第1章:魔法学校
「はーい、位置について〜」サフラン先生の掛け声と同時にみんな横一列で構えた。
「スタート」の掛け声と同時にみんな杖を両手で持ち呪文を唱える。
「ファイア」・・・スピードにばらつきがあるが標的へ火球が飛んでいく・・。
中には飛んでいかない子が・・・「こら!シード!!真面目にしなさい」。
「はぁ〜ぃ」とやる気がなさそうに答えるシード。
ここは見習い魔法使いが通う魔法学校である。
「あいつ、まーた怒られてるの」とクラスの子達が騒いでいた。
「みんな集まって〜。このクラスではフェンネル君が一番上手ですね。」
「呪文を唱える速さそして正確さともすばらしいですね。」
「みなさんも見習って練習に励んでください。」サフラン先生はにこにこ話していた。
が・・・「それと、シード君はこの後職員室へ来るように。」ここは低い声で話した。
「ちぇ、また怒られるのか。もう慣れてるもんね〜だ。」シードはふてくされながら
職員室へ入って行った。
「シード君、もう君も最上級クラスよ。来月からは卒業の試験もあるのよ?」
「どうしてもっと真面目にとりくまないの?」先生は大体想定内の事を言ってきた。
「みんなは卒業試験うけて卒業できたら色々活躍できるだろうからいいよね。」
「僕には家族がいないし卒業しても身寄りのない血統の悪い者なんかとだーれも
パーティー組んでくれないに決まってる」「もぅいいんだ!!」シードがなげやりに
答えるとサフラン先生は首を左右に振りながらいつもの答えを言ってきた。
「シード。君には何度もいってるが君のお父さんは生きてるよ。生きてるどころか
魔法界ではトップクラスの魔法使いなんだよ。君がそんなになげやりじゃお父さん
帰ってきたときに悲しむよ。」サフラン先生はやさしく答えてきた。
「みんなそう言うが僕はあったこともないよ!!ねぇ、先生どうしてなの?」
そこへアニス校長先生が話しかけてきた。(魔法界の四聖の一人である。)
「なんだ、シードはまだお父さんに会えてないのか。じゃぁ今日の夜あわせてやろう」
この言葉を聞いてシードはビックリした。「ほ、ほんと?アニス校長先生」
「あぁ、約束は守ろう。但し、今後は授業を真面目に受け卒業試験も真面目に受ける事」
「うん。アニス校長先生大丈夫、僕真面目になんだってやるよ。そのかわり絶対だよ。」
シードは喜んで家に帰って行った。
「校長そんな約束をして、シード君のお父さんの行方は分からないままじゃ・・・」
サフラン先生は心配そうに話した。
「いや、大丈夫だよ。あわせる事だけはできるんだ。私ならね。」
「ただいまーーー」と家へ入ったが「まぁ誰もいるわけないか」とシードは
一人で部屋を掃除しだした。「お父さんが帰ってくる前に片づけないと」と
はりきって掃除をしているとドアをノックする音が聞こえた。
「誰?・・と、父さん?」とシードは喜び勢いよく扉を開けた。
「きゃぁ、もぅあぶないなー」いたのは同じクラスのセージだった。
「はぃ。夕御飯のおすそ分けよ。」とセージは言いながらシードへ料理を渡した。
シードは料理を受け取り「いつもありがとう」と言った後にはっと気がついた。
「そ、そうだ。お父さんの分の料理も用意しないと。」
「え?シードのお父さん今日帰ってくるの?」
「うん校長先生がそういってたんだ♪」
「それじゃぁお母さんに頼んでもう少し持ってくるよ。」
「ありがとーー」シードはもうご機嫌だった。
シードは部屋の掃除に料理の準備もすませお父さんの帰りを
テーブルに座って待っていた。夜の7時を過ぎ・・・8時・・・9時・・・・
テーブルの上の料理はもう冷えていた。
「校長先生が帰ってくるっていったもん・・・。」シードは目に涙をためまった。
丁度10時を過ぎたころだった。
「コンコン」ドアをノックする音が聞こえた。
「だ、誰?父さん?」とシードは言いながらドアを開けた。
「夜分にすまないねシード君」立っていたのはアニス校長先生だった。
「君との学校での約束の準備に時間がかかってね。」
「さぁ、お父さんに会わせてあげるよ。ついておいで。」
アニス校長先生の後をシードはついて行った。
この街の丁度中心にある塔へ行くと、アニス校長先生は立ち止りシードの方へ向き直った。
「シード、これから見せる事については誰にも言ってはだめだよ。この約束は守ってくれ。」
「はぃ、アニス校長先生。お父さんに会えるんなら僕ちゃんと黙ってるよ。」
「じゃ、この杖を持って。」アニス校長先生はシードへ杖を渡した。
「せ、先生、杖は・・魔法は学校内以外では街の中では使えないんじゃ?」
「この塔の中では使えるから・・・魔物がいるから一応君も持っていなさい。」
シードはアニス校長先生と塔の中へ入って行った。
昼間は塔の中は光が差し込みすごく明るい場所なのだが、夜中はうすぐらく怖い感じだった。
「アニス校長先生、お父さんはどこに?」シードはこの怖い感じを紛らわそうと話した。
「しっ、今から地下へ降りるからね。お父さんにはそこで会えるよ。」
アニス校長先生と地下へどんどん降りていき地下3階で地下のホールのような場所へでた。
「ぐるるるる・・・」魔物の声が聞こえた。
「せ、先生」シードはアニス校長先生の後ろへ逃げ込んだ。
「大丈夫。」アニス校長先生はそう言うと杖を持ち「トランス」と唱えた。
すると前方にいたはずのアニス校長先生の姿が見えなくなった。
そしてすぐに「トランス」と声がし、今度はアニス校長先生が見えた。
「せ、先生怖かったよ〜。」シードは涙声になっていた。
「静かに、姿はけせるけど声は聞こえるからみつからないように行くよ。」
「ぐるるるる・・・」恐ろしい魔物の声が響く中ホールの最奥部にある扉まで進んだ。
「さぁ、この扉の向こうに君のお父さんはいるよ。」アニス校長先生は周囲を警戒しながらも
やさしくシードへ話しかけた。
「残念ながらお父さんに会えるのは君だけだ。会って色々話すといいよ。」
「先生はここでまってるから」と言うとアニス校長先生は扉を開けた。
「せ、先生ありがと。」シードは勢いよく扉をくぐった。
中は真っ暗闇だった。
「お父さん、どこ?」シードが声を掛けると、暗闇から声が聞こえた。
「やぁ、シードよく来てくれたね。今日アニスから来ることを聞いていたよ」
「色々話したいところだがそう時間がなくてね。」
「シードすまないが今日はお父さんから色々話していいかい?」
「事情があって突然いなくなるかもしれないがその時はその時」
「また時期が来れば会えるようになる。アニスに頼んでおいてくれ。」
「うん。うん。わかったよ父さん。」シードはもぅうれしくて涙ぐんでいた。
「まずはシード一人にして悪いな。お母さんはシードを生んだ時に・・。」
「しかもお父さんときたら、その場所に立ち会えたのがほんの1日だったからな。」
「アニスから聞いたよ。来月魔法学校の卒業試験だってな。」
「試験がんばれ。無事卒業し、いい仲間に巡り合え。」
「でも、お父さん。僕魔法の才能ないよ。僕だけ魔法が前に飛ばないんだ。」
「サフラン先生にいつも怒られてばっかでもぅやんなっちゃう。」
「ははは、お前も俺と一緒で魔法が飛ばないのか。ははは、親子共々魔法学校では
苦労するな。」
「いいか?魔法が飛ばないってことは魔法と同化しやすいってことだ。」
「逆にそれを利用すると色々使えるから実は有利なんだぞ」
「まぁえらそうに言っても、実際それに気づいたのは仲間と旅を始めてからだけどな」
「シード。あまり長くは、話せないが今日のことは秘密にな。」
「それと、魔法についての相談はこの街ならキャラウェイに聞くと言い。」
「お父さんの魔法について色々しっているから。くれぐれもアニスには内緒な。」
「君が旅を始めれば、いずれ俺に会える方法も知ることになるだろ・・・。」
「最後になるが、旅の仲間を集めるなら父さんの昔の仲間を尋ねてみてくれ。」
「きっと、いい仲間を紹介してくれるはずだ。」
「シード。父さんと母さんの宝物だよ。いつか実際に会えることを願って。じゃあな。」
その声を最後に父さんの声は聞こえなくなった。
「ぐすっ。お父さん?」シードは涙をぬぐいながら扉を開け部屋からでた。
「シード、お父さんに会えたかな。また会える時期がくれば声をかけよう。」
やさしくかたりかけるアニス校長先生と一緒にシードは塔をでた。
翌朝、シードは目を覚ますとすぐに身支度を整えお父さんの友達であろうキャラウェイを
探しに出かけた。シードはこの街でその人物に会ったことがないのだ。
お父さんをよく知っている人なんだろうな。
「シードおはよーー」セージだった。
「やぁセージおはよー。」
「お父さんに会えたの?」
「うん。まぁ一応って感じかな?会えたよ」シードはにっこり笑って答えた。
「そうだ。ねぇセージ、キャラウェイって人知らないかな?」
「キャラウェイ?知らないねー。探してるの?」
「うん。そっかー知らないかー。まぁ色々聞いてみるよ。」
「うん。私もお母さんに聞いておくね」セージもシードが明るくなっているので
にっこり笑顔で答えた。
この街で一番人の出入りがある酒場の前を歩いていると、ふいに声を掛けられた。
「お?シードじゃないか。どうした?」クラスメートのタデとタデのお父さんだった。
タデとは魔法学校での成績が近いので、お互い通じるものがあるのか仲が良かった。
「うん。キャラウェイって人探してるんだけど、見つかんなくて。」
「キャラウェイ?キャラウェイなら酒場に多分いるぞ?」タデのお父さんが教えてくれた。
「ほんと?あぁ、でも僕だけじゃ酒場入れないな・・。」
「よし、じゃあおじさんが一緒に入ってやるよ。ほら、タデもつきあえ」
「おじさんありがとう。」
店に入ると中はいろんな人でにぎわっていた。
酒場というよりはなにかなんでも扱っているお店のような感じだった。
「ほら、あの角のテーブルに座っているのがキャラウェイだよ」
「気難しい女だから煙たがられたらあきらめろよ」そう言うとタデのお父さんは
タデとそばのテーブルへ座って飲みものを頼んでいた。
「あの。キャラウェイさんですか?。」シードはドキドキしながら尋ねた。
「あら、私に用?子供から声掛けらるなんて珍しいこともあるもんね。」
「あの僕のお父さんの事で教えてほしくって。」
「はぁ?あなたのお父さん?誰?」確かに気難しそうな人だと思った。
「あの・・・ラジカル。」
「ラジカル?・・・え・・・フェイクの子なの?あんたどうやってここ入ってきたの。」
キャラウェイは急にやさしい口調に変わった。
「昨日お父さんと話せて、ただお父さん時間なくてお父さんの魔法の事なら
キャラウェイに聞けっていわれて、それで・・・でも名前はラジカルだよ?。」
「ははは、えらい子ね。フェイクの魔法か・・確かに私以外意味分からない人おおいかも」
「簡単に言うと魔法はほとんど使わないのがフェイクの魔法なのよ。」
「そうだ。いいものあるからうちへいらっしゃい。」そう言うとキャラウェイは席を立った。
シードもタデのお父さんへお辞儀をしあわててついて行った。
キャラウェイの家へはいると一つの水晶を見せてくれた。
「よーく見てるのよ?フェイクの魔法がどういうのかよくわかるから。」
水晶の中にはあるパーティとの戦いの場面が映っていた。
「このお父さんの周りにいる人たちは?」
「あぁ、フェイクの仲間達だよ。この国のそれぞれの街にいるはずだよ。」
「あれ・・・お父さん杖をもってない!!。」
「ふふふ。フェイクは結構杖を持たないことがおおくてね。」
「パーティ同士の戦いの場合前衛の戦士同士の衝突による優劣」
「それと後衛の魔法使いが使う攻撃魔法が通常勝負を決めるんだけどね」
「見てて、敵の魔法使いが攻撃魔法をフェイクへ使うから」
「魔法学校ではならえないレベルのファイア系魔法が放たれた瞬間。」
「あ、お父さん消えた。放たれたファイア系魔法も同時に消滅していた。」
「ふふ、フェイクの得意魔法の一つね。」
その後も色々な場面を説明してくれた。
わかったこととしては今まで魔法学校で習っていた魔法使いとは異質というのが
よくわかった。
そして一本の杖を渡してくれた。
「これはあなたのお父さんの杖よ。帰ってきたら返す予定だったけど。」
そういって渡してくれた杖はありえないものだった。
「これが・・・杖?・・・これ・・ただの大きなキノコじゃ・・・。」
「あはは、冗談じゃなくてほんとよ。あなたのお父さんは普段それを使ってるの。」
「まぁだからフェイクなんて呼ばれてるのかもね。」
「彼の得意魔法は状態変化系になるわ。」
「え?そんな魔法・・学校じゃ教えてもらえないけど・・・。」
「まぁ学校じゃ学べないわね。色々旅を続ける中で手に入れるものだからね。」
「あ、でもあなた昨日お父さんに逢ったってことはあの塔の地下にいったんでしょ?」
どうやら塔の秘密を知っている人のようだ。
「うん。アニス校長先生が連れて行ってくれた。」
「ふふ、その時じゃあ、アニスなにか魔法使わなかった?」
「あ、消える魔法つかったよ。あれもその状態変化系ってやつだね」
「その呪文覚えてる?」
「うん。もちろん。唱えてみようか?」
「ここじゃだめよ。普通に魔法が使えるのはこの街の中じゃ魔法学校くらいだから」
「それに魔法はただ唱えるだけじゃ使えないよ。ちゃんと契約しないと」
「ただ一つ言える事はその魔法だけはあなたは契約しなくても使えるから。」
「え・・・。なんで?」
「それは秘密でーーす。っていうかあなたが状態変化系魔法使いだからだよ。」
「そいえば魔法学校で習う魔法って対象へ飛ばす魔法でしょ?」
「うん。でも僕飛ばせないんだ・・・。でも、来月卒業試験で・・・。」
「あはは、そこまでフェイクと一緒なんだ。こりゃすごいや。」
「いい?消えた対象物へは魔法は飛ばせない。」
「うん。あ、そうか。」
「でもね、相手に魔法を使わせてから消えればもっと効果有」
その後も色々お父さんの話をしてくれた。
「色々ありがとうキャラウェイさん。僕もがんばってお父さんみたいになる!!」
「ふふふ、その意気よ。まぁまずは来月あるっていう卒業試験がんばりなさい。」
「では、今から卒業試験を始めます。」サフラン先生は明るく話しだした。
「まずみんな3人づつパーティを組んでください。」
「組んだら各パーティそれぞれリーダーを決めて、この箱の中からくじを引いてください。」
「同じ番号くじ同士で対戦をしてもらいます。」
「えーー。先生それあぶないよー。」
「みなさんの魔法ならまだ大けがすることはないし、そばに治癒の魔法を使える方達を
呼んでおりますので、すぐに治療しますから安心してください。」
「と言っても、気をつけないと危険ですのでふざけないこと。」
「それとこの試合で勝ったパーティを合格とするわけではありません。」
「対戦中の各個人の能力をそれぞれ見ながら判断します。」
「では、みんなまずはパーティを組んでくださーい。」
みんな一斉にパーティを組み始めた。
いつも成績が悪い僕に声がかかるわけないか・・・とシードが落ち込み始めた時。
「シードーこっちおいでー」セージが声を掛けてくれた。
「いいの?セージ」
「おいでおいで〜。」
「ありがとー。」シードはにこにこ顔でセージとパーティを組むことにした。
セージはあの日の後シードが一人特訓していたのを知っていたのだ。
「あと一人誰かいないかなー。」セージが周囲を見回していると
やはりシードと同じくあまり成績のよくないタデが落ち込みポツンと突っ立っていた。
既に泣きそうな感じを漂わせていた。
「あ、タデがいるよ。タデにお願いしようよ。」シードはセージに頼み込んだ。
「タデー、おいでおいでーー」セージが声を掛けると
「しょ、しょうがないなー」タデは嬉しそうにやってきた。
「よーし3人そろった。リーダーは誰がする?」
「もちろんシードだよ」セージはにっこり答えた。
「おぉシード頼むぜ」タデも納得した。
「2人共僕の成績しってるくせに・・・それじゃ、くじ引いてくるね」
「2番だったよーー」
「おー早めなのかな?1番よりはいいよね」
「はーい。みなさんくじを引きましたね。」
「では、さっそく試験をはじめまーす。」
「よばれた番号のパーティはおくの広場にいってください。」
「1番の2組私といっしょについてきてください。みんなは休憩なり作戦なり考えてね」
・・・・・・
広場からは対戦中の感じが伝わってきた。
・・・・・・
「うぅ次にもう対戦か〜怖いねー」タデがいうと
「横一列に3人ならぶのかな?」と、セージは対戦の事を話した。
「うーんどうだろうね。まぁ僕らは横一列だと勝つのむずかしいや。」
「だって僕の魔法前に飛ばないから・・・」シードがくやしそうに言ってから
「僕たちは相手がどうあれ僕が中央で前に一歩出ておくから」
「二人ははじめは僕の後ろに立って、相手の攻撃にあわせて両脇一歩前にでて
正面の相手へ攻撃してね。」
「えぇ、それじゃシードが集中で攻撃受けちゃうよ」と二人が声をそろえた。
シードはにっこり笑うと「大丈夫だよ。それにもし僕がよけるの失敗しても、
相手が減ってる可能性も高いでしょ?」
「どうせなら勝つ可能性が高いほうでいこうよ。」
いままでのやるきのないシードとは思えない発言だった。
「う、うんわかった。」二人はシードの意見にしたがった。
奥の広場からサフラン先生がやってきた。
「はい次は2番の2組私といっしょについてきてください。1番目の組は互角でしたよ。」
立ち上がるシード達の前に別の立ち上がるパーティーがいた。
「あ、テルペン達のパーティだ」タデが少しうつむいた。
「どうしたの?タデ?」とシードが聞くと
「あの3人となりのクラスの成績結構いいやつらだよ。俺よりぜんぜん魔法強いや・・・」
とタデが弱い声で答えた。
「なーんだそんなことか。さっきの陣形でやれば強さはタデの方が上になるよ。」
「普段の成績なんか気にせずがんばろうよ」シードはつとめて明るく話した。
奥の広場には先生達が観戦に来ていた。アニス校長先生もいた。
「では今から対戦始めます。両パーティ構えて」
相手は横に3人並んだ。
こちらは縦に3人並んだ。
会場が少しざわついた。
「縦3人って何考えてんだ?」テルペン達がつぶやいた時サフラン先生の号令がなった。
相手全員が杖を両手で持ちいつでも魔法を唱えられるよう構えた時だった。
シードが持っていた杖を中央のテルペンへ投げつけた。
予想外の事で相手の動きが一瞬ぶれ・・・相手3人ともが唱え始めた。
「ファイア」テルペン達3人は一斉に先頭のシードめがけて攻撃をしかけた。
「ゴォッ」とテルペンの放った火球で杖が焼け落ちた。
それとほぼ同時だった。
「トランス」というシードの声がしシードの姿が突然消えた。
目の前のシードがいなくなり「うぁ」とタデが一瞬声をあげたが、
打ち合わせ通りに脇に飛び出し一歩前にでると、正面の相手めがけて魔法を唱えていた。
セージも同様に動きを合わせた。
「ファイア」二人の火球は正面に飛んで行った。
「ゴオッ」「うぁあっ」「ぐあぁっ」相手パーティ2人は吹っ飛び、一瞬でテルペン
一人になっていた。
「くそっどうなってんだ」テルペンが杖を構え次の魔法を唱えようとしたときだった。
「ファイア」と叫ぶシードの声とともに「ゴオッ」と火球がテルペンに当たった。
「ぐあっ」テルペンが倒れた側にシードが現れた。
「はい。それまで」とサフラン先生が止めに入った。
「やったぁ、すごい勝てたよ。俺の魔法つえーー」タデが喜びとび跳ねた。
セージとシードはほっとした表情で目を合わせるとにこっとお互い笑っていた。
「シード君達パーティは横の広場へ。テルペン君達は治療を受けたら元の広場へ
戻ってください。」
「すごいすごい。テルペン達は強いパーティなのに勝っちゃったよ。」タデは興奮していた。
「ほんと、シードが消えた時びっくりしたよ。あれはなに?魔法?」
「うん。魔法だよ。お父さんが得意としてた魔法なんだって。」
「こないだ酒場で話してたキャラウェイさんが教えてくれたんだ。」
「すっげーー。うわーー。これで俺達合格なのかな?。」
3人共うれしそうに横の広場へいくとそこには既に1番組で勝ったパーティが休憩していた。
「やぁ、君たちも合格おめでとう。」不意にそのパーティの子が言ってきた。
「えぇ?合格なの?」3人共びっくりして聞き返した。
「サフラン先生がこの広場に夕方までに入った子達は合格っていってたからおめでとう」
「やったぁーーー。」3人はぴょんぴょん跳びはねて喜んだ。
その後も広場へ入って来る子達は喜びあっていた。
夕方が近づいたころアニス校長先生が広場へやってきた。
「みなさん、今日はよくがんばったね。ここにいる子達は魔法学校卒業です。」
「明日からはそれぞれ目指すものへ向けてがんばってください。」
「これは君たちが正式に魔法学校を卒業していることを証明する指輪です。」
「当面は卒業したといってもまだまだ見習い期間中ですので、くれぐれも無茶をしない事」
「では、卒業おめでとう」アニス先生はそう言うとシードへにこっと微笑んだ。
シードもにっこり微笑みセージとタデと3人で学校の校門へでた。
校門の周囲では生徒達の両親がまっていた。
無事卒業できた子、卒業できずに別の道へ進む子それぞれだが両親はやさしく迎えていた。
セージの両親も立っていた。
「セージ」両親がセージへ声を掛けると
セージは笑いながら指輪を見せた。
「おめでとう」両親はやさしく少しほっとしたようにセージをなでた。
「タデー」タデのお父さんお母さんも迎えに来ていた。
「かあちゃーーん」タデは泣きながら2人の元へ走って行った。
「何も言うな何も言うなよくがんばったな。明日からは一緒に畑を耕そう。
農業はいいぞー。」両親は既に決めつけていたようだった・・・。
「ちょ・・・、俺受かったよ!!」
「わかってるわかってる。大根を育てるのは楽・・・え?」
「ほら、この指輪みてみてきれいでしょ」とタデは指輪を見せた。
・・・・・
「おぉ息子よ〜信じてたぞーーー。」タデのお父さんは号泣していた。
シードはその様子を少しうらやましそうに笑って見ながら家路についた。




