けませんの?」


「クラウディア……ええ、そうね。クラウディアにはもう伝えても良いかしら」


「本当ですか?ふふ、嬉しい!それで、どういう天恵ですか?」




もちろん兄のアルドリックは婚約時に、実家の両親は結婚した時に知らされたらしいが、アルーシャお義姉様はなかなか自分の天恵の話をしようとしなかった。


あの夜会後に貴族には天恵開示義務が課せられたものの、報告先は王家と神殿のみであり、一般に公表されることはない。


また、貴族以外でも初めての洗礼時に天恵を確認した神殿が、他者に利用されかねない天恵については保護又は監視が必要だと王家に報告がなされるようになったが、それも自分か家族が話さない限りは他者に知られることはない。


そんな状況であるから、自分から話そうとしない彼女にこちらから聞くことはしなかったのだが、何故か今日ならなんとなく訊いても良いような気がしたのだ。




「実は私の天恵は……『多産』なのです」


「た、さん…??」


「ええ、多く産むと書いて『多産』……つまりは沢山子供を産むという天恵ですの」


「まぁ!そうだったのですね!」


「今までごめんなさいね。隠すような天恵でもないのでしょうけど、なんとなく恥ずかしかったのです。クラウディアの天恵は誰もに認められる程素晴らしいものでしょう?確かに貴族令嬢たるもの、嫁ぎ先で幸せになる為には後継となる健康で優秀な男児をより多く産むことが大切ではありますが、幼いころはどうにも恥ずかしくて……私、可笑しいでしょう?」




誰からも認められる貴族令嬢の鑑とも言われた完璧なアルーシャお義姉様は、なんと私の天恵と比較して劣等感を抱き、若い令嬢としては子を多く産む天恵だということを他の者に言い辛いと思っていたのだという。


私が及ばないと思い憧れている部分とは違う所で、彼女は彼女で悩んでいたのかもしれない。




「いいえ!確かに子供のころや、結婚前には少々言い辛いかもしれません。ですが……とてもとても素敵な天恵ですわ!私もあやかりたいぐらい」


「ふふ、ありがとう。我がレーマー公爵家の天恵は代々子孫繁栄に関する天恵が多いのです。父はそのまま『子孫繁栄』、兄は『領地安寧』ですもの」


「そうなのですね。私、レーマー公爵家が筆頭たる所以を垣間見た思いですわ」


「ふふふ……それでね?実は…」




私が本気で素敵だと思っていることが伝わったのだろう。


嬉しそうに微笑んだアルーシャお義姉様はまるで女神様のような神々しさで……そっと自分の腹部を優しく、優しく撫でて見せた。


その行動も、こちらに向ける意味ありげな視線も、些か鈍い私にでも気付ける一つの可能性に、私は目を丸くして一瞬呼吸が止まってしまった。




「まぁ!!もしかして、もしかしてアルーシャお義姉様…お子が?!」


「しー……実は昨日分かったから、まだアルとお義母様しかご存知ないの。安定期に入るまで秘密にしておいてくださいませね?」


「ええ、それはもちろん!おめでとうございますっ!ですが、そういうことでしたら馬車になんて乗ってはいけないじゃありませんか!!帰りは兄の膝にでも抱かれて帰ってくださいましっ」




妊娠初期なのであれば、石畳の道を馬車で揺られるなんて身体に良い筈がない。


何故私は今日、彼女を王宮へ招待してしまったのだろう。


何故私は暖かい日中とはいえ、クッションのないガーデンチェアに彼女を座らせてしまったのだろう。


もしも彼女になにかあれば、兄も私も悔やんでも悔やみきれない事態になることは分かっている。


焦る私が可笑しかったのか、アルーシャお義姉様はクスクスと笑い出してしまった。




「ふふ、ありがとう。でも、天恵もあるので大丈夫ですわよ?多産ということは安産だということですから」


「もうっ!だからって油断は禁物ですわよ!ほら、アルーシャお義姉様ひざ掛けをお腹にかけて……いえ、その前に部屋のソファーに移動しましょう!ああ、私ってばなんでお庭でお茶にしちゃったのかしら!お茶も……ああ、良かったわ。このお茶は妊娠中でも大丈夫なものですわね。ほら、転ばないように私の肩を掴んでくださいませ。一緒に私の部屋へ行きましょう!」


「っ、ふふふっ!クラウディアってば心配性なところはアルにそっくりなのね?」




なるほど、あの兄なら過保護だろう。


私が幼い頃も過保護だった兄を思い出すが、あの兄と同じレベルではないはずだと思わず頬を膨らませてしまう。


4年前から急遽追加された王太子妃教育でも、女性は出産時に命を落とすことさえあると教えられた。


天恵は確かに強い力ではあるけれど、決して過信してはいけないのだ。




「アルーシャお義姉様ってば、笑っている場合ではないですわよ!そういう大切なことは早く言ってくださらないと、大変なことになることもあるのですからね?」


「あらあら、クラウディアに叱られてしまったわ。ふふ、なんだか貴女にこうして叱られるのも嬉しいものね」


「……私も、学園や王宮でアルーシャお義姉様に叱責されていたとき、嬉しかったのです。他の方とは違って、本当に私の為を思って言ってくださっていたのが伝わっていましたもの」




私の言葉に柔らかく頬を緩めたアルーシャお義姉様は、既に慈母のようで本当に美しく幸せそうに見える。


だからこそ、今度は私が大切な親友兼義姉を守るのだ。


こうして私は、まずは席を腰の冷えぬ場所へ移すべく、テーブルのベルを鳴らして侍女を呼んで席の移動を告げると、白く滑らかなアルーシャお義姉様の手を握り、私の部屋までゆっくりとエスコートをしたのだった。


後日、王太子妃にエスコートされる次期宰相夫人の姿は、いかに二人が仲睦まじいのかを示すエピソードの一つとして社交界で好意をもって語られるのだが、この時の私達には知る由もなかった。

予想外に慎み令嬢も完璧令嬢も沢山の方に読んで頂けたので、それぞれに御礼番外編を一本づつ追加することにしました。

楽しんで頂けたら嬉しいです。

蛇足だと思われた方すみません。


もし少しでも面白い!更新頑張れ!等思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいねなどして頂けたら嬉しいです。

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[一言] 蛇足だなんてとんでもない! 楽しく拝読しました。 幸せが幸せを呼び寄せる様子っていいものですね。
[一言] 一度に沢山生まれる方の多産だったりして 双子三つ子四つ子・・・
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