Ss.5-1 ノアラナチアの追跡
入学して少し後のお話。時系列的には修学旅行よりずっと前になります。
私は、ノアラナチア・ハロラ。十歳。グラル学園で楽しい毎日を送ってます!
そんな私には、友達がたくさんいるの。なかでも、かっこいいなぁって思うのが、チェリーちゃんと、イアノン、そしてシャック。彼らは、どこか大人びていて、どんな時でも冷静でとっても頼りになるんだ。私はそんな彼らに憧れて、話し方とかちょっと真似させてもらっているんだ。
そして、最近気付いたことがあるんだ。シャックが登校時も下校時も一瞬でどこかに消えちゃうんだ。シャックは寮っていうところには住んでいないから、家から歩いて来ている筈なんだけど、目を離したら次の瞬間にはいなくなっているんだ。これってとても不思議だよね。そのせいでシャックの家がどこにあるのかも謎…クラスの七不思議の一つになっているんだ。
シャックに直接聞くのが一番早いと思うけど、私自身でその答えを見つけたい。
…ということで、何度かシャックの後を付けたんだけど、角を曲がった瞬間に消えちゃうんだ。
…こうなったら。
「シャックが消える真実が知りたい?」
私は、ガルノラルクに協力をお願いしてみた。
「ノアラ、それは転移魔法だよ」
「転移魔法って、あのとっても難しいっていう?」
なんとびっくり。ガルノラルクは答えを知っていたんだ。
「そうだよ。シャックは転移魔法がとても上手いからね。転移魔法、便利だよ、使えると」
ガルノラルクの話しぶりから答えは転移魔法であっているみたい。でも、だったら尚更…。
「…気になる」
「ん?何が?」
「シャックがどこに転移しているのか」
「いや、そりゃ家だろ。シャックの」
「じゃあ、ガルノラルクは知ってる?シャックの家がどこにあるのか?何か、隠してそうじゃない?」
「確かに俺も知らないけど…」
「隠してそうじゃない!?」
「ああ、うん、ソウデスネ」
ガルノラルクが転移魔法についてちょっと詳しそうだったから、何としてでも協力してほしい。私は必死にガルノラルクを説得しにかかった。
だが、ガルノラルクは「いやぁ、他人の家庭の事情にはあんまり首を突っ込みたくないなぁ…」と気乗りしていない様子。
作戦は失敗に終わるかと思われたが、ここで転機が訪れた。
「なあ、何してんだ?面白そうなこと話してたら俺も混ぜてくれよ」
ウルヴァロが来たのだ。
「ウルヴァロ!実はね…」
私は彼に今までのことを説明した。
「面白そうじゃん、ガルノ、やろうぜ!」
いいことに、ウルヴァロは乗り気であった。
しかし、依然としてガルノラルクは乗り気ではなかった…が次のウルヴァロの一言で揺らいだ。
「もしかすると、シャックは俺らに言えないような大変なことを抱えているかもしれないだろ?もしそうなら、俺達が助けてやらないと!」
確かにその可能性もある。私もガルノラルクもほぼ同時にその僅かな可能性に気付き、私はこれを上手く使うことにした。
「そうだよ、もしそうなら大変だよ!ガルノラルク、お願い!私達だけだと、そこまで調べられないけど、最近魔法がとても上手になった君の協力が必要なの!」
「……ぐっ………わ、わかったよ。協力する。でも、そうじゃなかったらすぐに止めるからな」
「やったー!ありがとう!」
やったー!押し勝ったよ。ウルヴァロもナイスフォローだよ!
「…よし、追いかけるよ」
作戦実行の日。今日はシャックは生徒会の仕事がないから、授業が終わって特に用事がなければすぐに帰る。私達三人は、ナツトに気付かれないよう後を付けていく。
「…店に入ってくね」
学園を出てすぐ、シャックは近くの文具屋に入っていった。私達は外で店内に入るか数分間悩んだけど、その間にシャックは店外へと出てきた。彼の手には店内で買ったであろう何かが握られていて、彼はすぐにそれを背負っていたバッグにしまった。
「ペンを持っていたね」
後ろからガルノラルクがボソッと言った。
「あ~、そういえば今日シャックがお気に入りのペンが壊れたって言ってたな。学園内には売っていないから今日買い直しに行くって言ってた」
ウルヴァロが状況説明をしてくれた。言われてみれば確かにそんなこと言っていた気がする。
「あ、バックが…」
シャックは歩きながら、ペンをしまったバッグを明らかに意図的に地面に向けて落とした。
一瞬何で…と思った三人だったが、答えはすぐに示された。
地面に黒い穴のようなものが現れ、バッグはその中に吸い込まれるようにして消えていった。
「収納か…一瞬何してるんだ、と思ったわ」
ガルノラルクが納得、といった表情でそう言った。
収納…収納魔法!そうか、シャックがいつも荷物が少ないのは、収納魔法を使っているからなのか!…知らなかった。
「後を追うよ」
頷く二人。私達は再び、尾行を続行した。
「あ…急いで!」
ある地点で、シャックが人目に付きづらい場所の角を曲がった。直感的に移動される、と感じた私は急いでその場所に向かった。
角を曲がると、そこにシャックの姿は既になかった。
いつもならここで終わりだけど、今回は頼もしい見方がいる。
「ガルノラルク、お願い」
「はいはい、あんまり期待するなよ。俺も最近漸く習得したばかりなんだから」
ガルノラルクがシャックが使った転移魔法の解析に取り掛かる。なんでも、シャックから直前の転移魔法の転移先の座標を割り出す方法を教えてもらったんだって。私にはよくわからないけど、それが凄いことだってことはわかる。
「…んん?」
「どうした、ガルノ?失敗したか?」
「いや、ウルヴァロ。座標はわかったんだが、場所がちょっと変だったから」
「「変?」」
私の声とウルヴァロの声が綺麗に重なった。
「ああ、この座標は…トレーカスだ」
「「トレーカス?」」
トレーカスっていうと、北の方にある大きな都市で貿易が盛んなところだよね、授業で習った所だ。
「そこに、シャックの家があるの?」
毎日そんなところから通っているのかな?だとしたらなんだか凄いね。
「どうだろうな、わからない。…でどうする?魔力足りるから、行くか?」
「もちろん!」
「だよな、じゃあ、行くぞ!」
私達三人はシャックの後を追って、トレーカスへと転移した。
「うぅ…頭が回る…」
初めての転移魔法。なんだかバスに乗ったときに気分が悪くなった時みたいな感覚がする。
ウルヴァロも同じ感じだ。
「最初はそんなもんさ、それよりもシャックを___ 」
「転移お疲れ様。お早いお着きだね、三人とも」
ガルノラルクの言葉は途中で別の言葉に遮られた。ハッとして声の方向を見ると、先程まで尾行していた本人が立っていた。
「シャック……」
作戦はこの瞬間、失敗を告げられた。
おや、一話完結のつもりが二話になってしまうとは……。
いつものことだし、別にいいけど。




