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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第5章】勇者不在の一千年間
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Ep.73 暗黒戦争~介入~

三代目勇者と魔王との戦闘が開始されて約二十分。


戦闘は熾烈を極めているが、現状魔王の方が優勢か。


勇者の攻撃は単調であるが、強力だ。だが、魔王はその再生能力の高さで受けたダメージを瞬時に再生しなかったことにする。


流石は魔王というだけある。同じ吸血鬼の部下とは再生能力の性能が段違いである。


しかし、魔王は勇者の攻撃が単調であり、容易に崩せそうだが、なかなか崩せないことに若干の焦りがあるようだ。


対する勇者は、まさに恐れ知らず。何度も向かっては何度も弾き返される。


この戦闘におけるキーマンはやはり聖女である。この聖女、立ち回りが上手い。常に魔王と自分の間に勇者が挟まるように動き、的確に支援を行なっている。

このニ十分、陣形が崩れないのだから、相当な手練れである。生半可な者では一分と保たないだろう。


しかし、此度の魔王は弱いな。以前の魔王なら二人で相手取るということはほぼ不可能であった。それに先の魔王は転移魔法を使っていたが、今の魔王は使わないのか。それとも使えないのか…。





そして意外にも魔王の部下を引き受けている兵士たちも部下相手にいい感じに粘っている。


彼らは一人一人が自分が何をしなければならないかを理解しているようで、無茶な行動には出ない。どこかの勇者とは違って。


また、三人の部下もそれぞれ分断し、一人当たり六人ほどで相手している。


だが、こちらは回復役がいないということで徐々にダメージが蓄積していっている。いずれは、負けるだろうがそれは少なくとも一時間以上先の話だ。時間稼ぎという点では申し分ないだろう。





それからしばらく膠着状態が続いた。それは魔王と勇者、聖女の戦いも部下と兵士たちの戦い両方に言えた。


だが、両軍の命運を分けることになった展開が起きた。


それが起きたのは、魔王の部下と兵士たちの戦いの一つ。


魔王の部下の一人がしつこく耐える兵士たちにとうとう痺れを切らし、周りのことなど気にすることなく、全力で全方位に魔法を放ったのだ。


上下左右、文字通りあらゆる方向に常人が当たれば死を迎える魔法が飛び交う。


魔王の部下の魔力を殆ど全て消費するその大技に、その部下と戦闘していた兵士たちはなす術なく、消し飛ばされる。爆炎と轟音が辺りに舞い散り、その中でその部下が大きく口を開けて嗤っていた。


あたかもそれはストレスから解放された子どものような幼稚さを感じさせた。


戦っていた兵士たちはこれによって死亡。戦況は一気に魔王有利に傾いたと一見思われるが、死亡した兵士たちは犬死ではなかった。


この魔王の部下が放った魔法の一つが、近くに位置するサーラ王国の領土に落ちたのだ。

サーラ王国、つまりはエルフの国。

そう、ラーテル王国の同盟国である。


「サーラ王国より通達。サーラ王国の領土内に対して、魔王軍より攻撃を確認。条約により、軍事力が完全でないサーラ王国に代わって同盟国であるラーテル王国が魔王軍に対し宣戦を布告する」


ラーテル王国はサーラ王国と同盟関係を築いた際、いくつか取り決めを決めていた。その中の一つに、サーラ王国の軍事力が万全でない期間、ラーテル王国が代わりに戦うという項目を入れていた。


これは完全に魔王戦を想定したものであるが、これがあるため、サーラ王国には他国は下手に手が出せない状況にあった。ちなみに、この軍事力が整うまでの期間は年数が決められているが、それは今は問題ではない。


今大事なのは、この取り決めが発動されたということである。兵士たちが粘るに粘った結果、彼らはラーテル王国の参戦を引き出すという大金星を挙げたのだ。


ラーテル王国がその重い腰を上げた。

アルティオは、能力を使ってサーラ王国に待機するよう命じていた、友の一人に連絡する。


「マーヤ、宣戦布告は終了した。魔王以外の部下を討伐してくれ」


「了解!アルティオ!鳥の視覚情報、共有してくれる?」


「わかった」






マーヤは、サーラ王国の国境付近に立っていた。


少し前まで、ラーテル王国のある地域の防衛を任されていたが、魔王軍がサーラ王国の近くで大規模な戦闘が行われるということで、ここに派遣されていた。


「あ、来た」


アルティオからの視覚共有が来た。マーヤにはアルティオの見ている魔王たちとの戦闘状況が見えている。


「これが魔王ね、了解」


マーヤは瞬時に誰を倒さなければならないのかを理解した。

アルティオの言う勇者の戦闘というものは確かに杜撰であるが、どこか可能性を感じる。

確かにこれから先の展開がどうなるのか気になる。


そのためにも、邪魔者は排除しなければならない。


「…!そういえば、試し斬りの魔物との戦闘は除いたら、実戦でこの武器使うの初めてかな?行くよ、変幻金球属(マキュリアム)


マーヤは収納魔法からそれを取り出した。マーヤが変幻金球属と呼んだそれは、傍から見たらただの人の頭ほどの大きさがある白銀に光る金属の球体であった。


それは宙に浮かび、ゆっくりと上下に揺れている。


これは、ラーテル王国が新たに作成したマーヤ専用の武器である。マーヤの能力、戦闘スタイルに合わせた結果生まれた武器である。


変形(デ・フォルン)


ぐにゃり、と金属球が変形しだす。まるで粘土でものを形作るように徐々にその形を整えていく。

金属球は、いつしか剣になっていた。


マーヤはそれを手に取り、軽く振る。次いで、剣に再び能力を行使すると、剣先がぐにゃぐにゃとひとりでに折れ曲がる。

既にわかっていたことだが、問題ないようであった。


「さて…確か吸血鬼だったっけ?再生能力が高いから生半可な攻撃は効果なしらしいけど、私の攻撃は耐えられるのかな?…まずは、サーラ王国に魔法を飛ばしてきた…君から!行くよっ、『(ガウボア)』!!」


マーヤが剣を振る。するとマーヤとターゲットにされた魔王の部下との間にあった木々や岩々が跡形もなく消し去られた。当然、それは魔王の部下まで到達し、彼も例外なく消滅した木々と同様消え去った。


(ガウボア)__それは、マーヤの能力である『変形』『延長』を現状最大限活かした凶悪すぎる初見殺し技である。ナツトにヒントを貰って、そこからマーヤが自己流に落とし込んだ答えの技である。


その凶悪さは、ナツトたち勇者一行の中でも随一。


仕組みはシンプル。


マーヤの剣の攻撃範囲を延長し、それを相手に当てているだけである。

ゲームで例えるならば、普通なら剣の当たり判定は当然「刃」の部分だが、延長の能力によって、その当たり判定の範囲を任意で延長することが可能である。

つまり、見えている剣の刀身に対して、縦にも横にも数倍以上大きな刀身を振り回していることになる。


しかも、その延長された攻撃範囲は目で見えない。よって、不可視の攻撃となるのだ。


「…流石に、一度に跡形もなく消したら再生は不可能みたいだね」


今の一撃で大体の把握は済んだ。デモンストレーションは終わりだ。


「後二人だけど、戦っている兵士がいるからここからだと巻き込むかも。仕方ない、正確に狙える場所に変えるか」


この技は習得してからまだ日が浅い。数キロ離れたこの場所からは、魔王の部下以外も巻き込む恐れがある。マーヤは戦場にもう少し近い場所の上空へと転移した。


変形(デ・フォルン)


再び変形を施す。金属球は今度は双剣を形作り、マーヤは脱力してそれを両手に持った。


「流石に、一人やられたことは気付いているみたいだけど、私を見つけていないみたいだね。兵士たちもそろそろ限界みたいだし、手を出させてもらうよ。__(ガウボア)


同時に二人の魔王の部下が消滅した。兵士たちは突然敵が消えたことに対して思考が停止し、呆然としていた。


「任務完了。…後は、魔王だけだね」


役目を終えたマーヤは再び転移を行い、サーラ王国へ戻った。




マーヤの戦闘回。元々同時に魔王戦終了まで行くつもりでしたが、案の定無理でした、と。


いやぁ、書いておいてなんですが、マーヤ、強い。


なんですか、攻撃範囲を延長するって。ゲームでは台パン不可避ですね。

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