Ep.79 新参者
「くそっ!何だって言うんだ。どうして急にこうなっているのだ!?」
「辺境で確認された、分岐した新たな宗派だろう!?なぜもっと調査して、その危険度を調べなかった!このような事態に陥る前に根絶することは可能であったはずだ!」
「規模は!?奴らの規模はどれくらいなのだ!」
「既にこの都市の近くまで来ていると聞いたぞ!本当か!?」
「ええい、兵士共は一体何をやっているのだ!無能どもめ」
その日、城内は騒がしかった。
ここは、この星で最も信仰を集めている宗教国家、「聖カーリエ国」だ。
滅多に集まらない重鎮たちが一堂に会するこの日、国中で最近新たに生まれた宗派の信徒たちが蜂起したのだ。
そして、彼らが武器を手に首都へと向かって来ているというのだ。そして、その数があまりにも多いため兵士でも手に負えないレベルになっていた。彼らが声高にして叫んでいるのは、「現教会の体制への不満」だ。先の暗黒戦争で生活が困難に陥った民たちを何の支援もなしに放置し、あろうことか私欲のために税金を使っていたことなどに対し、民たちの不満が爆発した。
さらには、それまで自身が信仰していた神が救ってくれないと言う不届き者までいるそうだ。
重鎮たちは慌てる。このままいけば確実に自分たちの元へ来るからだ。
だが、ある者の一声で黙らせられた。
「狼狽えるな。民たちが蜂起したのは確かに重大なことであるが、所詮は一市民。この場には我らが誇る騎士もいるのだ。質で言えば、こちらの兵の方が上よ」
「お、おお!教皇様!そ、そうですな!我ら聖国の誇る最強の騎士たちにかかれば、農業が本職の奴らなど恐れるに足りませんな」
「左様。それにこの場には重鎮が全員揃っている。異教徒どもを一掃する手立ても思いつくというものよ」
先程までの慌てようとはまるで別人。教皇と呼ばれた長い髭が特徴的な老人の一言によって、その場は謎の自身に満ち溢れていた。
「では、まずは街中の兵士に連絡を取り、どこまで異教徒が来ているか確認しましょう。私の予想ではこの地が最後の砦となるでしょうな」
そういった、高齢の男性が魔法通話機を起動し、兵士に連絡を取ろうとする。
「必要ありませんよ」
それをその場にいた一人の男が制止した。しかも発言したその男は、会議で話し合っていた重鎮たちの一人の部下。つまりは、後ろで控えていた者だった。
「何!?」
「なんだ貴様!誰が発言を許可した!」
「ジャッコア!貴様、ふざけた真似をするな!」
当然、重鎮たちは大激怒。一部下の分際で自分たちの許可も取らずに発言したその男を赦すことはできなかった。
「ウーロ大司教様…ああ、いやウーロ。これまでお世話になりました。貴方に使えていた日々は心底退屈で、反吐が出そうで実に大変でしたよ」
ジャッコアと呼ばれた男は吐き捨てるかのようにそう言った。
「き、貴様!覚悟は出来ているのだろうな!?」
「覚悟?さて、なんのことやら。覚悟が必要なのは寧ろ貴方方です」
「なんだと!?」
「本日をもって貴方方には歴史から消えてもらいます」
「なっ!!き、貴様ァ!」
「衛兵!!」
二人のやり取りを静かに見守っていた教皇が叫んだ。その瞬間、迅速に訓練された動きで衛兵がジャッコアを囲む。それぞれがその手に持った槍でジャッコアを牽制する。
「ジャッコア、貴様さては今国で騒いでる者共の仲間だな?」
「ほう、流石教皇サマ。察しがいいですな。それで?そうと知ったらいかがされます?」
「聞きたいことがある。衛兵、その者を即刻捕らえよ!」
その言葉で、衛兵たちが一斉に動き出す。
「無意味なことを」
「何だこれは!?」
衛兵たちが困惑の声を出す。ジャッコアを捕らえようにも何か見えない壁のようなものに阻まれ、捕らえることができなかったのだ。
「結界か!?」
衛兵の一人が直感で感じたことを口にする。
「ふざけるな、貴様らの言うチンケな結界と一緒にするな。貴様らごときが私に触れられるとでも思ったか?」
「成程、能力という訳か。だが、貴様それだけで私たちを殺せると思っていたら随分と傲慢だぞ?」
教皇が煽る。実際教皇の傍には聖国が誇る最高最強の騎士が四人控えており、守りも攻めも隙がなかった。例え、ジャッコアが能力を持っていようと問題なく対処できると踏んでいたのだ。
それに聖国にはまだ切り札がいた。
「勇者と聖女も呼べ。こいつはこの場で確実に捕らえる」
そう、魔王を倒した勇者がまだいる上、回復に特化している聖女もいる。これだけの戦力が集まれば、ラーテル王国の英雄たちでさえ倒せるはずだ。
「ふ、死んでますよ。勇者は既にね」
「何!?ふん、下らん嘘は醜いぞ、異教徒めが」
「それに、私の役目は貴様ら全員を殺すことではない。貴様らをこの場に留めておくことだ。こうやってね」
次の瞬間、透明の壁に阻まれていた衛兵たちが一斉に押し返されていった。
いや、壁が広がっているのだ。見えない壁はみるみる広がっていき、教皇たち重鎮を押すのかと思いきや、壁の中に取り込んだ。
しかし、教皇の騎士たちは取り込まれなかった。
教皇は驚いた。まさか、選択的に対象を壁の中に入れるか入れないかを決めることができるとは思っていなかったからだ。
だが、教皇の余裕は崩れない。
「ふん、騎士から離せば私たちを簡単に殺せるとでも?あいにく___ 」
「五月蠅い、よく喋る爺だ、全く。少し待つことも出来ないのか?」
「何?」
「言ったでしょう?私の役目は貴方方をここに留めておく、と。ほら、来ますよ彼らが」
ジャッコアがそう高らかに宣言した瞬間、部屋の壁の一角が吹き飛んだ。
突然の轟音に重鎮たちも衛兵たちも混乱し、あちこちで騒ぎ出した。
一部衛兵たちは爆発に巻き込まれたが、壁の中にいた重鎮たちは壁に守られ全員無傷であった。
徐々に爆発によって生じた煙が晴れてくる。それに合わせて徐々に場は落ち着きを取り戻す。
場が静かになると、ジャッコアが煙の中に向かって声をかけた。
「なかなか、派手な登場だな」
「はっはは、そこは目を瞑れ。時間通りに到着しただろ?」
「ホホホ、結果を見ればですがな」
「そーそー、私がわざわざ迎えに行って場所を教えてあげたことに感謝しなさいっての」
「皆様、それよりもやることを済ませてはいかがでしょう?」
「勿論さ」
煙が晴れる。煙の中から出てきたのは見た目から四人の男女。四人の内三人は仮面をつけており、顔が見えない。唯一仮面をつけていない男は、見た目から歳は二十を少し過ぎた程度で一番豪華な服装を身に纏っていた。深緑の髪と瞳を持ち、周囲に視線を配る。誰もが見てもこの人物が今来た侵入者たちのリーダーであると察した。その男は一歩前に踏み出して一言言った。
「どうも、旧時代の重鎮たち!私の名はギフト・ナルオンデルク。君たち、カーリエ教に代わる真カーリエ教の教祖だ。短い間だが宜しく」
う~ん、今週で終わらなかった。次週分でようやく五章おしまいです。
長くなって申し訳ない。
ちなみに今週二話更新です。
なろう小説あるある~。
読みたい小説、更新止まってる。
悲しい。




