Ep.78 真・暗黒戦争~終焉~
それから半日が経ち、ラーテル王国の「魔の狂乱」は収束した。
ほとんどの地域の避難は思いの外スムーズに行え、人々の移動がに行えたのが大きい。
しかし、魔物の発生地点の近くの居住区の人々や騎士たちから少なからず犠牲者が発生した。
こればかりは、仕方ないとしか言えないのだが、それでも対応が一部地域で遅れてしまったのは確かである。犠牲者ゼロというのは理想論でしかない。
そりゃ、ゼロであればいいに決まっている。だが、無理なのだ。これはハッピーエンドで終わる物語ではないのだから。
彼らの追悼の儀式を終息後、すぐに行い全国民で彼らの来世を祈る。
この世界では、死後の世界や来世があると信じられている。
一番大きな宗教である「カーリア教」の教えの中にこれに関する項目があるということが一番の理由だ。
国民一人ひとりから打ち上げられる温かく黄色い光が空を埋め尽くし、やがて消えていった。
それから一時間後。
アルティオたちは絶賛、会議中であった。
自国の安全はとりあえず確保できたが、今後二波、三波が来ないとは限らない。引き続き騎士たちには各地の警戒を任せることにした。当然最優先は都市部である。
そして、この懸念があるからこそ、他国への支援が難しい。ラーテル王国は比較的簡単に魔物を討伐できたように思える。だが、他国にはアルティオたちのようなぶっ飛んだ兵力があるわけではない。また立地条件など様々な要因が絡む。
流石に自国の兵力を減らしてまで、他国には回せない。よって、ある程度は彼ら自身の力で切り抜けてもらう必要がある。
「アルティオ様」
「どうしたフィーディース」
「ティアメシア殿下より、面会の希望です」
「通せ」
ティアメシアは、同盟国サーラ王国の第一王女である。今、ちょうど社会勉強ということでラーテル王国に滞在していた。
そんな時、「魔の狂乱」が発生したのだ。
軽く挨拶を済ませ、早速本題に入る。
「ご多忙の中、面会の許可をいただきありがとうございます。アルティオ陛下」
「気にするな?用件を聞こう。君のことだ、相当緊急の話だろう?」
「…はい、実は先ほどから母、いえサーラ女王陛下と連絡がつかないのです」
「サーラ女王陛下と?詳しく教えてくれ」
ティアメシアは説明した。
最後にサーラと連絡したのは三時間前で、魔法通話越しだったという。
連絡手段として用いた魔道具はティアメシアとサーラの一対一用の特別に用意されたものであり、サーラはこれを肌身離さず持ち歩いているそうだ。これまで連絡して繋がらなかったことは何度かあったが、一時間以内で何かしらの連絡は来ていたのだという。
サーラ王国はエルフの国ということで、他の国よりずっと魔法に関しての知識や技術がずっと高い。少なくともラーテル王国が学ぶほどには。
連絡では、他国同様、大量の魔物の群れが到来しているが確実に討伐できているようだった。
胸騒ぎがした。
最悪が頭をよぎる。
アルティオはすぐにサーラ王国に連絡を入れた。
繋がらなかった。
緊急事態だ。流石にラーテル王国からの連絡が来て、誰も対応しないのは不自然だ。間違いなく何かがサーラ王国に起きている。
そのとき、ふとアルティオは嫌な予感がして別のところに魔法通話をかけた。
場所は、サタナル王国。アルティオたちの故郷である。
そして、こちらも繋がらなかった。
その事態に、その場にいたミューカやオルウェル、マーヤも深刻そうな表情を顔に表した。
ミューカがすぐに自身の故郷であるグラル王国にも連絡を入れたが、こちらも繋がらなかった。
続いて、各国に派遣している者に連絡を取ってみたが、こちらも繋がる様子はなかった。
「会議は中止だ。直ちに現地に赴き、状況を確認する」
「陛下、失礼ながら危険では?」
フィーディースが待ったをかけた。
「確かにそうだ。だが、今すぐ行かなければならないと感じている」
「畏まりました。陛下が不在の間の対応はお任せください」
「ああ、任せた。皆、行くぞ」
かくして、アルティオ、ミューカ、オルウェル、マーヤ、ティアメシアは現地へ向かうことになった。
アルティオ、ティアメシアはサーラ王国へ、オルウェル、マーヤはサタナル王国へ、ミューカはグラル王国へそれぞれ転移した。
「なっ…」
「お、お母様!」
アルティオが転移したのは、サーラ王国の遥か上空。
転移して地上を見下ろしたときの景色は、一言で言うと「絶句」だ。
国が、文字通り無くなっていた。そこにあったはずの城、建物そのすべてが無くなっていた。かろうじて残った建物の残骸からその建築様式が確認でき、その場にサーラ王国があったことを物語る。
無くなった建物の代わりに地面に巨大なクレーターが複数個できていた。
まるでそこにあったものが丸ごと飲み込まれたかのように。
誰か、生存者はいないのか。
そう思い、魔力感知で国があった場所を虱潰しに見てみるが、反応はなかった。
「クォルデン」
アルティオはその場に、“色”の一人であるクォルデンを呼び出し、ティアメシアの護衛を任せた。アルティオ自身はすぐに転移し、オルウェル、マーヤの向かったサタナル王国へと向かった。
嫌な予感は的中していた。
サーラ王国と同様。国のあったところが何かに食べられたかのような大きな穴を複数残して消失していた。座標は間違っていない。
魔力感知を試してみても、反応に引っかかるのはオルウェルとマーヤの二人のみ。
アルティオは気付かなかったが、周辺の動物たちの反応も確認できなかった。
脳裏に、友人を犠牲にしてしまった記憶がよぎる。確証はないが転生魔法に頼ったが、手の届かないところに行ってしまったのは確かだ。
アルティオの目に映る景色から徐々に色が無くなっていった。
ふぅ、ギリギリセーフ。複数話投稿は今回は叶いませんでした。
さて、そろそろというかようやく五章も幕引きです。
章タイトルには一千年間とか謳ってますが、正直なところここまでの話がメインなので。
ここから先は二話で〆たいところ。
内一話はダイジェスト的な感じになるかなぁ…と。つまりは千年ぶっ飛ぶ。
という訳なので、できたら二話投稿で終わらせたい。




