Ep.61 プレゼント探し
「ねぇ、どういうのがいいのかな?」
「ん?言い出しっぺなのに決まってないのか?ノアラ」
「あのねぇ、ウル。決めたのは確かに私だけど、こんなところに来るとは思ってなかったの」
「シャックー、いい案ない?」
「そーだね…」
今は、修学旅行最終日の最後の自由行動の時間。昨日と同じメンバーでのんびり街中を歩いていたナツト達は、道中たまたま出会ったノアラナチアのグループと共に行動していた。
ナツトたちが今何をしているかというと、もうすぐ誕生日のチェルーティアへのプレゼント選びである。元々ノアラナチアが秘密で進めていた案で、街を歩いて、いいものがないかと班の女子たちといろいろと話し合っていた時に、ナツトたちに遭遇したわけである。ナツトたちもプレゼント作戦には大いに賛成だった。
勿論、ノアラナチアの班にチェルーティアはいない。
最初はありきたりなプレゼントを見ていたが、独創性がないというノアラナチアの変な拘りのため、プレゼント探しは難航していた。
そこで一行は、街を歩いていたら見つけた骨董品から最新のものまでいろいろ売っている所謂「何でも屋」に入ることにした。店の中はおばあさんが一人、レジに置いてある椅子に座っており、一見防犯対策が不十分かと思われたが、店の至る所に設置された防犯装置を見てそうではないと察することができた。
「きれい…」
ノアラナチアの班員の一人が店内に置いてある宝石を見て呟いた。
「宝石とかはどうだ?」
それを見たガルノラルクがみんなにそう呼びかける。
「いいとは思うけど…高いんじゃない?私の持ってるお金じゃ…」
ノアラナチアが言葉を濁す。確かにそれは正しいだろう。ナツトは厳密には違うが、社会一般的に見て、十一歳の子どもが宝石を何の抵抗もなく買えるのはあり得ないだろう。
しかし、ここにはそんなお金の問題が特に抵抗のない者が三人いた。
「私も出すよ」
最初に言い出したカッコイイやつはイアノンである。それに続くようにナツトも声を上げた。
「僕もいいよ」
「あ、俺も」
最後の一人はガルノラルクである。意外に思うかもしれないが、ガルノラルクは冒険者としてそれなりに稼いでいる。イアノンはまぁ…言うまでもないだろう。
「え…わるいよ、それは…」
次々とお金出すよ宣言されたノアラナチアは困惑していた。
「気にするなって、チェリーにはお世話になっているのは事実だし、どこかでお礼もしたかったしな」
ガルノラルクが全員の意見を代弁するようにそう言った。ナツト、イアノンはうんうんと首を縦に振って肯定の意を示す。
「え~っと、俺は?」
そんな中、一人お金出すよ宣言していないウルヴァロがとても気まずそうにしていた。
「ウルは気にするな、将来お金がたまったら、全員に返せ。それでいいか?」
「うん、わかった」
ガルノラルクに説得されたウルヴァロは一瞬にして気まずさから解放されたようだ。
「…で、なんか宝石買う流れになっているけど、それで大丈夫?」
ナツトがふと思ったその一言で、全員が「確かに」という表情をする。
少し沈黙が流れた後、イアノンがそれでいいのでは、と言った。みんなもそれに続くように賛同した。
方針は決定した。となると、次は…。
「じゃあ、どれを買うかだよね?たくさんあるけど…」
改めて商品を見返す。宝石店ほどではないが、ショーケースの中にかなりの数が並べられている。磨かれて加工されたものから原石まで宝石の状態は多岐に渡る。
「なぁ、シャック、こういうのはどうだ?」
ウルヴァロがナツトを呼んだ。ナツトが魔法のみならずいろいろと詳しいことが既に知られているので、ナツトのクラスでは困ったらとりあえずナツトに訊くという流れが出来上がっていた。
ナツトが振り向くと、ウルヴァロはある装飾された宝石を指差していた。
「これは…魔石か。それに…何か魔法陣が刻まれているな。あ、タグが付いてる…毒物を打ち消す、か」
魔石…一般的には魔物から採取できる魔力の結晶。採取方法は基本的に魔物からである。
絶命した魔物の体内でコントロールがなくなった魔力は心臓…いや体の中心付近で一点に凝縮し、結晶化する。それが魔石だ。
よって、魔石は元になった魔物の魔力量が大きいほど、デカくなるわけだ。
加えて、魔石はかなり利便性が高い。魔力が結晶化したものであるから、魔法陣を刻めば、自身の魔力を消費せずに魔法を使うことができ、魔石の魔力がなくなれば自身の魔力を込め直すことで再び使用可能となるのだ。
「確かにこの魔法は…毒物を打ち消す効果だね」
魔法陣を見ても確かにこれは毒物を打ち消す効果のようだった。
「やっぱり!?滅茶苦茶いいじゃん!」
予想以上に凄そうな効果にウルヴァロの目が輝いた。その目は、「これで決定だ」と言っているようだ。
「…デザインはいいけど、これはやめといたほうがいいよ」
そんなウルヴァロに対して水を差すようにナツトが言った。
「…なんで?」
ウルヴァロは少し不満そうに返した。
「先ず、この手のやつは値段が馬鹿みたいに高くなる上、値段相応の働きは多分してくれない。毒物と言っても、その種類はたくさんある。ざっくりいうと植物や動物から採取した毒、人工的に作った毒、魔法で作った毒とかね。それらの内どれに効くのか書いていないし、それらをすべて排除するのはこのサイズの魔石ではまず不可能だね」
「でも、何かしらに効くのは確かだろ?御守程度にはいいじゃないか?」
ナツトが話していると、後ろからガルノラルクが意見を言った。
「確かにそうだけど、何に効くのかわからないんじゃ意味ないし…。大体、毒、毒いうけど何をもって毒とするかの線引きは難しいし、なんなら、例えばだけど転移魔法で体内に塩を大量に転移させるだけで容易に致死量越えて人なんて殺せるよ?塩なんて毒としてまず認識しないだろうし」
「…シャック、お前怖いな…」
「あくまで例だって。持論だけど、転移魔法があればこういう毒を消す系の魔法具は意味をなさないと思うよ」
「…なんかよくわからなかったけど、やめるよ!」
「うん、それがいいと思うよ」
それに、いくらみんなでお金を出し合うと言っても、これは高すぎかな…。
改めて商品タグを見るとその魔石だけ桁が一つ高かった。
こうして、ぼったくられるのを回避した一行であった。




