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千年ぶりだね、大英雄  作者: 十五夜
【第5章】勇者不在の一千年間
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Ep.68 世界の動き

異界より来た友が、この星のためにその命を捧げてから、一月近くが経過した。

未だにそうしてしまったことに悔やみ、悲しむが、その当時と比べるとだいぶ冷静でいられるようになった。


私はアルティオ。新しくこの星にできた国、ラーテル王国の国王である。


魔王を見事打ち倒し、皆で国を作り上げ、少しずつ軌道に乗り始めた時に受けた、最愛の友の一人であるナツトの死という事実。


私、いやこの世界の住人でなかった一人の人間によって救われたのだ。まさしく勇者。人々の絶望を振り払う光の象徴だ。


だが、その対価がその彼の損失だ。

ミューカの提案で『転生魔法』なるものを発動したが、実際のところそれが本当に効力を持つかどうかはわからない。理由は簡単。人に試した例がないのだから。理論上、転生ができるというだけで、完全に解明する前に頼ってしまったのはかなりの賭けであった。


ただ、私はナツトはきっと帰ってくる、と信じている。


世界中には「彼の魂はいずれ還って来て転生するだろう」とやんわりと噂程度に周知させている。これは彼を召喚した教会と相談した末、そうすることになったのだ。教会側としても、そういう話の方が何かと都合がいいようだ。


あるとき、世界首脳会談である国の者が陰で彼の死について触れ、「正直死んでよかった。あれは危険だったからな」と言っていた。

その瞬間私はその者を消し飛ばしてしまおうかと思ってしまった。普段の私ならそのような考えには至らない。だが、その当時は彼を失ってまだ時間が経っていない時であった。感じたことのない怒りが身体中を巡ったのを覚えている。

だが、それを鎮めてくれたのが、彼との約束だった。ナツトとの最後の会話で、私は素晴らしい国を作ると約束した。であるならば、今ここで私個人の愚かな行動で国を滅ぼすきっかけにするわけにはいかない。



それに、この会議はすでに十数回は行われており、どれも世界の今後のあり方を決めるために必要不可欠なものだ。


話す議題は数えきれないほどある。


そして今日も、その会議の日である。             



魔王を倒してからの二年間、我々ラーテル王国は魔族の保護政策に取り組んでいた。

彼らは魔王軍に所属していなかった、非暴力的集団。平和を愛していた彼らだが、魔王という強大な魔族がここまで世界に混乱と恐怖を広めた以上、関係が薄い彼らに迫害が迫る可能性があった。

だからこそ、我々が彼らを積極的に受け入れるという姿勢を示した。魔王、いや魔王軍を滅ぼした我々が負わねばならぬ定めだ。彼らの反発もあったが、根気強く交渉に伺い理解し合えた、

だが、もちろんそれに伴う問題も沢山湧いてくる。魔王を倒した圧倒的な力を有す我々が、魔族をその国の中に取り込む。

他国から見たら、戦争の準備でもしているのではないかと思われるのが普通だろう。


そのため、他国への対応も沢山行っている。この世界の俗に言う人族の国の中でかなりの影響力を持つ私の故郷、王国とのコネクションも利用し、他国に舐められない程度に寄り添い共に発展していこうという姿勢をとり、信頼を少しずつ得ている状況だ。

魔族以外にも移住希望者が多数我が国へやって来ている。ラーテル王国のある場所はこれまで人類がやってこなかった海の上にある。よって、ここまで来ること自体困難である。そのため、この地に来やすくすること、それがこの国の公共事業の第一歩であった。取り敢えずは、以前に発見されていた、「星の魔力」と呼ばれるこの星から溢れ出る膨大な魔力を用いて魔法で大陸に繋がる道を作った。道というと色々とあるが、この道を一言で言うなれば、光の道という言葉がしっくり来るだろう。主大陸へ繋がる一筋の光の道。それに乗ることで疑似的に誰もが飛行魔法を行使した状態になる。飛ぶ分の魔力は星の魔力に代用してもらったため、誰でも安心して飛ぶことができる。


問題は道中の魔物だが、この光の道は星の魔力を使っているためか、防御方面にもかなり力を入れて設置することが可能であった。


安全に飛んでこの国へ来ることができるようになり、物流が上がる。もちろん、人のみならず、動物、荷物も対応させた。いずれこれはやめて別の手段で来られるように変更するが、今はこれでよかった。可能性を見た商人達が次から次へとやって来る。それに応じて更に物流が増え、少しずつ労働力というものが上がってくる。


こうして国としての第一歩を踏み出したのだ。




我が国が国としての機能を確立させていた間、世界では復興作業が毎日のように行われていた。我々人族の国もいくつか魔王によって滅ぼされた。もちろん、滅ぼされるまでとはいかずとも大打撃を受けた国も多い。そうした背景もあり、国がそこまで打撃を受けてなかった言わば余裕のあった国がそう言った国や土地に侵略することも起きていた。だが、あくまでそう言った魔王戦後の国の争いというものは、人族同士で多く起きていた。というのは、魔王が優先して滅ぼそうとした種族で人族は優先度が最下位であったためである。ドワーフやエルフなど高水準な技術等を有す種族は大きなダメージが与えられた。よって彼らはまず自国の復興に力を入れていた。

数が明らかに減少したエルフは、戦後すぐに我々ラーテル王国と協力関係を築き、技術の提供の代わりに世界で英雄と呼ばれる我々の保護を要求した。


ざっとこのような背景があり、人族は混乱に乗じて技術力的に近い位置にある人族の国を限定的に攻めて、領土を増やそうと画策していた。


実際、いくつかの国は地図から消え去り、いくつかの国は領土を増やした。人の欲望というものはいつ見ても醜いものだ。


だが、ある程度混乱が収まると、各国の首脳陣が一堂に会し会議することができるようになった。当然、世界からそういった侵略行為を行う国々へと批判が殺到するようになる。そして次第に国同士の争いは収まっていった。





今日話した内容の主題は、前回から引き続き世界の今後の在り方だ。


半日以上の議論を交わしたが、決まったことは少ない。


実際のところ、今を生きる我々の答えというものは世界がよりよくなっているのかはわからない。そういうものは何十年何百年経ってから真に答えがわかるものだと、私は考える。


だから、世界がよりよくなっているとは私は言わない。

だが、世界は確実に昨日まで立っていた場所から動き、変わろうとしているのだ。





さて、第五章に突入。

中等部編の次はまさかの過去編。ナツト死後の流れになります。

メインキャラは最近空気と化していたアルティオさんです。


ところで、過去編というものはあんまり長くしてしまうと、書き手はともかく読み手はちょっと飽きちゃうんですよね…。これはあくまで自身の経験談なので全部がそうであるとは言えませんが。


よって前に言ったように目標は過去最短章にすること。よって九話以内には〆たい。


…あ!序章は除きますよ!!

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