Ss.7-3 お互いを信頼して
少しの間、沈黙が二人の間を流れた。
ナツトからみたガルノラルクは明らかに動揺を隠せていない、という風な雰囲気であった。
ガルノラルクは普段クールに振舞おうとしている節があるが、実際のところ彼は表情を隠すのが下手である。要は、彼は嘘を吐くのが下手である訳だ。
「……えっと、何で、そう思うんだ?」
ようやく彼の口が開いた。
絞りだしたような小さな声だったが、不思議と大きく聞こえた。
「…否定しないんだ」
彼の答えは、否定からではなく根拠から始まった。ナツトの返しにハッとしたのか、ガルノラルクの顔が「しまった」という表情に変わる。
「い、いや、違うからな!何でそんなことを聞いてきたのか気になって聞いただけだ!そ、それよりも、プレゼントのことで質問があるんだろ?何だ!?」
怪しい。誰が見ても今の彼は挙動不審である。話題を無理矢理変えようとするのも、ますます怪しい。
「プレゼント作りはもう終わってるよ」
「え?」
「別に隠さなくていいよ。こっちは確証をもって聞いているから。さくらんぼっていうものはね、この星にはないんだよ、ガルノ。……ましてやそれをチェリーと結びつけるのは絶対に存在し得ないんだ」
待っていても仕方がないのでどんどん詰めていく。仮に間違っていたら、後で謝ればいい。今は少し強めに問い詰める。
手段として、彼の記憶を無理矢理覗くというのもあるにはあるが、友達にそれはしたくない。これは個人的な拘りであるが、できたら直接聞きたいのだ。
「答え辛いなら、イエスかノーで答えて。ガルノ、君は転生者?」
まっすぐ真剣に彼の眼を見る。彼は、思わず視線を逸らしたが構わず見続ける。
「……ああ……そうだ。俺は転生者、だ」
時間にしてはほんの数十秒。だが、体感的には数分経ったとき、彼の口から質問の答えが返ってきた。
……やはり、そうだったか。ガルノラルクは転生者。思えば、転生者仲間は初だ。
王城の資料を漁っていたら、過去何度も転生者が確認されているようだったが、まさか(身体)年齢が同じ転生者がいたとは。
過去の転生者は、その発見方法が……うん、まぁ、彼らにとっては「ふざけるな」と叫びたくなっただろうなと思う例や、それは完全に自業自得だろというのがほとんどだった。言わばやらかしてから事後的に発見に至った、という感じである。転生者のほとんどにとってはおそらく、というか僕が千年前に残した置き土産が原因かもしれないが、後悔はしていない。寧ろ僕個人としては、これでいいと思っている。
「なあ、シャック。俺からも、聞いていいか」
おっと。物思いに更けていたら、ガルノから質問が返ってきた。
ナツトは頷き、質問を促した。
「逆にシャックも転生者じゃないのか?」
!これは驚いた。ちょっと違うと思うが、ブーメランとはこのことだろうか。
さて、どうしたものか。一瞬にして攻守が反転してしまった。
「理由、聞いていい?」
言って気付いた。先程、「否定しないんだ」と言ったのは一体誰だろうか。自分では冷静のつもりが、意外と焦っているのだろうか。
幸いにも、ガルノはそれを見逃してくれて、理由を話してくれた。
「さくらんぼが存在しないのに、シャックはなんでその存在を知っていたんだ?」
……確かに!言われてみれば可笑しさ満点だ。存在し得ないものをなんで知っているんだ?確かに普通に考えたらすぐに思い至る質問だ。
何を考えていたのやら。答えを早く得ようと思うばかりに、少し急ぎすぎてしまった。
「あははははは、ホント馬鹿だなぁ…自分は」
「シャック…?」
急に笑い出したナツトを見てガルノラルクは困惑極まっていた。
「本当は隠すつもりだったけど…いいよ。教えてあげる。さくらんぼを知っていた理由は君の予想通り、転生者だからだよ、地球__いや日本のね。ガルノ、君もそうだろ?」
「…あ、ああ。まさかシャックもだったとは…」
「そんなに驚かなくていいよ。この国に他にも何人かいるし」
「え!??」
驚くのは無理もない。ナツトだってかなり驚いた。調べたところ、この国はかなりの人数の転生者を国に引き込んでいる。そうして少しずつ知識を集約し、国の発展に繋げていったのだろう。
「僕は、立ち位置的には保護を受ける立場にあるんだよ。親はいないけどね」
「どういうことだ?」
「これ以上は言えない。言っとくけど今喋りすぎもいい所のレベルで話したから。後は察してね」
ホント、喋りすぎもいい所だ。後でアルティオに怒られるな、多分。
もし仮に、ガルノが敵に成り得るならこんなに話さない。今回の問答に至るまでに彼の身辺調査をアルティオに直接依頼した。
その結果、彼のことが信頼に値すると判断し、もし転生者だと確認が完全に取れたら、できるだけ早い段階でこちらに引き込んでおこうと、アルティオと相談済みである。
また、普段の生活から、ガルノが転生者ならば前世はそれなりに年を重ねていたと推測された。要はナツトのように高校生でこっちに来たのではなく、少なくとも成人してから来た、ということである。
これだけ話したんだ。今はわからなくてもいずれ彼はナツトの背景事情に気付くことができるはずだ。
その際転生者であることを告げる予定ではなかった。しかし、お互いの秘匿するべき情報を共有する仲の形成により、より深い信頼関係を築くことに繋がる。それを踏まえて、今後のことを考えたら、こちらの方がいろいろと楽になりそうと決断し、独断で話すことに決めたのだった。
唯一教えないのは、「シャック=ナツト」ということ。これは、まだ国としては隠すことなので、言えない。尤も、その内、彼はその答えに辿り着きそうであるが、そのときは尤もらしい嘘を言う。例えば、王女の護衛だ、とかね。
「じゃあ、改めてよろしく。ガルノ」
「ああ!」
お互いの秘密を知った二人は、改めて握手し直した。
後日、出来上がった、さくらんぼのアクセサリーを受け取ったチェルーティアは、それはそれは大喜びで、学園の中で一日中ニコニコしていたなんとも珍しい日があったそうだ。
やや急ぎ足で書き上げ!
久しぶりの二話更新。
一話分膨らみはしましたが、概ね予定通り。予告通り、次回に数十話ぶりのキャラ紹介を挟み、五章へ移ります。
…やっと前置きの終わりが見えてきた。
ではでは~




