Ep.64 襲撃事件②
「ちっ、面倒だな」
イアノンを暗殺しようとした集団のリーダーらしき人物がそう愚痴をこぼした。
戦闘は開始して一分もしないうちに膠着状態に突入しようとしていた。
結界は内部から外部の様子は見えないようになっている。フィルターのようになっているため、外が今どのような状況か一切わからない。当然だが、外からはどう見えているかもわからない。恐らくは内部同様、外部からも中の状況というのはわからないつくりになっているようだ。
彼らにとって今の状況は予想外であった。王子と言えどたかが学生。自分たちには到底及ばないと考えていたが、それは間違いであった。
基本的に攻めているのは彼らであって、ナツトたちは攻める気がなく、基本受けに徹していた。
暗殺者たちはこの露骨な時間稼ぎの意味を理解しているが、自分たちという存在がバレた以上、これから先にイアノンを殺せるチャンスは巡ってこないだろうと確信していた。現状、既に国外逃亡するのもかなり難しい。そのため、邪魔が最小限である今この瞬間に目的を果たしたかった。
この際、生徒が何人死のうが関係ない。邪魔するならば排除するのみと考えていたのだが、それも難しかった。
リーダーは考えていた。
こいつら、なんか強い、と。
(…おかしいだろ、そもそも!こいつら何歳だよ!?十と少しだろ?なんでこんなにうまく立ち回れるんだ!一番弱いガキも、俺以外の他のメンバーだと一対一なら負けかねんし、残りの三人はもっとふざけてやがる。作戦行動において一番邪魔なのが結界を張ったガキだ。各種属性魔法で的確な場所に援護してくるし、どのタイミングで差し込んでくるかわからんから、いちいち意識を割かれる。実に鬱陶しい。こいつを無視して王子を殺そうと動けば、後衛役をやりながら前衛にも参加するし、ウザい!というか、こいつ昨日あれだけ転移魔法使っていたのに、魔力切れしないのかよ!?さては、あれだな?国が秘密裏に用意していた兵士か?…っち、時間ももうない。報酬は諦めて撤退するか…?)
戦闘に沼るほど、戦況は悪化していく。リーダーの頭に「逃走」の二文字が何度も浮かんでいた。
しかし、結界のせいで外の状況が見えないのもかなり厄介である。時間も経っているため、もし万が一騎士団が包囲しているのなら、走り抜けようとするのはかなり危険だ。
そんなとき、仲間の一人が結界の解析が終わったと魔法通話で言ってきた。
それによると、これの効果は二つ。一つは、出入りができないようにしていることと、もう一つは、外部から内部、内部から外部への転移魔法の使用禁止である。
それを聞いたリーダーは更に苛立った。
これでは、転移魔法でどこかに逃げることもできやしないと。
しかし、まったく方法がないわけではない。移動ができないというのは何もこちらに限った話ではない。向こうもできないのだ。よって、この結界内を埋め尽くすような大規模の攻撃をお見舞いしてやればいい訳だ。
ナツトは、かなり忙しかった。
襲撃してきた連中は意外と手練れだ。それに、彼らの持っている武器はおそらく毒が塗られているようだから、かすり傷でも危ない。毒の解析も済んでいないし、攻撃を貰うのは何としても避けたい。
体の周りをグルグルと飛ばしている色の異なる光球は、いわば魔法の原型だ。今の状態は属性を与えている状態だ。これに例えば赤い光球に「槍になーれ」というイメージを魔力を通して伝えるだけで、炎の槍の完成である。これを使って、みんなの戦闘のサポートを行う。もちろん四対四なのでナツト自身も戦いながらなのだが。
自分の相手はおそらく敵の二番目に強い奴かな?魔法が得意なようで、こちらの邪魔をしてくる。
とりあえず、戦闘しながら全体を俯瞰し、各々のサポートができるように徹しているが、向こうがイアノンを積極的に狙うような動きや、一番邪魔であろう自分自身を狙う動きを見せれば、動きを変えなければならない。
あ~、集中力がいるなぁ…。イアノンに能力で集中力底上げしてもらえばよかった。
まぁ、そんなイアノン本人は敵のリーダーと思われる人物と接戦を繰り広げている。当たれば負けの戦いだが、彼の能力なら上手くいけるはずだ。
お互い一人でも落ちたら一気に戦況が傾く戦いであるが、時間経過でこちらが少しずつ優勢になっていくので、現状ちょっと有利と言ったところだろう。
…しかし、敵の攻める気が減ったような気がする。さっきまでは戦闘しながら援護するので手一杯だったのだが、今はこんなことを考えている余裕ができている。時間経過で余裕がなくなってきているのか?それとも、何かを待っているのか。でも、待つのは好手ではない…。じゃあなんだ?
「…ん?あぁ、そゆことか」
気が付けば、ナツトたちはバラバラになるよう誘導されていた。お互いがそれなりの距離を取られ、ナツトの援護がすぐには届かないぐらいまで。
次の瞬間には、敵が全員身を包むサイズの小さな結界に包まれた。
そして、それぞれが結界外に手に収まるサイズの「何か」を投げた。
そしてその「何か」は結界内を埋め尽くすように勢いよく爆発した。
思えば、複数同時投稿は初かも。
同日複数投稿はあるけど、あのときの自分の心境はどうなっていたんだろうか。
一日で一話書いては投稿して、一話書いては投稿してを繰り返していたわけですが、一体どんな気持ちでそれを行っていたのやら。過去の後書きを見返してみるか。




