Ep.66 決着後
「おい、シャック!」
白い光が収まってすぐにガルノラルクが空を指差しながら叫んだ。指の示す先を見ると、敵のリーダーと思われる人が負傷したと思われる右手をぶら下げながら跳躍を続けていた。
なんと、あの攻撃を凌ぎ切ったのか。
仲間を完全に切り捨てたのか、振り返らずに一目散に逃げている。
「逃げられるぞ!」
焦るガルノラルク。だが、ナツトはそんな彼を落ち着かせるように静かに言った。
「大丈夫だよ」
「いや、何を根拠に__ 」
ガルノラルクの言葉は途中で止まった。理由は簡単。目の前でナツトが宥めたその理由が示されたからだ。
空を翔けていた敵のリーダーは真横から来た黄色い雷に打たれ、どこかの建物の屋上に落下した。
「ほら、大丈夫だったね」
「え、いや誰が撃った魔法だよ」
「学長」
そう、今の魔法はミューカが放った魔法だ。そもそも街中であんなに目立つ結界をナツトが用意したのは、ミューカに知らせるためでもある。街中の爆発の怪我人の治療なんて数分あれば彼女には十分だろう。結界内で戦闘が終わる頃には治療は済んでいるはずだ。
そしてナツトの魔力で結界を派手に破壊することにより、ナツト関連だと確定させる。そして、それを喰らってかつその場から離れようとする人間がいたらそれはナツトにとって敵と考えることができる。
後は、彼女が狙撃すればそれで終わりだ。
騎士団の人がこちらにやってくる。まだ敵が潜んでいる可能性は十分考えられるためイアノンの保護を頼んでおいた。
敵のリーダーが墜落した場所にナツトは転移した。
彼は予想通り、そこで倒れていた。怪我が多いが、致命傷でもないため死んではおらず、普通に気絶していた。
別に騎士団に任せておいてもいいのになんでこの場に来たのか。それは先に済ませておきたかったことがあったからだ。
「ちょっと失礼」
右手の人差し指を、ナツトはリーダーの額に置いた。
「記憶閲覧」
そして能力『権能;記憶』を組み込んだ魔法を行使する。これは、ナツトが独自に作成した魔法で、相手の情報を直接読み取るものである。
知りたい情報は、人数、目的、依頼主など今回の暗殺未遂事件の全容だ。
記憶を探り、依頼主らしき人物を見つけた。恐らく魔法で顔を変えているため、顔は参考にならないが、大きな収穫があった。記憶の中でこの依頼主は転移魔法を使用して現れた。つまり、この人物の魔力を感知していた。
その魔力をナツトは記憶し、魔力探知の応用で試しに探ってみた。
すると、ヒットした。つまり依頼主もこの街にいるということだ。
ただ、不可解な点が一つ。同じ魔力反応が一定間隔を置いて何十も感知されたということだ。
ナツトは、リーダーを一旦魔法で拘束してから、一番近くのその魔力が感知されたポイントに転移した。
するとそこには、十センチ四方の小さな機械が置かれていた。その機械にはカメラも付いていた。
感知された魔力はこの機械から感じられた。つまり、同様の機械が街中に設置されていると考えられる。
その機械を魔法で探ってみると、街中の魔力が感知された地点と蜘蛛の巣のように複雑に繋がりあっていることが判明した。この機械がもしも監視用の物ならば、この魔力の網を辿っていけば必ず使用者の下へたどり着けるはず。更に集中し、その源流を探す。
そして、見つけた。ここから約十五キロ先に今もなおこの機械を通してナツトを見ているそいつを。向こうもこちらに居場所が割れたことに気付き、逃げようとする。動き出しはほぼ同時。
ナツトは最速で転移魔法を使い、その場へと向かった。
しかし、向こうも準備していたようでナツトが着いた瞬間にどこかに転移していった。
「逃げられたっ!でも、まだだ、転移先を解析すれば…」
そう、まだ手はある。転移魔法を使用する瞬間に来たので、記憶を頼りに座標を割り出せればまだ追える。しかし、そうはさせない手を向こうは用意していた。手に持っていた機械が「ピーピー」といかにもヤバそうな音を出し始めた。
直ぐに投げた…が、投げた直後つまり距離が確保できる前に予想通り爆発した。爆発の規模はせいぜい人ひとり巻き込むかどうかぐらいの範囲だが、距離が近すぎた。
条件反射で『誘導』を用いて爆風をそらす。お陰で無傷で済んだが、この機械の爆発には特殊なモノが仕込まれていた。
「撹乱粉か…あ~逃げられた、出しゃばりすぎたかなぁ…」
撹乱粉__それは特殊な製法で作られる粉末状のもので、散布した場所の魔素を一時的に狂わせ、魔力を受け付けないようにすることができる。また、直前の魔法の効果を完全に消し去る効果もあり、ことこういう場面においては効果覿面であるのだ。
「まぁ、全員無事だったからよしとするか。暗殺集団はあと三人いるみたいだけど、別行動だったのかな?ミューカに知らせて今の奴と一緒に指名手配してもらうようにするか」
その後、襲撃事件で直接襲われたナツトたちは転移魔法で真っ先にリコアにある学園に戻された。その他の生徒たちも速やかに帰りの電車に積み込まれ、首都リコアに向けてこの地を後にした。
こうして中等部最後にして一番のビッグイベントだった修学旅行は、皆に忘れられない記憶を残して終わりを告げたのだった。
次でメインストーリー部分は第四章終わりですね。流石に。
サイドストーリーをどうするかになってきますが…さてさて。
五章の内容は決めました。ナツトメインから少し外れる感じになるので、手短に済ませるつもりです。
まぁ、自分自身「ホントに手短にできるのか」と自分に対して疑っているのですが笑。
しかし、メインから外れるのは読み手にとっては退屈になりがちなので極力コンパクトにはしたいところ。書いている作者は楽しいんですけどね。
でも、ま、これだけは言えます。
四章よりは確実に短いです!




