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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第5章】勇者不在の一千年間
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Ep.82 過ぎ行く時に想いを乗せて

長い月日の中、幅広い知識を得たラーテル王国の発展する様はまさに見事の一言であった。首都にあたる王都リコアは瞬く間にその姿を変えていった。

技術と魔法が組み合わさり、互いに互いの長所を引き上げる。

最早、王都の建物一つとっても他国には容易に真似できないものとなっていた。


ラーテル王国の技術的革新から二百年程経った時に、遂に王城が新たに建設され、宙に浮かぶ城となった。


宙に浮かぶための魔力は、王城直下に存在する謎多き迷宮の一つである、『永久の迷宮』より溢れ出す星の魔力を利用している。


それでも足りない程過剰な量が放出されているため、一部は街の防衛の維持に回し、一部は特殊な方法で魔石に溜め込み、貯蔵している。







暗黒戦争から数百年と経ったが、戦争に紛争、争いというものはなくならない。


あの、聖カーリエ国でさえ、革命の中で旧体制は倒れ、新たな体制が生まれた。




国の成長を見るのは楽しい。

百年前は技術も何もかもが幼い国であったが、今では世界を引っ張る国の一つになっている国もある。

自国の強化を徹底的に行い、圧倒的な技術大国となり他を寄せ付けない状態となっているラーテル王国だが、その王アルティオは他国の成長を見るのが好きだった。自身では趣味の一つとして確立されている。


新たに生まれた国がどういう道を辿り、どういう国になるのか長いときの中でゆっくりとそれを見る。

悠久の時を生きるアルティオにとって楽しさを与えてくれる数少ないものの一つだ。


だが、変わるということは、代わりに何かを捨てるということ。

その捨てたものをアルティオは覚えておくと決めている。彼らが忘れても自身が覚えている。それならば、過去の物にはなるが失われた物にはならない。


長く生きる彼だからこそ、偏見も間違いもなくそれを残すことができるのだ。






ラーテル王国の初代にして数百年統治してきた王、アルティオ・オル・ラーテルは自身の執務室の高級感溢れる黒い革の椅子に深くもたれかかった。椅子の縁に後頭部を寝かせ、天井を見上げていた。


魔素体になってから、疲れというものを随分と感じなくなっていたが、一応存在する。


ここ最近は、過去数百年の中ではかなり動いた方だ。今になって疲れがドッと押し寄せてきているのかもしれない、そう思ったアルティオは少し仮眠を取ろうと目を瞑った。


夢か記憶か、そんな曖昧なイメージが脳裏に映った。


それは、数百年前、まだナツトが生きていた時の会話であった。


「アルティオ、僕はね外来種が嫌いなんだ」


「外来種?どういう意味だ?」


「あぁ、そっか。こっちではまだ一般的ではないのか。ここで言う外来種は、元々その場所に生息していなかったけど、何かきっかけがあってその地へやって来た生物のことだと思ってね」


前置きを置いて、ナツトは話し始めた。


彼のいた世界では、人の手によって様々な生物が運ばれているそうだ。食用であったり、観賞用であったりと目的は様々であったが、それらの管理を諦めた人々の手によってそれらが元いた場所とは違うところに放たれているのが絶えないらしい。


そのせいで、放たれた生物がそこで大繁殖を遂げ、元いた生物の居場所を排除しているのが現状であり、元に戻すのはきっと不可能なのだろう。


「まぁ、外来種を嫌うのはお門違いで、本当に嫌うべきは彼らを野に放った人間なのだろうけど、在来種を駆逐する彼らを好きにはなれないのは確かかな」


難しい問題だ。この世界はまだナツトのいうような状況には陥っていないが、こちらの世界でも十分に起き得る問題だ。今後しっかりと対策を講じる必要がありそうだ。


「で、ここからが本題なんだけど…」


そんな考え事をしていたら、ナツトが本題を切り出してきた。外来種の前置きを話した上で彼は言った。


「さっきの話に照らし合わせると、僕は外来種にあたるんだ」


確かにそうだ。アルティオにとってナツトはかけがえのない仲間であるが、彼が違う場所からこの星に来たことは紛れもない事実だ。


「現状、この星の技術力とか文化の高度さで言えば、地球より低い。もし、今後僕のように召喚されたり、前に言った転生者みたいな存在が出た時、彼らの知識一つでこの星で育つはずだった文化は破壊される」


自身の喉からごくり、と唾を飲み込む音が聞こえる。


「一度浸透してしまえば、巻き戻すことは不可能だと思う。確かに地球の文化は素晴らしいものだと思う。でもそれは地球のものであって、この星のものではない。彼らの多くは自身の知識を振るう時にこんなことは考えないと思うし、彼らに悪気はないのが殆どだと思う。でも、それはこの世界のものを壊してでも押し広めるものでは無いと考えてる。……管理が行き渡っていれば、周囲に与える影響をコントロールすることはできるはず」


ここでナツトは言葉を切って、再度アルティオの目を強く見た。


「だから、転生者たちに対しての対策を手遅れにならないうちに打つのを手伝って欲しい。彼らが、何を行おうとするのかは粗方記憶している。それを共有して、該当する者を見つけたら監視、確保出来る様に」


随分思い切った決断だ。それ即ち、ナツトの言う転生者たちを炙り出し、管理するということだ。


だが、確かに育つはずだった文化を唐突に現れた未知の文化に踏み潰されるのも不本意である。


アルティオの決断は決まった。


「わかった。手伝おう」


これにより、特に転生者たちを特定する大きな手段の一つが確立された。


尤も、それを実用段階まで持っていったのはアルティオ一人である。実用段階に至るまでにナツトは既に亡き者となっていた。


転生者は本当に現れるかは不明であったが、各国に派遣した諜報員…スパイの報告より、極々稀にこの世に産まれていることが判明した。アルティオは彼らを国に取り込み国力を上げることに繋げた。


ナツト死後、百年もすればラーテル王国の技術力が大幅に上がっていた。


その頃にはラーテル王国に限れば、転生者の知識が流入しても揺れない程度には文化も技術力も向上していた。もう浅めの知識程度なら必要ないぐらいには。


すべての転生者を網羅することは不可能だ。直にどこかの国で彼らの知識は広まることになる。


だが、その頃にはこの国は更に発展しているだろう。





自然と目が開く。

僅かな時間だが、眠っていたらしい。


気分は寝る前よりだいぶ良くなった。

短時間でも睡眠を取ることはやはり大事なことだな、と久しぶりに思うアルティオ。


先ほどの夢を脳裏に思い出しながら、アルティオは友との約束を守るため、世界を敵にしてでもこの国を守り通すことを改めて心に刻んだ。



技術が発展したことでナツトに施した転生魔法の詳細も明らかになった。

転生は術発動から千年後。これの確証が得られた。

今はあれから約八百年。


もう、あと少しだ。



書き直したぞ、ホントやっちゃったよ。


これにて、五章終わりッ!まとめはいれるかもだけど、皆さんお疲れ様でした。結局長くなってしまったのは本当に申し訳ない。終わり方がまだいけそうと思われるかもですが、特に大きな出来事がなかったのでスキップです!


さて、それはそうと、これで前置きは御終い。序章、終了。前座、終了。次章より、本当の意味で本編、開始です。

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